体育会系取引先(騎士)の無理難題
「騎士ヒルダ、貴公に命じるわ。この男が二度と他所見できないよう、その重い汚れで徹底的に『教育』しなさい!」
「はっ!聖女様の御心のままに!」
エルフレイデ様の命令の下、ヒルダはガシャリと鎧の音を鳴らし、俺の鼻先に顔を寄せた。
この距離で見ると、彼女の瞳は法を守る者のそれではなく、完全に自分のお気に入りのプロジェクト(聖女)を完遂するためなら、下請け(俺)の命なんて何とも思っていない体育会系の取引先のそれだった。
「さて、カイル。貴公の評判は聞いている。『どんな汚れも飲み干す不壊のゴミ箱』だと。だが、私の汚れは並大抵ではないぞ?鍛錬の苦しみ、戦場の殺気、そして…聖女様を想うあまりに歪んだ私の『独占欲』…」
「あの、ヒルダ様。できれば、見積書(お仕置きの内容)を先にいただきたいのですが」
「見積もりなど不要だ!現場で、身体で覚えろ!」
…あぁ、これだから体育会系は。
ヒルダは強引に俺の腕を掴み、そのまま壁際に押し付けた。
彼女の纏う汚れは、聖女様の熱とも、フィオナの冷たさとも違う。それは、硬く、重く、圧迫感のある、物理的な圧力そのもの。
「ぐっ…お、重いっ。これ、締め切り当日の部長のプレッシャーよりキツいぞ」
「ふん、まだ序の口だ!私は体育会系でな。根性と気合があれば、汚れなどいくらでも出せるし、いくらでもぶつけられると思っている!」
ヒルダは、鎧の篭手を外した。その手のひらは、剣ダコで硬くなっており、触れられるだけで肌がヒリつく。
「見ていろ。聖女様への忠誠が深すぎるあまり、私の体内に溜まったこのドロドロとした『滾り』を…貴公の中に、強制的に『納品』してやる!」
「ああっ、ちょっ!騎士様、それは納品っていうか、不法投棄です!」
ヒルダは俺の首筋を噛むように吸い付いた。
それは愛撫というよりは、獲物を仕留める猛獣の挙動に近い。
すると、彼女の身体から、鉄の匂いと、戦場を駆ける汗の匂い、そして聖女を狂信的に崇拝するがゆえの歪んだ情欲が、凄まじい質量で俺の中に流れ込んできた。
「あ、あぁ!…くる、苦しい。何だこれ、質量保存の法則を無視してないか…ぐっ!?」
「ふっ。いい悲鳴だ。聖女様が優遇されるのは当然だが、私もお気に入りの『道具』には、とことん厳しく、とことん深く、責任を持って汚れを注ぐ主義でな!」
「ふふ、騎士様。ずいぶんと張り切っておられますわね。カイル様が壊れてしまったら、私のヒールが忙しくなりますわ」
フィオナが楽しそうに野次を飛ばし、エルフレイデ様は顔の汚れを拭いながら、不敵に笑ってそれを見下ろしている。
「…はぁ、はぁ。わかりましたよ…騎士様、あなたのその『体育会系の押し付け』…俺が全部、受け止めてやりますよ。その代わり、俺の身体が壊れたら、あなたの責任ですからね…」
「…っ!? ふ、ふん。生意気な口を…いいだろう、貴公が使い物にならなくなるまで、私の『全責任(汚れ)』を叩き込んでやる!」
新たな大型案件の強制受注。
俺の二十四時間営業スケジュールに、さらに守護騎士による過酷なトレーニングが組み込まれた瞬間だった。




