第17話「あと少しだけ」
いつものように三人と三匹は出社した。
会議室へ入ると、黒瀬が静かに口を開く。
「全員そろったな」
三人は席に着き、それぞれの足元には二郎、イチゴ、三郎が並ぶ。
黒瀬は資料を閉じ、三人を見渡した。
「まずは報告だ」
「実証実験は予定どおり終了した」
「蓄積されたデータも、十分集まった」
三人は顔を見合わせた。
黒瀬は続ける。
「予定どおり試作機は会社へ返却してもらう」
「返却日は来週だ」
その一言で、会議室が静まり返る。
楽は三郎を見る。
千紘は二郎を見つめる。
理人はイチゴへ視線を落とした。
黒瀬は少しだけ表情を和らげる。
「それまでは、いつもどおり過ごしてくれ」
「最後までデータは取る」
「……最後まで、相棒としてな」
三人は小さくうなずいた。
会議が終わる。
部屋を出ても、誰もすぐには口を開かなかった。
『どうした?』
二郎が首をかしげる。
『みんな静かね』
イチゴも不思議そうに辺りを見回す。
『何かあったでちゅ?』
三郎だけが三人の顔を交互に見つめていた。
千紘は無理に笑う。
「なんでもないよ」
理人も優しくイチゴをなでる。
「今日は早く帰ろうな」
楽は三郎を抱き上げ、少しだけ力を込めた。
「……あと少し、よろしくな」
『もちろんでちゅ!』
何も知らずに笑う三郎を見て、楽も笑い返した。
三人の笑顔が、少しだけ寂しそうだった。




