14. 谷の町に地下鉄がやってくる
14. 谷の町に地下鉄がやってくる
ある日、佳代子の家の近くで大きな工事が始まった。
谷の町の駅に新たな路線建設が開始されたとのことで、
兄の亮一は毎日その工事現場へ見学に行っていた。
亮一曰く、
「電車が地下を走るんだ。
地下を走るのに、この周辺では、高いところを走る、
そんな電車の工事、見ずにいられない。」
とのことだった。
家の近くの駅の広場には鉄骨が立てられ始めており、
工事資材が駅前広場に積まれていた。
最近、駅の近くを流れている川の上にデパートができ、
駅の風景は大きく変わっていたが、その工事により、
更に駅周辺の風景は変わろうとしていた。
佳代子の通う学校の近くをこの地下鉄が通るとのことで、
学校に通う時、この工事現場に沿って、歩いていく。谷の駅を出ると、
すぐにトンネルに入るとのことで、
通学路の道路は『細長い穴』が掘られていた。
そして、工事の際の杭打機の音が鳴り響いていた。
佳代子は友人の奈々枝や祥子と、この工事現場沿いの歩道を歩く時、
耳をふさぎ、
「うるさいね。」
といつも言っていた。
そんなある日、亮一はとんでもないことを言いだした。
「この地下鉄の通るところをずうっと歩いて行き、デパート街のある町まで歩く。」
と言うのだ。
父の鉄二は、
「そんなことより勉強をしろ。」
という。
私もその通りだと思う。
そんな亮一を父も止められず、ある日亮一は学校から帰ってくると、
デパート街のある町まで歩いて行ってしまった。
母も、亮一が作戦を決行したとは知らず、
周囲が暗くなっても戻らず、
夜になって、佳代子の家を警察が訪ねてきた。
亮一をデパート街のある町で確保したとのことだった。
警察に話を聞くと、亮一は地下鉄の工事区間を見終わった後、
電車賃が無く戻れず、警察にお金を貸してくれないか、
と尋ねてきたとのこと。
父は激怒ししていたが、母がなだめ、結局のところ、亮一は母が迎えに行った。
その様なこともあり、地下鉄は開業した。
谷の町の駅を橋で超え、デパートのある建物の中に入る構造で、
兄の友人から聞いたところ、
とてもモダンな最先端の構造を、
なぜか亮一は友人に誇らしげに自慢していたとのこと。
佳代子は、なぜかそんな兄のことを恥ずかしく思った。




