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第四章 地下帝国の邂逅と、牛丼の始祖竜

地下への野望と、中二病のバイト面接

ルナミス帝国による「パチンコ経済侵略」を、ヒロインたちの物理的破壊(ホスト狂い)によって辛くも退けたポポロ村。

だが、静かなる戦術医官・優太の危機感は、むしろ以前よりも研ぎ澄まされていた。

「……地上に畑を広げるだけじゃダメだ。衛星(空)からの監視や、今回のような商人のちょっかいに対して、無防備すぎる」

村の集会所。

優太は、空中に展開した電子ボードの『ポポロ村・防衛インフラ構築マップ』を睨みつけながら、軍用マッチを擦った。無添加のタバコ『アメリカン・スピリット』に火を点け、深く紫煙を吐き出す。

「せやな。ルナミスもレオンハートも、表面上は不可侵を誓っとるが、裏で何考えとるか分からん。……で、ユウタはん。この図面は何や?」

向かいの席で、ニャングルが煙管きせるを吹かしながら、優太の描いた図面を覗き込んだ。

「『地下巨大シェルター』兼『隠田おんでん』の建設計画だ」

優太は、電子ボードの図面をトントンと指で叩いた。

「地下に広大な空間を作り、そこでサンポテト(太陽芋)や陽薬草を水耕栽培・魔力栽培する。これなら天候にも左右されず、三大国に収穫量を把握される(税をかけられる)こともない。完璧な『裏の兵站』だ」

「隠田……つまり、非課税の秘密農地やな! さすがユウタはん、腹黒い! ワイ、そういうの大好きやで!」

ニャングルが算盤を弾きながら、目を金貨の形にして喜ぶ。

「だが、村の連中だけじゃ人手が足りん。それに、秘密保持の観点から、三大国の息がかかっていない『余所者』を日雇いで使いたい。冒険者ギルドに求人を出すぞ」

優太が提示した求人票の条件は、以下の通りだった。

『土木作業員募集。体力に自信のある者。日給:銀貨2枚。まかない(ポポロ弁当)付き』

日給2千円相当と一見安月給だが、あの『PRO型(ポポロ弁当)』が三食無料で食えるとなれば、知る人ぞ知る破格の条件である。

――翌日の午後。

ポポロ村の広場に設営された「臨時面接会場(パイプ椅子と長机)」に、さっそく一組の応募者が現れた。

「……面接希望者は、お前か」

優太が、机に肘をつきながら胡散臭そうに目を細める。

そこに立っていたのは、ボロボロの黒いマントを羽織った20歳前後の人間の青年だった。

彼の背中には、身の丈ほどもある無駄に装飾過多な『ドワーフ製の巨大な筒(竜撃砲)』が背負われている。

さらにその後ろには、荷車を引いた立派な体躯のジオ・リザード(地竜)が、やれやれといった顔で控えていた。

「ふはははッ! 然り! 拙者は深淵の闇より来たりし竜の御子……名を、佐須賀良樹さすがよしきと申すでござる!」

良樹は、マントをバサァッと翻し、ビシッと中二病全開のポーズを決めた。

「……ござる?」

優太の眉間がピクリと動く。

「いかにも! 拙者の右腕に封じられし黒炎が、新たな戦場(バイト先)を求めて疼いていたゆえ、馳せ参じた次第でござる! ちなみに、牛丼屋でのワンオペ夜勤経験があるゆえ、激務への耐性は完璧でござるよ!」

「牛丼屋……地球からの転生者か。というか、お前が連れてるそのトカゲはなんだ」

優太が、良樹の背後のジオ・リザードを顎でしゃくる。

「トカゲとは失礼な。我はロード。……万物は流転するというのに、この阿呆の『貧乏暇なしぶり』だけは不変である。全く、嘆かわしいことだ」

ジオ・リザードのロード(実は始祖竜クロノ)が、重々しい声で哲学的な愚痴をこぼした。

「喋るタイプの賢竜種か。……まあいい」

優太は、良樹の中二病全開の痛々しい設定(るろうに〇心と邪気眼のハイブリッド)を「完全にスルー(無視)」した。

戦術医官である彼にとって、相手の脳内にどんなバグ(設定)があろうと、現場でスコップを振るえる肉体さえあればどうでもいいのだ。

「土方作業だ。穴を掘って、岩を砕き、土砂を運ぶ。一日8時間、泥まみれになるが、やれるか?」

優太が極めて事務的に問う。

「ふはははッ! 愚問でござるな! 拙者の背負いしこの『一撃必殺浪漫砲』にかかれば、山など一瞬で吹き飛ぶでござるよ!!」

良樹が背中の巨大なドワーフ製バズーカを構え、ドヤ顔で言い放った。

優太は、その武器の構造をひと目見て、冷徹なロジックで切り捨てた。

「……それ、魔力チャージに3分はかかる欠陥品ロマンぶきだろ。坑道でぶっ放したら落盤して全員死ぬ。現場への持ち込みは禁止だ」

「えっ」

良樹のドヤ顔が、一瞬で素の「小心者な大学生」の顔に戻った。

「あ、あの、でも拙者、これがないとただのフリーターで……」

「ツルハシを持て。浪漫砲じゃなくて、お前の筋肉で岩を砕け。……体幹はそこそこしっかりしてるようだし、そのトカゲ(ロード)がいれば土砂の運搬には困らんな」

優太は、手元のクリップボードに『採用』の赤いスタンプをガシャンッと乱暴に押し付けた。

「体力があればバカでもいい。今日からお前は、ポポロ村地下開発プロジェクトの第1号作業員だ」

「な、なんと……! 拙者の秘められし力(労働力)を見抜くとは、お主、只者ではないでござるな!」

良樹が再びマントを翻して喜ぶ。

「我はまた土砂運びか。……労働とは、己の命の時間を切り売りする虚しい行為。だが、背に腹は代えられぬ」

ロードが深い溜息をつきながら、自身の首にかけられた荷車用のロープを直す。

かくして。

冷徹な戦術医官と、牛丼を愛する中二病の青年、そして時間を操る最強の始祖竜(身分隠し中)という、絶望的に噛み合わない奇妙な土木作業チームが結成された。

三大国の監視の目を逃れ、地下に巨大な兵站基地(隠田)を築く。

優太の壮大な野望は、ツルハシと黄色いショベルカーの轟音と共に、今、地中深くへと掘り進められようとしていた。

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