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カイロスの祝福  作者: 沙雪


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謁見と依頼

レジナルド視点

「ご苦労であったグラバー」

「とんでもなきお言葉」

 王宮に到着したレジナルド達は真っ先に王の御前に出された。

 床に額を擦り付ける低姿勢のドラマンに習って、レジナルドとテリオスも同じ姿勢を取りながら、目だけキョロキョロとさせて、周囲の様子を伺っていた。

「其方は」

 王の視線がこちらに向き、レジナルドは気付かれぬように、スッと視線を下げる。

「ザハラーン家、当主の名代で来ました。ドラマンと申します。当主は現在来客対応中でして」

「それは王からの呼びかけを無視するほどの重要なものなのか?」

「申し訳ございません。ザハラーン家に代々伝わっております、家訓によるものですので」

 カイロス国王の声に隣のドラマンは緊張のためか体を固くしていた。レジナルドとしては少々拍子抜けしたのも事実。どれだけ、威厳のある王がいるのだろうかと思っていたのだが、中央の台座にいるのは、椅子に収まりきらないほどの豊満な体に、光沢のある白い布をぐるぐると体に巻きつけた、一見、雪だるまのような風貌だった。

 用意されたセリフをただ、読み上げているような感じで、その証拠に王の周囲には半分顔を隠した目つきの鋭い男達が張り付き時折、王に耳打ちをしているような状況である。

 前国王と王弟派との間で、争いが起こり、目の前にいる王弟が政権を勝ち取ったという話だったが、目の前で繰り広げられる茶番を見る限り、王弟自身の能力に対して賛同が集まったというよりも、傀儡として扱いやすかったから、彼が召し上げられたのが本当の理由なのだろうと思う。

「まあ良い。ドラマン。其方の噂はよく聞き及んでいる。現当主であるカラム・ザハラーンをよく支えている手腕の持ち主であると」

「もったいなきお言葉」

 ドラマンは床が削れるのではないかと思われるほど、頭を床に擦り付けた。

「それで、其方にしか出来ない相談があって」

「えっと、はい。どのような?」

 レジナルドは身代金を用意するだけではないのか思ったが、王の言い方からすると、それ以外の何かであると感じた。もし、お金を用意するだけの要求なら、王宮に搬入して事は終わる。しかし、このような公の場で謁見しているということは、他に何か意図があるのかと思ってしまっても仕方ない。

「第七王子の一件はそちらでなんとかしてほしいのだ」

「……と、申されますと?」

 ドラマンは驚きのあまり、一度顔を上げ、ハッとしてもう一度頭を下げた。

「申し訳ございません」

「良い。それよりも、第七王子の件であるが、やはり家族であるルトフの安否を案じているのだが、枢機卿達からは、彼は悪魔と取引をして、姿を消したのではないかと意見するものが多くてだな」

「悪魔ですか……」

 ドラマンは聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟く。王はその声が聞こえているのか聞こえてないのか、一人で演説を続ける。

「今回の要求も悪魔から直接要求されたものではないかと意見が出て、そのために王族である我々が直接手を下すことが難しい。わかるな? そこで、王家からの信頼も厚いザハラーン家に一切を任せたいと思っている」

「第七王子が悪魔と取引をした証拠はあるのか?」

 テリオスの声が謁見の間に響き渡る。

 王は言い返されると思っていなかったのだろう。ギョッとした表情をみせ、すぐに隣にはべる側近達に助けを求めるべく耳打ちする。

「証拠も何も、朕の言葉が全てである。――そして、其方。発言を許してもいないのに勝手するのは無礼である」

 小さい子供のように、耳打ちされた言葉を威厳たっぷりに言えたことが誇らしいのか最後、得意げな表情を見せる姿に、ため息と、アレが自国の王でなく、つくづくよかったと思うのである。

「失礼をいたしました。私共は商人です。人や国家などを相手に取引をしたことはありますが、悪魔と取引したことは流石にありませんので、もしそうだったのならどうしたらいいのだろうと、不安になり伺った次第でございます」

 テリオスは微塵も心にも思っていない声を出した。

 彼も王と同様に長い口上の言葉が出てくるので、レジナルドは感心しながら、あくまでも俯いて、そのやりとりを横で黙って聞いていた。

「なるほど。其方の気持ちもわからなくはない。発言の理由も理解した。しかし、その不安を朕が汲むことも難しい」

「と、おっしゃられますと?」

「身代金を払って解決する問題ならばと思っていたが、本当に第七王子と悪魔が取引をしていた場合、悪魔を王家に引きれることはできない。その場合は――言わずともわかるだろう?」

 今の言葉は王は王族を殺害してもいいと、むしろそうして来いと言っているのと同義であった。 一生懸命に王は話すのだが、果たしてその言葉の重みをわかっているのだろうかと、レジナルドは不安になる。

 王族を殺害することが、どれだけの罪になるのか、それをわかった上で、ザハラーン家にかぶれと言っているのか。レジナルドはあくまでも無言を貫きながら、頭の中ではぐるぐると考えを巡らせていた。

「私としては、なるべくご無事な様子で、第七王子様が王宮に戻ってくることを願っております。

 ドラマンはそう発言するのだが、

「もちろんそれはそうなのだが、あの方は血塗られた過去を持つ御方ですので、そのお心がいつ暗闇に傾いてもおかしくないのです。その場合は、お国のためだとご理解いただければ」

 今度は王ではなく側近の一人が切羽詰まった声を上げた。

「わかりました」

 ドラマンは反論できる材料がなくなってしまったのだろう。素直にそう言って更に頭を下げた。

 王を含めた側近達は、レジナルドが目を見張るほどの見事な演技力を持っているのだと、改めて感服する。そして、今回の謁見で何よりも感じたのは、王家は理由をつけて、第七王子を排除したいのだろうなということ。

 誘拐されたというのに、王以外の王族が姿を見せないこともその全てを物語っていると言えるだろう。

「彼は王族の血を引いていないからな」

 誰が言ったのかはわからないが、周囲のざわめきから話し声が聞こえ、それを否定する声はなく、むしろ嘲笑っているのだから、なんとなく理由を察するとともに、第七王子の存在が居た堪れなくなる。

「静かに」

 一人の側近の男が声を上げる。鋭い怒号にしんと静まり返った。

「では、こちらからも兵を幾人か出すので、申し訳ないのだが、すぐに対応に向かってもらえるか?」

「承ります」

 ドラマンのキッパリとした物言いに王は満足そうに頷く。

「詳しいことは担当官から聞くように」

 王命によって三人に近づいてきたのは、本当に兵士なのかと思われるほど、ひょろ長く頼りなさそうな面持ちの兵隊服を着込んだ男だった。

「どうぞこちらへ」

 

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