1-3 世界の姿
定期考査のため、遅くなりました。申し訳ないです。
俺は今、美少女と一緒に街を歩いている。逃げるのに夢中で全く見ていなかった街は、まさにファンタジーの世界といった感じで、中世ヨーロッパ風の住宅に露店の数々。つい先ほどまで路地裏で怯えていた自分が馬鹿馬鹿しく感じる。この世界は希望に満ち溢れていた。通り過ぎる人たちは皆笑顔で、人生を満喫している、そんな雰囲気の街である。まあ、それも俺の存在が無ければだが……。
先ほど路地裏で、俺をを迎えにきたと宣言した美少女、リナ・アルカトロは、自分のフードマントを俺に被せて言った。
「街の人々のほとんどにとっては、あなたは平和を壊す災厄です。正体がバレないようこちらを着用して下さい。ここまでリナが着てきて温めておきましたから。」
そんなわけで今俺は正体を隠して街を歩いている。リナによると自分の師匠の使いで俺を迎えに来て、その「師匠」は自分の館に俺を招待しているとのこと。丘のトイレでの扱いとの差よ……。そんなことよりも、こんな美少女と街を歩けるだなんて…。元の世界では女子と話すのは苦手だったが、せっかく異世界に来たんだ、カッコいい男を目指さなければ!
「リナ、ちょっと聞いていいか?」
「はい!何なりと。」
リナは笑顔で答える。いやあ、この子は本当嬉しそうに俺と話してくれるな。元の世界の女子とは大違いだ。
「じゃあ聞くけど、俺がこの街の人達に忌み嫌われてるのってなぜなんだ?あと、それなのにどうしてリナや師匠さんは俺を歓迎してくれるんだ?」
「それは……。一つ目の質問に関してはお師匠様が説明してくださると思います。二つ目は簡単です。私達にとってあなたは世界を救う勇者様だからです。」
「いやいや、俺は非力で何も特殊能力なんて持ってないぞ。」
「ご謙遜を。あなたは失われし古の魔法『ルストレーム』を受け継いでいるではないですか。」
「その『ルストレーム』が何なのかよくわからないんだが……、トイレって意味か?」
「そのことについてもお師匠様が説明してくださるかと。私にはその『トイレ』という言葉がわからないのですが、どういう意味です?」
「えーと、排泄する場所です。」
「休憩室のことですか……。私も古魔法がどのような魔法かは存じ上げませんが、そんな下品なものと関係はないかと。」
瞬間リナは頰を赤らめた。俺だって恥ずかしいよ、こんなことを女子に聞いてしまうなんて。でも俺はトイレが原因でここに来たし、普通異世界でもトイレはトイレでわざわざ休憩室なんて言わないし、『ルストレーム』も休憩室もレストルームが関係している。糞ゲーの予感しかしない……。
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俺とリナは街の中心部に向かって歩いていった。そろそろ二時間は経過しただろうか。
「勇者様、見えて来ましたよ。あの一番奥に見える独特な形の建物です。」
言われた通りに見てみると、誰が見逃すだろうか。他とは違った真っ黒な色に、堂々と掲げた「武道館」の文字、日本の武家屋敷がそこに建っていたのだった。




