慈愛の抱擁
「…え?な、なによ…襲わない…の?」
床にへたり込んだエルフレイデ様が、呆然とした声を漏らす。
俺が彼女を見下ろし、無理やり組み伏せることを予想していたのだろう。だが、俺が取った行動は、彼女の想像の斜め上を行くものだった。
俺はゆっくりと膝をつき、彼女と目線を合わせた。
そして、荒く、暴力的にではなく、まるでもろい硝子細工を扱うような手つきで、彼女の震える指先を包み込んだ。
「汚れてるんでしょ、聖女様。だったら、俺が綺麗にしてあげますよ」
「っ…なに、を…」
困惑する彼女の首元に手をかけ、純白の法衣のボタンを一つ、また一つと外していく。
それは、彼女が今まで俺に行ってきた蹂躙とは正反対の、静かで、慈しみに満ちた動作だった。
「…っ…あ…」
肩から法衣が滑り落ち、下着越しに露わになった彼女の肌は、透き通るように白く、そして痛々しいほどに熱を持っていた。
俺は彼女を優しく引き寄せ、その細い体を胸の中に閉じ込める。
「…ひっ!あ…」
俺の体温が直接触れた瞬間、彼女の背中が大きく反った。
だが俺は、彼女を逃さない。
耳元に口を寄せ、髪の隙間に指を滑り込ませる。ただそれだけ。耳をなぞり、さらりと髪をかき上げただけなのに。
「…あ、んっ…♡ひ、あ…ぁ…っ♡」
彼女の口から、今まで聞いたこともないような、甘く、色っぽい声が漏れた。
聖女として崇められ、誰にも触れさせなかった神域を、俺の指先が蹂躙していく。
「気持ちいいですか、エルフレイデ様…俺の手、汚いですか?」
「…っ、ちが…ちがう…う♡…あ、ああ…おかしい、わ…殴られるより…ずっと…っ」
俺は彼女の背中を、円を描くように優しく撫でる。
前世のブラック企業で学んだ相手を落ち着かせるための、マニュアル通りのスキンシップ。それが、飢えていた彼女の本能を激しく揺さぶっていた。
「いいですよ。全部、俺に預けて…聖女様は、ただの女の子に戻ればいい」
「…っ、あ♡……ずるい…ずるいわ…カイル…っ…!」
彼女の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
暴力で屈服させるのではない。
無限の優しさという名の毒で、彼女の理性を溶かしていく。
俺の腕の中で、エルフレイデ様はもはや抵抗することも忘れ、だらしなく体を預けてきた。
「ねえ、聖女様…あなたの心の中にある『汚れ』…俺が、口移しで吸い取ってあげましょうか?」
「…っ…ぁ…は、はい♡…っ…おねがい…するわ…っ」
潤んだ瞳で俺を見上げる彼女の顔に、もはや筆頭聖女の威厳は微塵も残っていなかった。
俺は、震える彼女の唇へと、ゆっくりと顔を近づけた。




