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異世界転移の休憩室  作者: 津島 誠
自分だけがふざけた世界
3/5

1-2 糞ゲー主人公

既に日は暮れようとしている。しかしケンジは未だに路地裏から足を踏み出せずにいた。未知の世界に飛び出すのがひどく恐ろしいのだ。ケンジには物事を悲観的に捉える癖がある。中学生の頃は悪い点を取る自分を想像して理解度が不安になり、何度も要点を見直していたためテストの点数は学年トップまで上り詰めた。 だが高校に進学してからはさらに悲観さが増し、その場その場の自分の判断に自信が持てなくなり、優柔不断になってしまった。今も自分が残酷な結末を迎えるのを想像してしまい脚が動かなくなってしまったのだ。路地裏から出なければ状況打破に必要な情報も探しようがないことを頭では理解しているのだが…。


そのときだった。


「いいじゃねーか、おチビさんよー。こんなところには誰もいねーから。少しお兄さんたちと遊ぼうぜい。」

「大人しくした方が良いっすよ。兄貴はここらじゃ負け無しの格闘王っすから。」

「お断りします。リナは今お使いの最中ですから。喧嘩のお相手ならまた後日お受けします。」

「ガハハ。お前みたいなチビに何ができる。違う違う、お兄さんがお相手して欲しいのはあれだよあれ。まだ幼なくてそんなこと知らねーのか?ガハハハ」


次第に声は大きくなる。こちら側に歩いて来ているのだ。男2人と女1人、お使い中の幼い女の子がチンピラ2人に絡まれたというところだろう。困った女の子を救うという男子の使命もあるが、置かれている状況すら把握しきれていない自分が挑むには無謀すぎる相手だ。逃げるのが得策だが、この路地裏は狭い1本道。少し動いただけでチンピラたちに自分の位置が把握されて…


「誰だ、そこにいるのは?」


時すでに遅し。


「なんだお前、変な格好しやがって。ちょっと待てや。こんな不審者がただ道に迷ったとは思えねえな。なんだあ、俺らの邪魔でもしようと思ったのか?ちょうどいいい、この嬢ちゃんに俺の強さを見せてやるよ。」


絶体絶命なんだが。パジャマ着た手の汚い男子がどうやってこんなチンピラを倒せと?もう1人の方は背が俺と同じぐらいで筋肉もなさそうだからいけるかもしれないが、「兄貴」の方はゴツいし背は2メートル超えてるぞ。女の子はフードを被っているが身長からみるに13歳くらいだろうか。こんな大男がこんな少女に遊ぼうぜいとか鳥肌が立つ。どうする?背を向けて全力で逃げ出すか?いや、すぐに追いつかれるか…


その場に立ち尽くすケンジ。そこへ大男の拳が…


「兄貴、待って下さい!」


子分が声を張り上げた。その顔は何かに怯えているように蒼白だ。


「なぜお前が俺を止める?この男を殴って何が悪い?」

「俺、さっき兄貴の飯を買いに中央行った時に聞いちゃったんすよ。不思議な格好をした青年が聖域から現れたって。」


「聖域…?おい、じゃあこいつが…あの《古魔法(ルストレーム)》使いの…《古魔法剣聖(ルストレームナイト)》ってことか」


おい、ルストレームって…。ルストレーム→レストルーム→休憩室(rest room)→トイレ…。


「やっぱり糞ゲーじゃねーか!」


思わず大声を出すと、なぜか大男は恐怖のあまり逃げ出した。


「ひぃ!お、おぼえてやがれー!」

「兄貴ぃ、俺だけ置いていかないで下さいっすー!」


チンピラたちは俺の存在に恐怖を感じ逃げ出した。その事実に俺は開いた口が塞がらない。ただのトイレ帰りの人なんですけど…。何?俺ってそんなにすごい存在なの?


軽い混乱状態にあるケンジの元へ、助けられた少女が近づく。その足取りには嬉しさが隠しきれていなかった。


「お助けいただきありがとうございます。」


少女が自分を見上げて話しかけてきた。彼女はそっとフードを外す。中から現れたのは、空色のいわゆるウルフヘアーをした、元いた世界では想像できないほどの美少女であった。まだ幼さが残った可愛い顔立ちに、出会えたことを心から喜んでいる笑顔、憧れの英雄を見るような目を向ける彼女。俺は思わず心を奪われそうになる。


「やっとお会いすることができました。私はリナ・アルカトロ。ようこそ私たちの世界へ、《古魔法剣聖(レストルームナイト)》…、いえ、勇者様!」


ふざけているのはこの世界なのか。それとも真っ当な世界の中で1人だけふざけているのが自分なのか。そんな疑問は置いておいて、絶世の美少女に勇者と呼ばれたことを素直に喜ぶケンジであった。


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