聖女の指先、禁忌の肌触り
「…脱げと言ったのよ。聞こえなかったのかしら、この駄犬」
エルフレイデ様の声は低く、どこか震えていた。
俺は言われるがままにボロ布のような上着を脱ぎ捨て、鋼のように鍛えられた?というより、前世の激務とこの世界の地下生活で贅肉が削ぎ落とされた上半身を晒した。
「…っ」
彼女の喉が小さく鳴る。
暴力とヒールを繰り返した俺の肌は、傷一つないはずなのに、どこか使い込まれた道具特有の凄みがあったらしい。
「いいでしょう…それじゃあ、まずは消毒からよ」
彼女は革カバンから取り出した薬瓶の栓を抜いた。
部屋の中に、鼻を突くような、それでいて脳を痺れさせる甘い香りが広がる。
「それは?」
「…神殿に伝わる、特殊な霊薬よ。肉体の感度を強制的に高め、魔力の通りを良くする…本来は、高位の儀式に使うものだけど」
彼女は手のひらにその液体を垂らすと、躊躇いがちに俺の胸板に触れた。
「あ…っ」
触れられた瞬間、電撃が走った。
ただの指先が、熱した鉄の棒のように熱く感じる。冷たいはずの霊薬が、皮膚の上でバチバチと火花を散らしているかのようだ。
「ふ、ふふ。どう?昨日のようにはいかないでしょう?」
「…くっ…あぁ、これ…すごいな…強烈なカフェインを、直接脳にブチ込まれた気分だ」
「いつまで持つかしら?まだ、始まったばかりよ」
エルフレイデ様は俺の背後に回り込むと、耳元で熱い吐息を漏らした。
彼女の指が、俺の首筋から肩、そして背中へと這っていく。
霊薬のせいで、彼女の指の動き一つ一つが、神経を直接逆なでするような快感と苦痛となって押し寄せてきた。
「ねえ、カイル。貴方は昨日、私に汚せと言ったわね」
「ええ…言いましたよ…あぁ、くそ…指が熱い」
「なら、見せてあげるわ。聖女の私が、どれだけ貴方を…その…『特別』に扱ってあげるか」
彼女の指が、俺の腰のラインをなぞり、ズボンの境界線に指をかけた。
その瞬間、俺は振り返って彼女の手首を掴んだ。
「っ…な、何よ!」
「聖女様。手が、震えすぎですよ…そんなに怖いなら、無理しなくていい。俺はまた、殴られるだけでも十分ですから」
「ち…違う!怖くないわ!私は、貴方を…屈服させたいだけ…っ!」
彼女の瞳は、涙で潤んでいた。
高潔な聖女として生きてきた彼女にとって、男の肌に触れ、その反応を楽しむという行為は、魂を削るような背徳行為なのだろう。
だが、その背徳感が、彼女の中に眠る加虐心をさらに燃え上がらせている。
「なら、目を開けて、しっかり見てください…俺が、あんたのせいで、どんなに『汚れて』いくか」
俺は彼女の手を、自分の一番熱くなっている場所へと導いた。
「ひっ…!?あ、ああ…っ!」
触れた瞬間、彼女の腰が砕け、俺の胸に倒れ込んできた。
「あつ、い…何よ、これ…貴方、本当に…っ」
「あなたのせいで、こうなったんですよ…責任、取ってくださいね?」
エルフレイデ様は俺の胸板に顔を埋め、ぐちゃぐちゃに乱れた呼吸をぶつけてきた。
彼女の口から漏れるのは、もはや罵倒ではなく、甘く溶けたような呻き声だ。
「…っ…ずるいわ…こんなの…こんなのもう、『浄化』じゃない…っ…でも…ああ…気持ちいい…っ!」
彼女の指が、霊薬と汗で滑りながら、俺の肌を強く撫でる。
俺もまた、彼女の細い腰を抱き寄せ、その柔らかい体温を確かめる。
「聖女様…まだ、終わらせませんよ…定時までは、たっぷり時間があるんだから」
「…っ…ぁ…むり…もう、立ってられない…っ♡」
膝をつき、俺の足元で崩れ落ちるエルフレイデ様。
その姿は、民衆が崇める慈愛の聖女ではなく、ただ一人の男に執着する、一匹のメスのそれだった。
「ふぅ…さて、それじゃあ…本番の『検品』、始めましょうか」
俺は、床にへたり込む彼女を見下ろし、不敵に笑った。




