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帝都にある谷の町の住人  作者: うしねことその身内
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15. 父の好きな出来立てビールを味わう

15. 父の好きな出来立てビールを味わう


ある日、近所に住んでいる家族から、隣駅にあるビール工場見学のお誘いが、我が家にあった。


その近所に住んでいる家族、吉川さんの旦那さんがそのビール工場で働いており、

母がいつも料理をおすそ分けしてくれるそのお礼とのこと。


その話を聞いた父は、思いっきり喜んでいた。


佳代子はそんな父を見て、大人の男の人は単純ね、

とちらっと思う。


ビール工場見学の日、父と母、そして兄と私は、電車で隣駅まで行き、

その駅近くにあるビール工場へ歩いていく。


門の所の守衛に近所の人の名前と、工場見学に来た旨、父は伝える。


しばらくすると、案内の中年の男性がやってくる。


「ようこそ、私たちの工場へ。

案内の久保と申します。」


「こちらこそ、ありがとうございます。」


父はしきりに恐縮をしていた。

早速工場見学が始まる。


麦芽粉砕から糖化、ろ過、煮沸の工程を見ていく。


「あの緑色の穂はホップかね?」

父は質問する。


「そうです。苦いですよ。」


久保さんは、ホップの入ったかごから1つホップを取り出し、

父に渡す。


父は躊躇せず、ホップを食べる。

「苦えな、これは。」


父は眉間にしわを寄せる。

そんな父の顔がなぜか、佳代子はおかしかった。

その後、冷却ののち発酵の工程を見て回る。


「おう!吉川さん!」


父が突然、醸造工程で検査をしていた男性に声をかけた。


「ああ、鉄二さん。いらっしゃい。

見学はどうですか?」


「最高に面白い。後で、出来立てのビール、飲めるんだよな?」


「ははは、もちろんです。」


最後に貯蔵されたビールを分に詰める工程を見た後、

そのかごから1本ビールを取り出した久保さんは、

隣の試飲室に持っていく。


「こちらで試飲してください。」


「亮一と佳代子にはまだ早いからな。

大人になってからだ。」


そう言うと父は、今まで見たことのない最高の笑顔で、

ビールを飲みだした。


その様子を見た、久保さんは苦笑いをしていた。


お土産にもらった1本のビールの見て、帰りの電車の中で、

ほろ酔いだった父は、とても幸せそうだった。

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