薬草掘り
薬草探し、とはいえ、実は、薬草自体は、何かしらのこだわりを持たない限りは、街の市場で買うのが早い。
品質も安定しているし、なにより、安い。
主要な薬草は、すでに栽培方法が確立されており、農村や専用の施設などで一定量が常に生産されている。
では、薬草採取のために、わざわざ森などを訪れる目的といえば何か。
一つは、栽培方法が確立されていない、希少な薬草の採取。
マーク達、『虹追いの竜』が受けた依頼は、これだ。
岩場、崖の切れ目に根を張る、という薬草は、いまだ栽培方法が確立されていない。
もっとも、まだ有効な薬効が発見されていないため、需要がないから、栽培法の研究がされていない、ということでもある。
もう一つは、こだわりがある場合。
ジェシカ達が来たのは、こちらの理由である。
市場で売られている薬草は、品質は一定になるように選別されている。
そのため、薬効が低いことはないが、極端に高いようなものもない。
だから、自前で効果の高い、いいポーションを調合しようと思えば、自分で品質の高い薬草を採取する必要がある。
「マルコー。こういうの?」
「根っこごと掘り起こして、保管庫に入れればいいべ。選別は、あとでやるでよ」
ジェシカが摘んだ薬草を見て、マルコはふんふん、とにおいをかぎ、ぱくり、とくわえて、むぐむぐと口を動かす。
それから、
「ふむ。悪くないべ」
ぺ、と吐き出した。
「質は悪くないでよ。でも、葉っぱ千切ると悪くなるで」
「やっぱ、根っこごとか」
ちら、とジェシカが見ると、ウィシアが、一生懸命土を掘っている。
なお、シェンの方は、立ったまま周囲の見張りをしている。
「ウィシア。何か見つけたの?」
「ここに、ちょっと、めずら、しい、薬草が、あるの、です」
ざっくざく、と、小さな鍬を使い、ウィシアは土を掘り返している。
ただ、何もないところを掘り返しているようにも見える。
「そこに?」
「あるの、です」
そして、
「ほら」
「あら」
土の中から、植物の根が出てきた。
「ほう。ネバガラサの根でねか」
「マルコさんのところでは、そう言うんですか? わたしの地元では、ルフルナの根って呼んでいましたが」
「煮るとうまいんだ」
「焼いてもいいですよね」
「・・・・・・薬草じゃないの?」
「滋養強壮にもいいんですよ。栄養豊富で」
「だなあ。すりおろして、兵糧丸の材料にしたりとかな」
「そうですねえ。健康にいいんです」
「・・・・・・へえ」
なんだか、ここにきて、ウィシアとマルコが意気投合している。
ウィシアは、エルフの血を引いているし、森などで馴染みがいいのはわかるが、
「意外な組み合わせ」
「・・・・・・? なんですか?」
「なんでもないのよ。じゃあ、採取は二人に任せた方がいいかしらね」
「だな。ウィシアも結構採るのうまいし、二人でも必要な分は集められそうだで」
「そっか」
じゃあ、とジェシカは立ち上がり、シェンを呼んだ。
「シェン。私、討伐依頼出てるやつ探してくるから、ここの見張りお願い」
「わかった。合流はどうする?」
「大丈夫。私の方で探すから」
ジェシカは、三人から分かれて、森の中へと入っていった。
*****
索敵って苦手なのよねー、とジェシカは苦笑しながら、のんびりと森を歩く。
竜は、強い種族だ。
その血を引いている竜人種であるジェシカは、強さ故に索敵は苦手だ。
大体の生物は、竜の気配を感じると、さっさと逃げていくからである。
「なんだっけなー」
ルディランズ曰く、『力ある隣人たち』の名残が一番強く残っているのが、竜種だという。
そのため、力の差が一番強く感じられるのも、竜なのだそうだ。
「・・・・・・ま、探す方法はあるんですけど」
懐から取り出すのは、やはりルディランズが作った魔道具である。
索敵のための魔道具は、力を込めて使えば、周囲の生き物の位置を教えてくれる。
「ちょっと、大きめの~・・・・・・。あれ、かな?」
なんとなく、それっぽい、という理由であたりをつけて、ジェシカは森の中を移動する。
そして、しばらくの間、森のあちこちでどたんばたんと、暴れまわる音がするのであった。
*****
「ようし、もうちょい。もうちょい・・・・・・」
マークが、綱で岩からぶら下がり、崖の中腹に差し掛かる。
崖の上で、グレッグによってロープは支えられ、マークは、固定具を差し込んだ。
がん、がん、とハンマーでたたきこみ、そこに足をかける。
「よし」
「できるだけ、根っこは切らないようにね!」
「わかってる!!」
崖の上で、エミリーとニコラスがマークの作業をはらはらしながら見ている。
マークは、崖の割れ目に生えた薬草を見る。
マーク達が目標としている薬草だ。
その左右の崖を削り、穴を広げてから、奥に手を入れて、根っこまで掘り起こす。
綱でつるされ、足場は固定しているとはいえ、力を入れづらい体勢だ。
「ああー、くそ、うまく力が入らねえ・・・・・・」
「焦らないで! 丁寧に、時間かけていいから!!」
「おーう!」
わかってらい、とマークは叫び返しながらも、作業を続ける。
なんとなく見た崖に、薬草が生えているのを見つけたのは、僥倖だった。
ただ、崖の上に回りこむのに時間を要し、今もこうして掘るのに時間をかけている。
ちょっと、焦っている。
「丁寧に! 焦るな!!」
「わかってる!!」
言いながら、なんとか引っ張り出す。
「うおっと・・・・・・!」
その反動で、後ろへと落ちそうになって、慌てて綱にしがみつく。
「とれたぞー!」
「上げるぞー!」
ぐい、ぐい、と綱が引かれて、マークは崖の上へと戻っていった。
・調合のこだわり
薬草から作られるポーションは、作る人間によって、レシピに結構違いがある。
一定のレシピは、品質の安定している市場の薬草を利用して作ることが前提。
自分で採取した薬草だと、成分の細かな違いから、レシピ通りの出来にならない可能性が高く、それが調合を難しくする要因の一つともなっている。
市場に出回っているレシピは、薬師や錬金術師でなくとも、レシピ通りにやればなんとか同じものを作ることができる。
だが、効果が高いものは、やはり薬師や錬金術師などから買う必要があるのは、こういった細かい成分の違いを見切って調合を行うのは、専門知識と技能が必要だからである。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




