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異世界転移の休憩室  作者: 津島 誠
自分だけがふざけた世界
5/5

1-BOSS お師匠様

西洋チックな建物に囲まれて見るからに場違いな武家屋敷。門には鎧をまとった番人が二人。鎧は西洋風であることにさらに違和感が湧く。


「お師匠様は晩餐室でお待ちです。今ご案内しますね。」


リナの後に従いいざ屋敷の中へ。屋敷の中に広がっていたのは……、やはり西洋風の造りだった。

日本っぽいのは見た目だけか。ひょっとして「お師匠様」は俺のように日本から来たのではないかと思っていたが、日本人が武家屋敷を建てて見た目だけにとどめるわけないよな。


ケンジはため息をつきながら晩餐室へ。扉が開かれると、いかにも貴族の食卓といった豪華な料理が並んだ長いテーブルが目についた。そしてテーブルの周りにはいかにも貴族の屋敷といった跪く家来達……⁈全員が武装している状態で、騎士の敬意を表す作法ですといった姿勢で固まっている。俺ってそんなに偉いのか?跪く家来達から視線を変えてテーブルの一番奥の席を見れば、屋敷の主人である「お師匠様」が……、いかにも強そうな老人がそこに座っていた。その容姿は伝説の神、ゼ〇スのようで、その四肢からはただならぬオーラが放たれていた。


「《聖域》に現れたというのは……そなたか」


老人がこちらにギョロリと睨みをきかせ、低く重たい声で尋ねる。


「ふ、ふぁい!」


緊張感で張り裂けた声で返事をした自分。初対面第一声の印象は最悪であろう。あ、おわった、そんな声が聞こえる気がする。


「……そうか。ならばそこで待っておれ。」


ゼ〇ス師匠が立ち上がった。場の空気が張り詰めているのが目を閉じてもわかりそうだ。一歩また一歩と静かに、厳粛な足取りでこちらに近づいてくる。


冷や汗が止まらない。手汗で手はベトベトだ。状況は最悪である。母さん、いつも朝早くに起きて弁当作ってくれてありがとう。毎日美味しかったよ。せめて、トイレを出て行ってきますを言ったあとに死にたか…


「なんて良くできた勇者じゃろうか‼︎わしゃあ感動したぞ。」


目の前に来た老人が突然オイオイと泣き出した。


これには開いた口が塞がらない。救われたような、呆れたような。気づけば家来達も泣き出しているではないか。どうだろうか。初対面で「ふぁい!」と返事をし、場にいた全員が大泣き。地獄絵図だろ。こっちが恥ずかしいよ。殺される覚悟をしてたのに。


「すまんなあ。相手が老人だからと大声をあげてくれて。おかげでこちらまでよく聞こえた。なにせ長いテーブルじゃから、普通に答えられて聞こえなかったらどうしようかと心細かったんじゃよ。その親切心まさに騎士の鑑じゃ。」


「いえいえ、それほどのことは。」


なんとかクールに返すことができたが……、ギャップありすぎでしょお師匠様‼︎イメージが厳格な神様からビッ〇リマンのキャラまで変わっちゃったよ。この人が師匠で何を学べるのだろうか!


「では食事にしましょうか勇者様。」


お師匠様が態度を改めて恭しく提案する。


「勇者様なんて呼ばなくていいですよ。僕の名前はケンジです。そうお呼びください。」


「では改めましてケンジ殿、食事にしましょうか。」


ああ、やっと食事にありつける。


*****


「食事には満足して頂けましたかな?」


半日路地裏で震えてただけに、腹はものすごく空いていた。だから俺はさっきの緊張感はどこへやら、テーブルマナーも気にせず料理を貪り食べた。不躾だ、無礼だとして斬られるかもなんてこれっぽっちも思わない。だってほら……


「こんなにも美味しそうに食べてもらえると、わしゃ嬉しいですな。」


こんなお師匠様では稽古もだいぶ緩いのではないか?


「ケンジ殿、あなたは使いの者に事情を色々尋ねたそうですな。」


フォークの動きをピタリと止め、ケンジが顔を上げる。


「はい。」


その真剣さを感じ取ったのか、お師匠様も表情を変えた。


「どこから話そうかの…」


*****


老人の話は要点が掴みにくい。だからここは俺が聞いた話を説明しよう。


太古よりこの世界には様々な種族が存在したらしい。ゴブリン、エルフ、ドラゴン、いわゆるファンタジー世界の定番だ。そんな世界で人間は道具を扱う唯一の種族として生活していたらしい。道具といっても服や石器、土器など、元いた世界でいう古代人程度であった。当然大きな爪や牙などを持った種族に敵うわけがなく、その勢力は次第に衰えていった。しかし、それでも人間は諦めず必死に道具の改良をして他種族に立ち向かった。その姿に感銘を受けたこの世界の神は、別世界から勇者として一人の人間を招き、その者に1つだけ好きな能力を持たせた。勇者が手に入れた能力は魔法という概念を世界にもたらす能力、つまり魔法を創造する能力だった。戦乱の世に降り立った勇者は、人々に魔法を教え、魔法を人間の道具とした。そして人間は全種族を支配するまでになった。その人間の頂点に立った勇者は、最も脅威である悪魔族を封印し、その力を絶対のものとした。悪魔族のチカラは絶大で封印するのがやっとだったというのが定説らしい。

人間が全種族を支配し始めて3年経つと、人間の圧政に耐えきれなくなった他種族は、自由と魔法を求めて解放運動を開始した。人間は反対した。勇者は魔法を使い他種族を根絶やしにしようと考えた。それを見た神は、他種族にも魔法を扱う能力を与えた。解放軍の大将は、全ての種族が独立した国家を持つ世界を掲げて戦った。大戦の末、人間の政府は倒され、全種族が平等で平和な世界が作られた。


勇者は言った、いずれ悪魔族が復活して平等も平和も世界から消えてしまうだろうと。その時には別世界から自分の能力を引き継ぎし者がこの聖域から現れるであろうと。勇者はとある丘に小さな建物を建て、その中に姿を隠した。聖域はどんな魔法を使っても傷つけることができなかった。次に聖域の扉が開かれるときは、世界に災厄がもたらされるときであろう。


……俺、帰りたい。


それが話を全て聞いたケンジの素直な感想であった。


「あの、休憩室借りても良いですか?」


「衝撃的な話だったじゃろう。無理もない。休憩室で心の整理をした方が良いじゃろう。この部屋の隣にある来客用を使いなさいな。」


*****


こっちの世界ではトイレで心の整理をするものなのか。ただトイレに行きたかっただけなんだが……。まあトイレのシステムが元の世界と一緒で良かったか。


トイレットペーパーで拭く。慣れた手つきで水を流す。扉を開ける。


……、そこには自分の家が広がっていた。



高校生活に慣れないもので、毎日課題に追われる日々です。執筆の余裕ができたら再開します。次に執筆するときは他のジャンルも描いてみたいと思っているので、次回の更新はまだ目処が立っていないです。


追伸、暫くの間 “ともに夢見るかぐや姫” なんて作品を描きます。良かったら見てみてください。

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