第4話「帰るでちゅ!」
翌日。
三人はそれぞれAIペットを連れて、会社に集まっていた。
「で、どうだ?」
黒瀬が三人を見る。
「どうって言われても……」
千紘は足元の二郎を見た。
「普通に一緒に暮らしましたけど」
『普通とはなんだ』
「ほら、こういう感じです」
「会話に問題はなさそうだな」
黒瀬が手元のタブレットに何かを入力する。
「理人は?」
「特に問題ありません」
理人は答えた。
「ただ、こいつ、人が飯食ってるとずっと見てきます」
『見てないわ』
『相変わらず、自意識過剰な男ね』
「見てただろ」
『見てないわ』
千紘が吹き出す。
「もう仲良くなってるじゃん」
「どこがだ」
『どこがよ』
声が重なった。
「息ぴったりじゃないですか」
楽が笑う。
理人とイチゴが同時に楽を見る。
「違う」
『違うわ』
黒瀬はため息をついた。
「楽。お前は?」
「三郎、めっちゃ面白いですよ」
楽は足元の三郎を見る。
「昨日なんか虫の気配を感じただけで、激怒MAXになってました」
『笑うな!』
「まだ怒ってんの?」
『怒ってない! 早くあの虫をどうにかしろ』
「ただのカナブンだろ」
『俺にもっと力があったらな』
『クソが』
楽が三郎の頭を撫でる。
三郎の耳が、ぴくっと動いた。
『……やめろ』
「すぐ怒るんだから」
「今のも記録しておけ」
黒瀬が言うと、楽はスマホを取り出した。
「了解でーす」
「それから、昨日言った通り、変化があったら全部報告しろ」
「口調とかも?」
「ああ。学習による変化も重要なデータになる」
「はーい」
その後、三人はそれぞれ仕事に戻った。
イチゴ、二郎、三郎は、飼い主のそばで仕事ぶりを眺めたり、三体そろって別の部屋へ遊びに行ったりと、思い思いに過ごしていた。
気づけば、退勤時間になっていた。
黒瀬が時計を見る。
「今日はもういい。帰れ」
「お疲れさまでしたー」
千紘が二郎を見る。
「二郎、帰ろっか」
『えー、まだ遊んでる途中なのに』
二郎は手足をバタつかせた。
「駄々こねないの!」
千紘は二郎を抱き上げる。
『おのれぇ』
「おのれぇって何よ、もう」
千紘は腕の中でじたばたする二郎を見て笑った。
理人も立ち上がった。
「イチゴ、帰るぞ」
『命令しないでくれる?』
「じゃあ置いてく」
『待ちなさいよ!』
イチゴが慌てて理人のあとを追う。
楽も鞄を肩にかけた。
「三郎、帰るぞー」
三郎の耳がぴょこんと動いた。
『帰るでちゅ!』
「…………」
楽が止まった。
千紘も止まった。
理人も振り返った。
黒瀬の手が、一瞬だけ止まる。
「でちゅ!?」
三郎は満足そうに、ふんっと鼻を鳴らした。




