予算横領と、使い捨ての聖女たち
「モルガナ様、これほど多くの汚れを溜め込んで…一体、この国の『サンドバッグ奴隷(ゴミ箱)』たちはどうなっているのですか?稼働率の計算が合いませんよ」
俺がタブレット(魔導端末)を叩きながら問い詰めると、モルガナ様はドレスの胸元をかきむしりながら、苦しげに顔を伏せた。
「カイル…それが…いないのよ。この神殿にはもう、実働できるゴミ箱が一人も…」
「は?…まさか、ゴミ箱の補充(採用)がされていない、と?」
俺の言葉に、後ろに控えていた老司祭の一人が、鼻を鳴らして傲慢に言い放った。
「ふん、そんな物に金を掛けてもしょうがないだろ。ただの奴隷を買い足すなど、予算の無駄遣いだ!」
「…予算の無駄、ですか」
俺は眼鏡の奥の目を冷たく細める。
事前にフィオナさんから受け取っていた闇の神殿の財務データ(裏帳簿)の数字が、頭の中でピタリと繋がった。
「司祭様。データによれば、国から『聖女管理・環境維持費』として、毎年莫大な予算が降りているはずですが?その予算はどこへ消えたのですか?」
「くっ、それは…神殿の威厳を保つための、高尚な娯楽費…ゲフン、お付き合いの費用だ!」
娯楽費。
つまり、新たなゴミ箱(備品)を買う予算を削り、自分たちの贅沢品や夜の街への接待費に回したということだ。
完全なる予算の横領、および設備投資の怠慢。
「なっ!それじゃあ、汚れを溜め込んだモルガナや聖女たちが、内側から壊れてしまうじゃないの!」
エルフレイデ様が拳を限界まで握りしめ、怒りで声を震わせる。同じ大聖女として、現場の苦しみが痛いほど分かるのだろう。
しかし、老司祭は悪びれる様子もなく、冷酷に笑った。
「そんな事、知るか!壊れたら、下に見習いがいくらでもいる!壊れた聖女は廃棄して、その見習いを新しい聖女に昇格させればいいだけの事だろ!」
「っ!!」
エルフレイデ様から、部屋の空気をピキピキと凍らせるほどの、凄まじい光のプレッシャーが放たれた。
今にもこの老害を物理的に浄化(消滅)しそうな勢いだ。
だが、それよりも早く。
「そこまでです、エルフレイデ様。社長が手を汚す価値もありません」
俺は一歩前に出ると、その場にいる全員が背筋を凍らせるほどの、冷徹極まるビジネススマイルを浮かべた。
「司祭様方。素晴らしい『脳内お花畑経営』ですね。前世でも、あなた方のような無能な経営陣が、現場を使い潰して会社をいくつも倒産させてきました」
「な、なんだと!?無礼者め、一介のコンサルタントが!」
「静かにしてください。今、俺が喋っています」
冷たい声で一喝すると、老司祭たちは言葉を失ってガチガチと歯を鳴らした。
「聖女という『高付加価値な熟練労働者』を使い捨てにし、初期投資(ゴミ箱の購入)をケチって目先の娯楽費に換える。これは経営ではなく、ただの『自殺行為』です。モルガナ様が倒れれば、この国は一日で闇に呑まれる。その時、あなた方の娯楽費はどこから出るのですか?」
俺は手袋をはめた指先で、老司祭の胸元をトントンと冷たく叩く。
「これより、我が光の国神殿グループによる、当神殿の『敵対的買収(M&A)』手続きに移行します。あなた方役員(司祭)は全員、本日付で『懲戒解雇』。そして…」
俺はボロボロのモルガナ様を振り返り、優しく、けれどプロとしての絶対的な自信を込めて微笑んだ。
「モルガナ様。大変お待たせいたしました。これより、溜まりに溜まったその『特級の汚れ』、この俺が全件、一滴残らず受注(引き受け)いたします」
「あ、あぁ…カイルぅ♡」
老害たちの断罪と、モルガナ様への至高の検品が、今同時に幕を開ける。




