癒やし手の実力
エルフレイデ様が、満足げな吐息を漏らして部屋を去っていく。
今日もまた、彼女の情熱的な浄化によって、俺の身体は一滴の余力も残さないほど搾り取られ、空っぽの抜け殻になっていた。
重い結界が閉まる音がした。
静寂が戻ったはずの室内で、ふわりと冷たい香りが漂う。
【ハイヒール】
鈴を転がすような涼やかな声とともに、透き通るような魔力が俺の全身を駆け抜けた。
ドロドロに溶けていた意識が、急速に冷やされ、整えられていく。癒やし手という職に甘んじているが、フィオナさんのヒールは、精度も出力も、あの筆頭聖女様と並び立つレベルだった。
「あ、力が…フィオナさんのヒール、凄いな。さっきまで指一本動かせなかったのに」
種切れを起こし、もはや機能停止していたはずの下半身にまで、瑞々しい活力が戻っていく。
俺が驚きとともに上半身を起こすと、フィオナさんはベッドの傍らで、静かに、けれど熱を帯びた瞳で俺を見つめていた。
「カイル様。貴方に…私の『中の汚れ』を、洗っていただくことは可能でしょうか?」
彼女の言葉に、俺は一瞬呼吸を止めた。
中を洗う…それが何を意味するかは、もはや説明不要だ。だが、俺の脳裏には先ほどまで俺を独占していた主の言葉がよぎる。
「あの。処女膜再生は、聖女様しか出来ないとエルフレイデ様本人が言ってたんですが」
その瞬間。
フィオナさんの表情から、いつもの上品な微笑みが、音を立てて崩れ落ちた。
「はぁ!ゴミ箱!!誰に物を言っているのかしら!?私に、再生魔法が使えないとでも!!?」
「ひっ、いや、ち、違くて!俺の意見じゃなくて、聖女様がそう言ってたんだ!」
彼女の怒鳴り声は、壁を揺らすほどの迫力だった。
普段の大人しい後輩キャラはどこへやら、剥き出しになったのは、天賦の才を持ちながら日陰に甘んじてきた者の、烈火のごとき自尊心だ。
「ふふ、失礼。つい熱くなってしまいましたわ」
フィオナさんは、すぐに口元を覆って小さく笑い、元の淑やかな癒やし手の顔を取り戻した。
だが、その瞳の奥は冷たく燃え盛っている。
「聖女に出来て、私に出来ないことなんて、何一つないのよ。あのお方は、自分の特別を信じたいだけ。私が今ここで、その傲慢な幻想を…根底から覆して差し上げますわ」
彼女はそう言うと、俺の胸元に指先を這わせ、そのままゆっくりと自分の服のボタンへと手を伸ばした。
「さあ、検品を始めて。私がどれだけ、あの筆頭聖女よりも深く、貴方を受け入れる準備ができているか…その身体に、刻み込んであげますから」
エルフレイデ様の熱を上書きする、フィオナさんの冷徹な情熱。
俺というゴミ箱を奪い合う聖女(候補)たちの戦いは、ついに聖域の複製という禁忌の領域へと踏み出した。
DSKB診断。
『終業後の共犯者』でした。
背徳に惹かれる…そうかも…
貴方はどうでしたか?




