癒着する守護騎士
「だ、誰か…警察を呼んでくれ!暴力沙汰…いや、不当労働行為だ!」
俺がベッドの端で絶叫したその時、部屋の扉が再び、今度は正式な手順?物理的な蹴破りによって崩壊した。
「そこまでだ、不届き者め!」
現れたのは、白銀の鎧を纏った凛々しい女騎士だった。
腰に下げた長剣、一切の隙がない立ち居振る舞い。
まさにこの神殿の治安を守る守護騎士そのもの。
俺は一瞬、地獄に仏、ブラック企業に労働基準監督署が来たかのような希望を抱いた。
「助けてください、騎士様!今、ここで聖女様と癒やし手様が、俺という一個のリソースを巡ってコンプライアンス違反を…」
だが、俺の言葉は、女騎士が向けた鋭い眼光によって遮られた。
「黙れ!卑しい『ゴミ箱』が!聖女エルフレイデ様。ご無事ですか!」
女騎士は俺を無視し、顔に新商品のサンプルを浴びたままのエルフレイデ様の前に跪いた。
「見ての通りよ、ヒルダ。この男…私に、あろうことかこんな…無礼極まりない『汚れ』を…」
「なんという事だ!聖女様の清らかな御尊顔を汚すとは、万死に値する!」
ヒルダと呼ばれた女騎士は、ガバッと立ち上がると、抜き放った剣の切っ先を俺の喉元に突きつけた。
その瞳には、法を守る者の冷静さではなく、狂信的なまでのエルフレイデ様への傾倒が宿っている。
「騎士様。公平な裁きを。俺は被害者…」
「問答無用!貴公は勘違いしているようだが、我ら守護騎士の責務は、聖女様の『汚れ』を肩代わりすることにある。つまり、私は聖女様を守るため、あのお方が抱えるよりも、より強く、より深い『汚れ』を背負う覚悟ができているのだ!」
「…は?」
「聖女様がこの男を罰してスッキリされるというなら、私はその『処刑』の手伝いすら厭わない。いや、むしろ…」
ヒルダは、俺の全身を舐めるように見つめた。その頬が、騎士らしからぬ朱に染まる。
「聖女様の汚れを受け止めるこの『ゴミ箱』。どれほどの性能か、私が直々に検品(取り調べ)してやる必要があるようだな。聖女様、この男の身柄、一時的に私にお預けを!私の『重い汚れ』で、根性から叩き直して差し上げます!」
「…面白いわね、ヒルダ。貴女の鉄の意志を、この男がどこまで耐えられるか試してみなさい」
「ふふっ、騎士様まで参戦ですか。賑やかになりますわねぇ」
フィオナが横でクスクスと笑う。
味方だと思った警察(騎士)は、最初からメインクライアント(聖女)と癒着の関係だった。
…あ、これ、警察に駆け込んだらそのまま別室で特別取調が始まるパターンだ。
俺は喉元に突きつけられた剣先と、三人の女性たちの熱い視線に囲まれ、自分の福利厚生がマイナスを突き抜けて完全なる奉仕へと変わったことを確信した。




