11(※挿絵有)
つぃっと魔王が指を動かすと、魔族達は見えない何かによって一斉に宙吊りにされた。
何十人もの魔族が、首根っこを掴まれた様な格好でだらーんと吊る下がっている様子は、かなり不気味だ。
「少々、これ等を躾けて来る。」
そう言い残し、宙吊りにしたままの魔族達を引き連れて颯爽と部屋を出ていく魔王。大きく開け放たれていた扉が音も無く閉まった。
と思ったら、すぐに開き、魔王が足早に戻ってきた。
「これを……今のうちに渡しておく。うっかり壊してしまったら、用意した意味が無いからな。」
そう言いながら、やや照れくさそうに懐からソレを取り出す魔王。
「着けておけ。」
「これを、ですか?」
私はやや困惑しつつ、差し出された首輪を受け取った。そう首輪。革製の、く・び・わ、である。
「首輪とは、所有の印なのだろう?」
魔王は何だかとても得意げだ。
「……はい。」
笑いを噛殺し切れず、声が震えてしまった。
駄目だ、笑っちゃ駄目だ。本人は真面目なんだから。いや、真面目に言っているのが分かるからこそ……ぷくくっ!
何だその偏りすぎた知識! いや、ある意味魔王らしい贈り物ではあるけれども。
貰ったからには使うべきかと、震える手でどうにか首輪を着けて見せれば、
「良く似合っている。」
うんうんと満足げに頷き、嬉しそうに顔を緩ませる魔王。あぁ、もう、可愛いなぁこの人。
首輪が似合うって、それ、褒め言葉としては間違ってるけどね。まぁ良いや。私の為に、贈り物を選んでくれたって事が、純粋に喜しいから。
「ありがとうございます。」
そっと首元を撫でると、首輪に付いている小さな鈴がチリンと可愛らしく鳴った。
私の手の上に、すっと魔王の手が重ねられ、
「この命果てるまで、俺の心は、お前だけのものだ。」
指先を絡めながら、魔王が囁いた。
その甘い声色に、どきりと心臓が跳ねる。
「この首輪に誓って。」
……一瞬だけ、ツッコミを入れるべきか迷ったのは秘密だ。
向けられた真剣な目と視線を合わせたまま、私は小さく頷いた。
ゆっくりと、二人の距離が近づき……――
――暗転。
多分、ハッピーエンド。
これにて妄想終了いたします。
ざっくりとした人間が、ふわっとした世界観で、さらっと書いた話なので、
色々ともの足りない感じの出来になっていると思いますが、
ありすぎて「そんなには要らないなぁ」となるよりは、「何か足りないなぁ」くらいの方が良い……と言い訳してみたり。
何にせよ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
読んでいただき、ありがとうございました。