表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ステレス令嬢の華麗なる事情 〜婚約者と兄が恋人同士らしいので、全力で成立させます〜  作者: つるぎまる
始まりは一冊の本から

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/25

第12話最終話「華麗なる事情」

最終話です。


ここまでのすべての“事情”に、

一つの結論が出ます。



 “見る”ということが。

 こんなにも、難しくて。

 こんなにも、簡単なことだったとは。

 アルセリアは、静かに息を吐いた。


 視線の先。

 レオンハルトが、こちらへ歩いてくる。

 以前と同じ距離。 同じ歩幅。

 

(……違う)

 もう。

 見失わない。



 ***


 庭園。

 あの日と、同じ場所。

 同じ時間。

 同じ距離。

 けれど。

 そこにある意味は、すべて変わっていた。


「殿下」

 アルセリアは、静かに呼びかける。


 レオンハルトが足を止める。

 視線が、重なる。

 逸らさない。

 今度は、互いに。


「……どうした」

 短い問い。


 その奥にあるものを。

 今のアルセリアは、理解できる。


(……待っている)

 踏み込むのを。

 言葉を。

 選ぶのを。

 待っている。

 だから。

 逃げない。


「……お話があります」

 ゆっくりと、言う。

 迷いは、ある。

 それでも。

 止まらない。


「……あの時のことです」

 レオンハルトの視線が、わずかに揺れる。

 だが、逸らさない。

 受け止める。


「私は」

 言葉を、探す。

 正解ではない。

 ただ。

 伝わる言葉を。


「……間違えておりました」

 静かに、告げる。

 沈黙。

 怖くない。

 今は。


「殿下のお言葉も」

 続ける。


「殿下のお気持ちも」

 一歩、踏み出す。


「すべて」

 胸が、強く鳴る。

 それでも。


「理解しているつもりで」

 言葉が、わずかに揺れる。


 だが。

 逃げない。


「……何も、見ていなかった」

 言い切る。


 風が、静かに揺れる。


 レオンハルトは、何も言わない。

 ただ、見ている。


 その視線から、逃げない。

「ですが」

 アルセリアは、息を吸う。

 そして。


「今は、違います」

 はっきりと、言う。

 迷いなく。


「私は」

 ほんのわずかに、距離を詰める。

 あと一歩で、触れられる距離。

 だが。

 急がない。

 逃げない。


「殿下を、見たいと思っています」


 静寂。

 時間が、止まる。

 その言葉は。

 論理ではなく。

 正解でもなく。

 ただの。

 “願い”だった。


 レオンハルトは、ゆっくりと息を吐く。

 そして。

「……遅いな」

 小さく、言う。


 その言葉に。

 アルセリアの胸が、わずかに痛む。

「……はい」

 否定しない。

 できない。

 それが、事実だから。


 だが。

 今度は、止まらない。


「それでも」

 続ける。


「今からでも」

 さらに一歩。

 距離が、完全に重なる。


 逃げない。

 逸らさない。


「やり直したいと、思っています」

 その言葉は。

 願いだった。

 選択だった。


 そして。

 初めての、“意思”だった。


 沈黙。

 長い。

 重い。


 だが。

 今は、逃げない。


 レオンハルトは、しばらく何も言わなかった。

 ただ。

 アルセリアを見ている。

 試すように。

 確かめるように。

 そして。

 やがて。


「……一つ、聞いていいか」

 静かな声。


「はい」

 即答。


「今度は」

 一瞬。

 間が空く。


 その間にあるのは。

 過去と。

 躊躇と。

 そして。

 ほんのわずかな、期待。


「……俺を見ているか」

 問い。

 あの時と同じ。

 だが。

 意味は、違う。


 アルセリアは、迷わなかった。

 一歩。

 ゆっくりと、踏み出す。

 距離が、消える。

 逃げない。

 逸らさない。

 まっすぐに。

 見つめる。


「……はい」

 小さく。

 だが。

 確かに。

 答える。

 今度は。

 同じ意味で。


 その瞬間。

 レオンハルトの手が、伸びる。

 一瞬だけ、止まる。

 だが。

 今度は、迷わない。

 アルセリアの手に、触れる。


 温度が、伝わる。

 逃げない。

 離さない。

 初めて。

 同じ前提で。

 繋がる。


 レオンハルトは、小さく息を吐く。

 そして。

「……なら」

 ほんのわずかに、引き寄せる。

 距離が、さらに近づく。


「今度は、離すな」

 それは。

 命令ではなかった。

 確認でもない。

 ただの。

 願いだった。


 アルセリアは、ゆっくりと頷く。

「……はい」

 その答えは。

 今度こそ。

 同じ意味で、交わされた。


 ***


 その日。

 アルセリアは、一つの結論に至った。

 完璧であることは、義務だった。

 だが。

 それだけでは、足りなかった。


 理解すること。

 見ようとすること。

 そして。

 伝えること。


 それらすべてがあって、初めて。

 関係は、成立する。

 だから。

 彼女は、もう迷わない。


 “最適解”ではなく。

 “自分の意思”で。

 選ぶ。


 そして。

 その選択は。

 決して、間違いではないと。

 今なら、言える。


 ──これが。

 ステレス令嬢の。

 華麗なる事情。


 ──終

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。


“最適解”ではなく、

“自分の意思”で選んだ結論です。


この後は、

少しだけ甘い番外編が続きます。


よろしければ、もう少しだけお付き合いください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ