第11話「社食へ急げ」
「おい!」
楽が三郎を抱き上げた。
「お前のせいで昼休みなくなるじゃねぇか!」
『僕は悪くないでちゅ』
「どこがだよ!」
千紘が苦笑する。
「確かに、三郎のポーズ見てたら結構時間たっちゃったね」
理人は腕時計を見た。
「あと二十五分だ」
「急ぐぞ」
「社食、混む前に行かないと」
三人は足早に社員食堂へ向かった。
到着すると、昼休みの社員たちで賑わっていた。
その時だった。
三郎が再び両前足をぐっと持ち上げ、
力こぶを見せフロント・ダブル・バイセップスポーズを決め込む。
「おい、何してんだ!」
「やめろ!分析はしなくていい」
女性社員たちが思わず足を止めた。
「あっ、見て!」 「かわいい〜!」
『当然よ♥』
イチゴは片目をつぶってウインクした。
『俺は?』 『かっこいいだろ』
二郎が前足を上げる。
『僕も男前でちゅ!』
三郎も胸を張った。
「お前ら、いいから大人しくしてろ!」 楽は額に手を当てる。
「俺たちは昼飯買ってくるから、ここで待ってろよ」
『了解でちゅ!』
三匹は元気よく返事をした。
三人が食券売り場へ向かう。
待っている間。
周囲から社員たちの話し声が聞こえてきた。
「昨日のドラマ見た?」
「その映画、面白かったよ」
「えっ、そのインフルエンサー知ってる!」
「課長、今日も機嫌悪かったなぁ」
「あの人機嫌いい時あるか?」
「週末どこ行く?」
三郎は耳をぴくぴく動かした。
『人間は不思議でちゅ』
『仕事の話をしていたと思えば』
『急にドラマの話になって』
「私ね、朝、勢いよく起きたら、ぎっくり腰になっちゃって」
「一人だったから、大変だったのよ」
「だから朝起きる時は、気をつけないとダメよ」
「今日は残業しないで帰らないとなぁ」
『また仕事の話に戻るでちゅ』
二郎が腕を組む。
『人間は話題がよく変わるな』
『でも帰る頃には「今日の夕飯どうする」が始まる』
『生活のことばかり考えてるんだ』
イチゴはくすっと笑った。
『それが人間らしいじゃない♥』
三匹は顔を見合わせ、小さく笑った。
『人間って』
『見てて飽きないでちゅ』
社員たちの話し声が聞こえてくる。
「そういえば、駅前にペット同伴OKの居酒屋できたんだって」
「今度の休みに行ってみよう」




