第7話「事件は起きてない
「だから俺は容疑者じゃない!」
理人の抗議もむなしく――。
数分後。
理人はベンチに座らされ。
二郎とイチゴは、公園の入口から何度も歩かされ。
「もう一回!」
「まだやるのか?」
「今の歩く速度だとわかりにくい!」
『千紘、もう五回目だぞ』
「次で最後だから!」
『さっきも聞いたわ、それ』
二郎はため息をつき、隣にいるイチゴを見る。
『それにしても、イチゴはいつ見てもかわいいね』
『二郎ったら。うふふっ♥』
ニ体は見つめ合っていた。
「ちっ、そこ! いちゃいちゃしない!」
「AIにキレんなよ」
『そうだぞ』
『私たちは言われた通りにしているだけよ』
「事件現場の再現中なの!」
『事件なんて起きてないぞ』
「小説の中では起きてるの!」
理人は深いため息をついた。
『はぁ……人間って、こんなだったかしら?』
『たぶん違う』
「お前ら、こいつだけは例外だからな」
「ちょっと成瀬! どういう意味!?」
「まぁいいや。次はこのトリック再現するわよ!」
「まだやるのかよ……」
「これで最後だから、一回でいいから再現してみたかったんだもん!」
結局、その日は夕方まで、千紘の『刻探偵』再現に付き合わされた。
「あぁー! これでこうなったわけね!」 「なるほど! よし、解散!」
「それが言いたかっただけかよ……」
「あーあ、晴れた休日が台無しだ。貸しだからな」
理人は大きくため息をついた。
「イチゴ。今日は美味しいもの食べような」
『前も言ったでしょ。私、食べられないし』
「……そうだったな。ごめん」
「よし! 二郎、帰ろう!」
『やっと帰れる……』
「今日はこの小説に出てきた、納豆チャンプルーを作って食べるわよ!」
『俺も食べられないっての』
その頃、楽と三郎は――。
楽はリビングの床で寝転がる三郎を見た。
「三郎、散歩行くか?」
『行かないでちゅ! 虫いるでちゅ!』
「虫がいても、お前に危害加えられないだろ?」
『意思疎通できないでちゅ!』
「そこ?」
『何考えてるかわからないでちゅ!』
「外の綺麗な景色見ようぜ!」
楽は三郎の頭をわしゃわしゃと撫でた。
『撫で方雑でちゅ! あっちいけでちゅ!』
「頑固だなぁ」
『楽に言われたくないでちゅ!』
「じゃあ一人で散歩行ってくるわ」
『いってらっしゃいでちゅ』
「寂しくないの?」
『虫よりマシでちゅ』
「そこまで!?」
『そうでちゅ!』
ぷいっと顔をそらす三郎を見て、楽は笑った。




