飲みの席では注ぎ間違いに気を付けて
「今すぐ、剥ぎ取って検品してあげるわ!」
エルフレイデ様の怒声が轟き、その白い指がシーツの端を掴み上げた。
絶体絶命。
俺は本能的に、腰に乗っていたフィオナを強引に横へと押しやった。
証拠を隠滅し、最悪の衝突を回避しようとしたその瞬間!
フィオナが、まるで魔法のような、いや、もはや執念の『最後の一振り』を繰り出した。
…あっ、マズい!
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ブラック企業の宴会で、激昂する社長にビールを注ごうとして、間違えて先輩の注文したノンアルコールビールを…いや、それどころか、あろうことか『振って中身が吹き出した缶ビール』を社長の顔面に直撃させてしまったような、あの絶望。
ドピュッ。
「あ」
放たれた『汚れ』は、フィオナの中の汚れを洗うはずだったもの。
しかし、横に突き飛ばされたフィオナの反動と、シーツを剥ぎ取ったエルフレイデ様の勢いが最悪の角度で噛み合ってしまう。
宙を舞った白濁の汚れは、筆頭聖女の、あの気高くも美しい顔面に、吸い込まれるように着弾した。
「……え?」
静寂が、部屋を支配した。
エルフレイデ様の長い睫毛から、俺の『在庫』が、ポタリ…と頬を伝って落ちる。
彼女の美しい碧眼は、何が起きたのか理解できず、パチパチと瞬きを繰り返している。
一方のフィオナは、ベッドに倒れ込んだまま、乱れた髪を振り乱して「あぁっ♡」と、悦びに満ちた吐息を漏らしていた。
「……カイル?」
エルフレイデ様の声は、地鳴りのように低く、冷たかった。
沸点を超えた怒りは、もはや爆発すら通り越して、絶対零度の静寂へと至る。
「あの、聖女様。これはその…不慮の事故と言いますか。注ぎ口のコントロールミスでして…つまり、新商品のサンプルが、意図せずメインクライアント様に届いてしまったというか…」
「……殺すわ!」
「ですよねぇ!!」
エルフレイデ様の手から、魔導鞭が消えた。
代わりに彼女の両手に宿ったのは、直視することすら許されないほどに凝縮された、白銀の破壊的な再生魔法。
「汚れをぶつけなさいと言ったわね!カイル!!いいわ。今この場で、その空っぽになった貴方の身体を、私の魔法で強制的に限界突破させてあげる…死ぬまで出させ続けて、神殿中の汚れを一人で飲み干させてあげるわ!!」
「ふふっ。聖女様、そんなに顔を真っ赤にして。カイル様の『一番美味しいところ』を真っ先に受け取ったのは、貴女の方ではありませんか?」
フィオナの不敵な笑みが、火にガソリンをぶちまける。
「…フィオナ。貴方も、ただで済むと思わないことね。二人まとめて、私の『聖域』で永久に使い潰してあげるわ!!」
…ひぃっ!二十四時間営業どころか、3人での共同生活(強制労働)が始まっちゃうっ!
俺の謝罪は、激怒する聖女と挑発する癒やし手の、魔法の激突による爆風の中へと消えていった。




