第14話「黒き騎士」
第14話を読んでいただき、ありがとうございます。
前回、黒紋教団による王都襲撃が始まり、平和だった王都アストリアは一瞬にして戦場へと変わりました。レインは大切な人々を守るため、自らの意思で剣を握り、眠っていた力の一端を初めて解放しました。
今回は、そんなレインの前に、黒紋教団の中でも特に強大な力を持つ「黒き騎士」が姿を現します。レインはこれまで経験したことのないほどの強敵を前に、再び自分自身の力と向き合うことになります。
そして、レインの力に反応する銀色の首飾り、再び動き始める魔剣グラディウス、そして黒き騎士が口にした「あのお方」という言葉。
王都を襲った黒紋教団の本当の目的も、少しずつ見え始めてきます。
それでは、第14話「黒き騎士」をお楽しみください。
王都アストリアの空を、黒い雲が覆っていた。
無数の魔法が空を飛び交い、城壁の向こうからは爆発音が絶え間なく響いている。
「南門が突破されました!」
「西区画にも敵が侵入!」
兵士たちが慌ただしく王城内を駆け回る。
セレナは剣を握りしめ、レインへ振り返った。
「ここから先は、私から離れないでください。」
「分かりました。」
二人は王城の外へ出た。
目の前に広がっていたのは、変わり果てた王都だった。
燃える建物。
崩れた石壁。
逃げ惑う人々。
そして、黒いローブをまとった教団員たち。
「なんで……。」
レインは言葉を失った。
「こんなことをして、何になるんですか。」
セレナは険しい表情を浮かべる。
「敵には敵の目的があります。」
「ですが、今はそれを考える時間はありません。」
「まず市民を守ります。」
その瞬間、巨大な火球が二人へ向かって飛んできた。
「危ない!」
セレナがレインを突き飛ばす。
ドォォン!!
火球が地面へ落ち、爆風が二人を襲った。
「セレナ!」
レインが叫ぶ。
セレナは立ち上がろうとするが、左腕を押さえている。
「大丈夫です。」
「少し擦っただけです。」
しかし、その顔には明らかな苦痛が浮かんでいた。
その時。
遠くから、ゆっくりと足音が聞こえてきた。
カツ。
カツ。
カツ。
黒い鎧。
長い外套。
顔を隠す兜。
その男が歩くたび、周囲の教団員たちが道を開ける。
「来たか。」
セレナの表情が変わった。
「黒騎士……。」
男はレインを見つめる。
「アルディスの血を継ぐ者。」
「お前を迎えに来た。」
レインは剣を握る。
「誰があなたなんかについていくか!」
黒騎士は笑った。
「ならば、力ずくで連れていく。」
次の瞬間、黒騎士の姿が消えた。
「速い!」
レインが気づいた時には、目の前に剣が迫っていた。
ガキィン!
セレナが間一髪で受け止める。
「レイン、下がって!」
黒騎士の一撃は重かった。
セレナの足が地面へ沈む。
「くっ……!」
「これほどの力を……。」
黒騎士はさらに剣を振る。
セレナは何度も攻撃を防ぐが、少しずつ押されていく。
レインはただ見ていることしかできない。
「セレナ!」
「来てはいけません!」
しかし黒騎士がセレナを吹き飛ばした。
「セレナ!」
レインは反射的に走り出す。
黒騎士が剣を振り上げる。
「終わりだ。」
その瞬間。
レインの胸元が輝いた。
銀色の首飾りから、白い光が溢れ出す。
黒騎士の剣が止まった。
「なに……?」
レインの足元に、見たことのない魔法陣が浮かび上がる。
頭の中へ、再び声が響いた。
「恐れるな。」
「お前は、守る者だ。」
レインの瞳が銀色に輝く。
そして、握っていた剣が淡い光をまとった。
「僕は……。」
レインは剣を構える。
「誰も失いたくない。」
黒騎士が初めて動揺した。
「その力……まさか。」
レインが地面を蹴る。
一瞬で距離を詰め、黒騎士へ剣を振り下ろす。
ガァン!
黒騎士の剣が弾き飛ばされた。
「ぐっ……!」
黒騎士は数メートル後退する。
周囲の教団員たちも驚いている。
「アルディスの力が……。」
「目覚めたのか……?」
レイン自身も驚いていた。
「これが……僕の力。」
しかし、次の瞬間。
黒騎士は剣を拾い上げる。
そして、兜の奥で笑った。
「面白い。」
「その力があれば、あのお方も喜ばれる。」
「お前は必ず、こちら側へ来る。」
黒騎士の足元に黒い魔法陣が浮かぶ。
「待て!」
レインが叫ぶ。
しかし黒騎士は魔法陣の中へ消えていった。
残された教団員たちも撤退を始める。
やがて王都に、ほんの一瞬の静けさが戻った。
セレナはレインを見る。
「今の力……。」
「僕にも分かりません。」
レインは震える手を見つめる。
その時、王城の地下から巨大な轟音が響いた。
ドォォォン!!
二人が振り返る。
王城の上空に、巨大な黒い魔法陣が浮かび上がっていた。
そしてその中心から、一本の黒い光が空へ伸びていく。
セレナが息をのむ。
「まさか……。」
王都の地下深く。
封印されていた魔剣グラディウスが、ゆっくりと祭壇から浮かび上がった。
「封印解除まで、あと一段階。」
誰もいない地下神殿で、謎の声が響く。
「もうすぐだ。」
王都襲撃は、まだ始まったばかりだった。
第14話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、黒紋教団の強敵「黒き騎士」が登場し、レインとの初めての本格的な対決が描かれました。
これまでのレインは、戦いの中で誰かに守られることが多く、自分自身の力で敵と戦うことはほとんどありませんでした。しかし今回は、セレナを守るために自ら前へ進み、眠っていた力を一時的に解放しました。
この力が一体何なのか。そして、なぜアルディス家の血にこの力が宿っているのか。まだ多くの謎が残されています。
また、黒き騎士がレインを「こちら側へ来る」と言ったことも、今後の物語に関わる重要な伏線です。黒紋教団がレインを狙う理由は、単純に英雄の血を引いているからだけではないのかもしれません。
さらに、魔剣グラディウスの封印も再び崩れ始めています。
王都襲撃の裏で、一体何が起ころうとしているのか。
次回、第15話では王都の戦いがさらに激しくなり、レインたちは黒紋教団の本当の目的へ近づいていきます。そして、王国を揺るがす新たな存在が姿を現します。
ここから物語は、第一章最大の戦いへ向けて大きく動き始めます。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
それでは、第15話でお会いしましょう。




