癒やし手もまた純潔を散らす
「ふふ。今の言葉、聞き捨てなりませんわね」
フィオナの指先が、俺の喉元を鋭く、けれど愛おしそうになぞる。
「聖女にしかできない」という言葉は、彼女にとって、これまでの人生で受け続けてきた理不尽な差別の象徴そのものだったのだろう。
日陰に追いやられ、どれほど研鑽を積んでも「聖女ではないから」と評価されなかった彼女の地雷。
だが、その地雷を踏み抜いた俺に対し、彼女が向けたのは拒絶ではなく、狂気にも似た親愛だった。
「良いですわ、カイル様。貴方のようなゴミ箱にこそ、私のすべてを…あの女が独占していると思い込んでいる『聖域』の奥の汚れを、浄化していただきたいの」
彼女は自らの衣服を、まるで不要な抜け殻のように脱ぎ捨てた。
露わになったその肢体は、エルフレイデ様の太陽のような輝きとは対照的に、月光の下で咲く白百合のように儚く、それでいて毒々しいほどに整っていた。
「っ、フィオナ、さん…」
「黙って。今は、私だけを感じて…」
彼女が俺の上に跨ると、その冷たい肌から、せき止めていたダムが決壊したような汚れが流れ込んできた。
それは、自分を認めない世界への呪詛。そして、初めて自分の中を覗き込み、肯定してくれた俺への、泥のぬかるみのような執着。
「あ、あぁっ。これ…聖女様のより、ずっと『深い』な…」
「そうでしょう?あの方は、光の中にいるから…影の深さを知らない。私は、ずっとこの暗闇で…貴方を待っていたんですものっ♡」
俺は、彼女の震える肩を強く抱き寄せた。
地雷を踏んだなら、爆発ごと抱きしめればいい。それが、この監獄における俺の業務だ!
彼女の孤独と、歪んだ自尊心と、そして誰にも言えなかった「一番になりたい」という悲鳴を、俺の身体ですべて受け止める。
「いいですよ。全部、俺にぶつけてください。フィオナさんが一番だって、俺が…その身体に教えてあげますから」
「…っ♡…ぁ、あぁぁ…んっ♡!!」
俺が彼女の奥深くを、暴力ではなく、溶かすような慈しみで満たしていくと、フィオナの瞳から大粒の涙が溢れ出した。
筆頭聖女にしか許されないはずの、神聖なる再生の魔法。
それを自らの執念で会得した彼女の聖域が、俺の熱によって本物へと変質していく。
「カイル…カイル様…っ!あ、あぁ私、生きてる…今、一番に…なれてる…っ♡」
彼女の髪が俺の顔に絡み、甘く冷たい香りが鼻腔を突く。
エルフレイ様が征服なら、フィオナは侵食だ。
一滴ずつ、確実に、俺という器を自分の色で染め上げようとする彼女の粘着質な愛撫に、俺の意識もまた、深い泥沼へと沈んでいった。
夜の闇の中、二人の聖女の汚れを交互に受け止める俺の身体は、もはや聖も邪も判別のつかない、奇妙な均衡を保ち始めていた。




