第13話「人を楽しませるAI」
楽は箸を止めた。
「それは――」
「AIに、ユーモアやブラックジョークを覚えさせたり」
「落語や漫才を学習させたり」
「議論になったら、相手を論破する話し方まで学習させてました」
「……ふふっ」
千紘が笑いをこらえた。
「あっ、ごめんなさい」
「俺は、本気だったんです」
楽はぎゅっと拳を握った。
理人が吹き出す。
「お前、何やってんだよ」
楽は頭をかいた。
「だって、せっかくAIなんだから、
便利なだけじゃつまらないと思って」
「笑わせたり、雑談したり、会話が楽しいAIのほうがいいじゃないですか」
黒瀬は苦笑した。
「気持ちは分かる」
「だが、あの部署は正確な情報を伝えることが最優先だ」
楽も苦笑する。
「『性格が悪いAIを作る気か』って、上からずいぶん怒られました」
黒瀬は少し間を置き、楽を見た。
「だが、今のお前の部署は違う」
「AIペットは、人を楽しませることも仕事だ」
「ここなら、お前の発想を思い切り生かせ」
楽は少し目を丸くした。
「……ありがとうございます」
三匹は部屋の隅を楽しそうに駆け回っていた。
『捕まえたでちゅ!』
『おのれぇ!』『やったなぁ!』
『うふふ♥』
黒瀬は思わず吹き出した。
「……こいつら、勝手に面白いことをやってるじゃないか」
楽も笑う。
「俺、何も教えてないですよ」
「それでいい」
「人を楽しませるAIになってる証拠だ」
三匹は今日も楽しそうに追いかけっこを続けていた。
その様子を見て、楽はふっと笑う。
「明日は休日だし、思い切り飲みましょう」
楽はビールをぐいっと飲み干した。
理人は呆れたように笑った。
「お前、切り替え早いな」
四人の笑い声は、しばらく途切れることがなかった。




