表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の社畜、聖女の「ゴミ箱」になる〜24時間365日、貴女の汚れ(愛)を喜んで承ります〜  作者: 優香猫
聖女のゴミ箱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/45

流しの癒やし手と、新たな案件(ヒロイン)

「…あ、聖女様…ヒール、忘れてる…痛た」


静まり返った部屋で、俺は赤く腫れた頬をさすりながら呟いた。

仕事終わりのアフターケア(ヒール)こそ、この職場の唯一の福利厚生なのに。

エルフレイデ様、完全に怒りに任せて業務を丸投げ(放置)して行きやがったな。


自費、というか、自前で治すスキルはないし。これじゃ次のシフトまでに腫れが引かないぞ。上司の八つ当たりによる負傷を隠すのも、サンドバッグの務めなんだが…


俺がそんな社畜の悩みに浸っていた、その時だった。


ジャリっという足音と共に。


コンコン♪


扉の向こうから、エルフレイデ様の激しいノックとは対照的な、控えめで上品なノックの音が響いた。


ん?忘れ物か?それとも、あの聖女様が冷静になって戻ってきたのか?


「…どうぞ、開いてますよ。というか、結界を解かないと入れませんけど」


俺が声をかけると、カチリ、と耳慣れない魔力音がして、重厚な扉がゆっくりと開いた。


そこに立っていたのは…


「あの、失礼します…ヒールは、要りませんか?」


「え?…流しのヒール売り?」


思わず、前世の流しのマッサージ師みたいな呼び方をしてしまった。


そこにいたのは、エルフレイデ様のような威圧的な金髪ではなく、どこか儚げな、夜の湖を思わせる深い藍色の髪をした少女だった。


法衣のデザインからして、彼女もまた神殿に仕える聖職者だろう。

だが、その瞳にはエルフレイデ様のような傲慢さはなく、むしろ獲物を狙う小動物のような、危うい熱が宿っている。


「私は、フィオナ。癒やし手、ヒーラーの末端を務めております、カイル様」


「俺の名前、知ってるんですか?」


「ええ…神殿中、いえ、聖女候補たち一部の間で、今、貴方の噂でもちきりですから…『どれだけ殴っても折れず、どれだけ注いでも壊れない、最高品質のゴミ箱』がいるって」


フィオナと名乗った少女は、音もなく部屋に入り込み、俺の目の前に立つ。

彼女の手が、俺の赤く腫れた頬にそっと触れる。


【ヒール】


エルフレイデ様の熱い指先とは違う、ひんやりとした、けれど体の芯まで染み通るような心地よい魔力。


「…あぁ…ひどい。聖女様ったら、こんなに強く打たれて…貴方のその、少し歪んだ頬さえ…愛おしいわ」


「いや、仕事ですから…それで、フィオナさん?あなたも、俺に『汚れ』をぶつけに来たんですか?」


フィオナは、柔らかく微笑んだ。

その微笑みは、エルフレイデ様の表の顔よりもずっと聖女らしいが、彼女が俺の胸板に耳を押し当てた瞬間、その本性が漏れ出す。


「私は、エルフレイデ様のように乱暴なことはいたしません…ただ、私の中に溜まった、この、どろどろとした慈愛の残滓を…貴方に、ゆっくりと、時間をかけて…飲んでいただきたいだけ」


彼女の呼吸が、一気に熱くなる。


俺は直感した。


エルフレイデ様がドSな激情型なら、このフィオナという少女は独占欲の強い、粘着質な依存型だ。


「あぁ…貴方の鼓動、素敵…私の魔法を、こんなに素直に受け入れてくれるなんて…聖女様が執着する理由が、わかった気がします」


「おいおい。俺、まだ前のシフトが終わったばかりなんですけど…残業代、ちゃんと出るんでしょうね?」


「ええ。私のすべてを、貴方に捧げることでお支払いいたしますわ」


フィオナの指が、俺の首筋に絡みつく。


新たな案件の到来。


どうやら俺のホワイトな隠居生活(監獄生活)は、ますます遠のいていくらしい。


「はぁ。まあ、いいですよ。それじゃあ、新規クライアントの『検品』から始めましょうか」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ