クズ司祭たちの悪あがき(ざまぁ)
闇の神殿のホワイト化に向けた第一歩である『ブレイク・ルーム』が大成功を収めた翌日。
やはりというか、予想通りというか、懲戒解雇を言い渡したはずの老害司祭たちが、往生際悪くも数人の護衛騎士を引き連れて会議室へと乗り込んできた。
「おい!ただの他国のゴミ箱と小娘が勝手な真似を!我々を神殿から追い出すだと?不当解雇も甚だしい!」
先頭の女老司祭が、脂ぎった顔を歪めてデスクを叩く。
「どうしても我々を辞めさせたいと言うなら、一人あたり金貨一万枚の『役員退職金』と、今後の生活を保障する『特別功労金』を要求する!払わねば、この国の王に掛け合って、お前たちの買収を国家全土で差し止めてもらうからな!」
ふんぞり返る老害クズども。
典型的なゴネ得を狙った、見苦しい悪あがきだ。
その言葉を聞いた瞬間、隣にいたエルフレイデの周囲からピキッ…と大理石の床をひび割れさせるほどの光のプレッシャーが漏れ出したが、俺は静かにその肩を手で制した。
「エルフレイデ。大丈夫です。私にお任せください」
「…カ、カイル…(きゅん♡)」
仕事モードで、二人きりではない公の場で、初めて「様」を抜いて自分の名前を呼んでくれた俺の低音ボイスに、エルフレイデは一瞬で顔を真っ赤にして大人しくなった。
正妻を黙らせるライフハックを発見した気がする。
俺は掛けてもいない眼鏡をクイッと上げると、懐から一冊の、どす黒い魔力で封印された帳簿を取り出し、デスクへ優雅に滑らせた。
「司祭様方。前世の法務・労務の世界には、『懲戒解雇における退職金不支給の原則』というものがありましてね」
「な、何だと?」
「あなた方が娯楽費として処理していた神殿の予算ですが、こちらの裏帳簿のログを我が光の国神殿の法務チームが精査したところ、過去五年分だけで、聖女たちの設備投資費から計金貨十万枚相当の『使途不明金(横領)』が発覚いたしました」
俺は完璧なビジネススマイルを浮かべたまま、冷徹に言葉を続ける。
「さらに、モルガナ様を筆頭とした労働者への『安全配慮義務違反』、および『壊れたら廃棄すればいい』という発言にみる、組織に対する重大な背信行為。これらはすべて、一銅貨の退職金すら発生しない『一発レッドカード(即時懲戒解雇)』の事由に該当します」
「う、うるさい!そんな他国の法律など知るか!証拠もなしに…」
「証拠なら、ここにありますわよ?」
会議室の扉が開き、すっかり顔色の良くなったモルガナが、闇の国の『国王』を伴って入ってきた。
国王の手には、魔導録音機が握られている。
『…そんな事、知るか! 壊れたら見習いを聖女にすればいい事だ!…』
部屋中に響き渡る、先日の老司祭の生々しいクズ発言。
「なっ!こ、国王様!?これ、これは誤解で…」
「黙れ、神殿の寄生虫どもめ!」
国王が激怒の声をあげる。
「聖女たちを私物化し、国費を横領していたこと、すでにカイル殿からの報告書で全て把握した!貴様らの財産は本日付で全て没収、全員監獄行きだ!」
「そ、そんな!頼む、待ってくれ!」
一瞬にしてすべてを失い、床にへたり込む老害ども。
そこへ、エルフレイデがゆっくりと歩み寄り、真っ二つに割れた昨日のデスクの残骸を、素手でメキメキメキ…と雑巾のように雑に雑にねじ切りながら極上の笑顔で見下ろした。
「うちの優秀な執行役員(旦那)を『ゴミ箱の男』呼ばわりして、不当な退職金を脅し取ろうとした罪は重いわよ?命があるだけありがたいと思いなさい、この社会の産業廃棄物ども!」
「「ヒィィィィッ!!」」
エルフレイデ様のゴリラ並みの握力と大聖女の威圧に、老害司祭たちは文字通り腰を抜かし、護衛の騎士たちに引きずられるようにして監獄へと連行されていった。
完全なる『ざまぁ』の達成である。
「素晴らしい手際ね、カイル、エルフレイデ。これで闇の神殿の膿はすべて出し切れたわ」
モルガナがパチパチと拍手を送る。
これにて、隣国・闇の神殿のブラック体質買収プロジェクトは、これ以上ない大勝利で幕を閉じた。
「ふぅ…これでようやく、闇の国での『業務』はすべてコンプリートですね」
俺が手袋を外して息を吐くと、エルフレイデが背後からガシッと俺の首に腕を回し、耳元で熱い吐息を吹きかけてきた。
「ねぇ、カイル。仕事が『コンプリート』したってことは…これから明日の朝まで、完全なオフのプライベートタイムってことでいいのよね?」
ビジネススーツのボタンを器用に一つ外し、完全に夜のボス(肉食妻)の目になっているエルフレイデ様。
他国のブラック上層部を完膚なきまでに論破した俺を待っていたのは、やはり、正妻による容赦のない有給休暇(新婚イチャイチャ)の始まりだった。




