↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/132

第19話 手紙

 ダフネ様と別れてすぐの道で、私は少し考え事をしていた。

 内容は、ダフネ様の家についてだ。


 なんというか、あまりにも不釣り合いな家に感じた。

 家自体は庶民にしては大きいはずなのに、中は荒れている。

 だが、その荒れ方も、ここ数か月でああなったように見えた。

 まあ、素人の眼だから当てにはならないが、それでも、私は違和感を覚えた。


 そして、ダフネ様の母上の態度もおかしかった。

 王宮の近くに住んでいるとはいえ、普通であれば、貴族が家に来ればもう少し何かしらの反応を示すはずだ。

 私だって、見た目には気を遣っている。

 ……最低限だが。

 それでも、貴族の一人だという事は、一見すればわかるはずだ。

 それなのに、あの態度。

 貴族を相手するのに、慣れているようにしか見えない。


 ……というか、家に貴族が来るのに慣れている状況ってなんだ?

 思えば、ダフネ様は王宮に普通に侵入していた。

 王宮の門番ともあろう者が、あんな子供を見逃すはずがない。

 追い出されて然るべきだ。


 なのに、中には入れていた。


 という事は、ダフネ様が王宮に入ることは普通の事だという事になる。

 ……一庶民が?

 なぜ?


 そんな事を考えながら歩いていると、不意に誰かから触られたような気がした。

 スリか?


 そう思い、触られた辺りやポケットを探るが、特に変化はなく──


 ──いや、あった。


 ズボンに差し込むように、一枚の封筒が入っていた。

 ……物はすられなかったとはいえ、相手はその道の人間だろう。

 しかも、誰かに依頼されてるな。


 封筒には、ご丁寧にも封蝋がされてあった。

 この封蝋は……。

 …………。


「おいおい、マジかよ」


 つぅーっと、冷や汗が額を伝う。

 ただ事じゃないぞ、これ。

 ……中身も、まず間違いなく、良い内容ではないな。


 まあ、なんにせよ、ここで開ける訳にはいかない。

 恐らく、中身を他人には見られてはいけない類のやつだ。

 とりあえず、図書館に急ごう。

 禁書庫なら、誰にも見られずに済むはずだ。





 ……誰もいないよな?

 禁書庫に到着するや否や、辺りをキョロキョロと見回し、人間どころか、ネズミの一匹もいないことを確認した。


「……ふぅ……」


 あー、緊張した。

 怪しまれないようにするのに必死で、ずっと汗が止まらなかった。

 ……でも。


「ここから、また緊張させられるんだろうな……」


 溜め息交じりに、そう呟く。

 内容が悪いことは確定している。

 あとは、どの程度最悪(・・)なのかだ。


 禁書庫の奥の奥へと移動し、再度周囲を確認する。

 そして、ようやく安心できたところで、懐からナイフを取り出し、この忌々しい封蝋を切ろうと──


「エリヌス様!!」


 ──しようとした瞬間、図書館中に聞き馴染みのある声が響いてきた。


 ……オリーブ?

 何の用で来たんだ?

 ……いや、考えるのはよそう。


 切羽詰まった声をしていた。


 緊急事態発生だ。

 手紙は……懐に入れておけばいいだろう。

 上着の内ポケットなら、バレる心配もまずない。

 悩みの種を後回しにして身につけるのはなんとも気色が悪いが、事態が事態だ。

 とりあえず、オリーブのところへ急ごう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。