↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/132

第21話 尋問

 ……コランバイン?

 聞いたことない名だ。

 十中八九、作中にも出てきていない。


「こ、コランバイン!? こ、この男がですか!?」

「ああ。何回も顔を見たことがあるからな。流石の俺でも覚えた」

「……そんなにやばい人物なのか?」


 『やばいというか、なんというか……』とぼやきながら、バーベナは口を開いた。


「こいつは、元々そこそこ名の売れた冒険者だったんだ。功績だけ見れば、王家が何らかの役職をつけていてもおかしくはなかった」

「そんなに凄いのか」

「ああ。ただ、問題は素行だ。気に入らない奴は殴る。酔ったら周りにいるやつを殴る。虫の居所が悪かったら殴る。そんな人間だ」


 うわ、完全にやばいやつじゃん。


「そのくせして、腕利きの冒険者ときたもんだ。誰も手出しができん」

「まあ、そうだろうな」

「何回か貴族を殴って、流石に冒険者ライセンスは剥奪されたが、それでも腕っぷしと悪名──もとい、影響力は健在だ。王宮にもかなりの頻度で出入りしては、貴族から金を巻き上げて、それを酒代に使っているらしい」


 やばすぎだろ。

 てか、貴族を複数回殴って、その上でカツアゲまでしておいてまだ生きてるとか、どんだけ強いんだよ。


「こいつも、俺みたいに首輪を付けとけば扱いやすかったんだろうがな。そんな事もできないくらいの荒くれ者だ」

「まあ、持て余すわな」

「……で、どうする?」

「どうする、とは?」


 面倒くさそうな表情で、バーベナはコランバインを指さした。


「こいつ、放っておいたらこの病院を荒らすぞ。先に言っておくが、俺の研究室には絶対に連れてくるな。王宮を戦場に変えたくなかったらな」

「そうだな……。……とりあえず、ここに置いておく。いいか?」

「いえ、その、あの……」

「後で金は払う。たっぷりとな」


 そう言いながら、私は短剣を取り出した。

 そして、鞘に彫られているカーディナリス家の刻印を見せつけた。


「ヒッ!! か、カーディナリス家……!! か、かしこまりました!!」

「ああ。それと、私とバーベナが見張っているから、絶対に暴れさせない。安心しろ」

「わ、分かりました。それでは、失礼いたします!!」


 それだけ言い残し、医者は脱兎のごとく逃げ出した。


「おい、俺も残るのかよ!?」

「手伝ってくれ、バーベナ。私一人だと、それこそここを戦場にするぞ? 使える黒魔術なんて、あれくらいしかないんだからな」

「それはそうだが……。……ああ、分かった!! 乗り掛かった舟だ!!」

「それでいい」


 そう言って私は、にやりと笑みを浮かべた。





「う、うーん……」


 バーベナが来てから、一時間が経った頃だろうか。

 小さな呻き声が聞こえてきた。

 そして、その瞬間に二人同時に警戒態勢に入った。


「…………。……こ、ここは……?」

「病院だ」

「病院……? ……ああ、思い出した。思い出したぞ!! あのクソガキ、よくも俺を……!!」

「うるさい。私は、お前を尋問するためにここにいるんだ。許可なく発言するな」


 そう言うと、コランバインは鬼の形相でこちらを見てきた。


「尋問だと? お前、誰の差し金でそんな真似……!!」

「差し金も何も、私はこういう人間だ」


 先程の医者の時と同様に、私は短剣の刻印を見せつけた。


「……ああ? その家紋、どっかで見たことあるな」

「カーディナリス家の刻印だ。私は、カーディナリス・エリヌス。この家の長男だ」

「カーディナリス、カーディナリス……。……ああ、あの侯爵家か。最近バカ息子がこっちに来たとは聞いていたが、まさかお前か?」

「ああ。……無礼な発言は、貴様の娘に免じて許してやろう」

「へっ、何が許してやろうだ。お前如きが、俺より上だと思うなよ?」

「そうか? なら、これでどうだ?」


 バーベナをちらりと見る。

 こちらの意図を察したのか、バーベナは小さく頷いた。

 どうやら、治療直後の奴に使っても問題ないようだな。


「『トネール』」

「あ? うおっ!?」


 周囲に被害が及ばない程度に、雷魔法を放った。

 しかも、頭部目掛けて。


「……お前、ただの貴族じゃないな?」

「まあ、そこにいる奴の弟子だしな」

「一回もまともに教えたことは無いが、一応先生だ」

「あ? ……あ? お前、バーベナか?」

「よく知ってるな」

「当たり前だ。俺と同じ、王国の狂犬だろ? はっ、貴族程度に飼い慣らされやがって」

「……誰が飼い慣らされたって?」


 あっ、やばい。

 黒魔術使う時と同じ表情してる。


「落ち着け、二人とも。……特に、コランバインは尋問中だという事を思い出せ」

「ああ、そうだったな。いいぜ、その茶番劇に付き合ってやるよ」

「……だ、そうだ。頼んだ、バーベナ」

「先生使いの荒い弟子だな」


 そう言いつつも、バーベナは指を鳴らし、あらかじめ頼んでおいた魔法を使ってくれた。


「あ? なんだ、この霧」

「俺特製の魔法だ。麻痺、激痛、その他諸々の効果がある」

「毒か? そんなもん、俺には……!?」

「……効果ないだろうが、魔法は別だ。特に、俺のはドギツイぞ」


 ……そうだった、バーベナもバーベナでやばいんだった。

 魔法の詳細は聞いてなかったけど、この魔法、普通に悪役が使うやつじゃん。


「おい、エリヌス。支度はしてやったんだ。あとはやれ」

「ああ。さて、コランバイン殿。いくつかの質問に答えてもらおうか?」

「……いいぜ。どうせ動けないんだ。暇つぶしにやってやる」


 ……この強気な態度、どことなくバーベナ味を感じるな。

 流石は狂犬二人。


「まず一つ目。お前は、ダフネ殿の父上で間違いないか?」

「ダフネ……? ……ああ、あいつか。そうだ。それがどうした?」

「二つ目」


 コランバインの質問には答えず、言葉を続けた。


「ダフネ殿に殴られる直前、お前は何をした?」

「何って……。別に、なにも? ああ、そうだ。そういえば、あのガキから酒代をもらい損ねたんだ」

「……それは、ダフネ殿の事か?」

「ああ、そうだ。それが?」

「……いいや。三つ目。お前はどの程度の頻度で王宮に来ている?」

「酒代が無くなったらすぐだから、二日に一回じゃねえか? お前ら貴族の方が把握してるだろ」

「生憎と、私はまだ来たばかりなのでな」

「ああ、そうだったな」

「四つ目。ダフネ殿は、王宮に来ることはあるのか?」

「知らねえよ、あんなガキの事なんか」

「……五つ目。ダフネ殿とのけんかは、今日が初めてか?」

「んー……、そうだな。いつもはこっちが殴ってばっかだからな。俺の血とはいえ、あんな力を持ってるなんてな。化け物だ、ありゃ」

「……そうか。分かった」


「おっ、終わりか? なら、そろそろ暴れさせてもらうぞ?」

「させると思うか? この屑が」


 ……お。

 コランバインの奴、一瞬で距離を詰めてきた。

 ノーモーションで、どうやった?

 それに、この魔法の中で。

 ……まあ、いいや。


「あばよ、大貴族殿」


 段々と近づいてくる拳が、コマ送りになって見える。

 ……これは、まともに喰らえないな。


「暴れさせねえってのは、俺も言ったはずだぞ?」

「うぐっ!!! がはっ!!」


 バーベナの手から小さな黒い球が出たかと思うと、瞬時にコランバインに直撃した。

 そして、次の瞬間には、コランバインは吐血し、地面に倒れていた。


「魔獣捕獲用の魔法だが……お前には、これくらいでちょうどいいだろ?」

「この、くそ、や、ろう……」


 ……気絶したか。

 王家が早々にバーベナに首輪を付けたのは、マジでファインプレーだな。


「おい、エリヌス。いくらなんでも油断しすぎだぞ」

「大丈夫だから、隙を見せたんだがな」

「ふん、偉そうに」

「……さて、こいつはどうするべきか……」

「牢屋にでも放り込んでおけ。お前の権力なら可能だろ?」

「可能だが……。……ダフネ殿が何ていうかだな」

「…………。……まあ、いい。お前の好きにしろ。俺は帰るぞ」

「ああ。助かった」


 その言葉を言い終わる頃には、バーベナの姿は消えていた。

 ……さて。


「オリーブに頼んで、頑丈な鎖でも持ってきてもらうか」


 猛獣の放し飼いは危ないからな、うん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。