表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/197

竜は空を飛ぶものだ

 乗合馬車、というのがある。

 街道を走り、それぞれの都市、街の間をつなぐ、公共交通機関だ。

 街道を走る馬車なら、大体誰かしら冒険者が乗り込んでいる。


「ついたぜー」


 マークは、ぐ、と伸びをする。


「まだ半分よ」


 そんなマークに荷物を投げつけ、エミリーも馬車から下りる。


「こっから?」

「歩きで一日」


 乗合馬車は、一応街道沿いの宿泊施設を利用する。

 とはいえ、御者と、普通の旅行者以外は、というか、冒険者は、やはり宿泊施設は使わずに、近くで野営を行うのが常だ。


 マーク達も、最初の一日は乗合馬車に乗ったものの、途中で宿泊施設の近くで一泊している。

 それから、今は、乗合馬車の目的地となっていた、街に到着していた。

 マーク達が目的地とする森は、この街からさらに徒歩で半日程度歩いた場所にある。

 さすがに、森までは馬車は通っていない。


「ここで宿取るのかい?」

「まさか?」


 ニコラスが馬車から下りながら聞く。

 すると、エミリーは肩をすくめ、


「まだ日も高いのに、ここで休む理由なんかないでしょ」

「ええー? マジで?」

「マジよ。ていうか、宿に泊まる余裕なんかない!」


 行くわよ、と先頭に立って歩き出したエミリーの後を、それぞれが追った。


「せめて、飯だけ食わね?」

「・・・・・・む」


 マークからかけられた声に、エミリーの足が止まる。

 ここから森へと向かえば、ごはんは保存食だ。

 グレッグの野営料理はおいしいが、


「・・・・・・無駄遣いにならない?」

「いいだろ。ていうか、あれなら、補給もしといたらいいんじゃね?」

「あんまりよくないのよ」


 街の規模は、それほど大きいわけではない。

 基本的に、物価というのは、大きい街の方が安いものは多い。

 少なくとも、冒険者用品は、大きい街の方が安いのだ。


「・・・・・・うーん?」


 エミリーは悩んでいるが、その間にマークがエミリーの腕を引く。


「飯だけ食おうぜ。毎回グレッグに作ってもらうのも悪いだろ?」

「おらは気にしねえぞ?」

「いいからいいから」


 ニコラスはグレッグを促し、四人は街へと進む。


「それに、新鮮な食材買おうぜ。保存食ばっかだと味気ねえよ」

「ああ、それはいいな。やっぱ、乾燥野菜よか、新鮮な野菜の方が栄養もいいしよ」

「ほらほら。決まりだ」

「・・・・・・仕方ないわね」


 はあ、とエミリーはため息を吐いて、パーティーは街へと向かった。



*****



 ごおおおおぉぉぉ、と高空で、風が耳元を過ぎていく。


「・・・・・・すごいですね」


 ウィシアは、はー、と感嘆の息を吐く。

 息は白く染まって後ろへと流れていくが、ウィシア自身は、寒さは感じていない。


「・・・・・・うーん、こういう感じか」


 はあ、とジェシカはため息を吐きつつも、手に持った魔道具へと力を送る。


「先生が作ったんですよね?」

「試作品とは言ってたけど、割と悪く、はないわよね?」


 うん、とジェシカは周囲を見る。

 魔道具、というのは、魔術を使えるようにする様々な道具全般を指す。

 種類や性能は様々だが、今回ジェシカが持ち出したのは、バックパックの形をしている。


 大きめの四角い箱型をした魔道具は、ルディランズが設計、製作をした、ジェシカ専用の魔道具である。

 正確には、竜人種なら誰でも使えるらしい。

 性能は、すなわち竜の翼の拡大だ。

 つまりは、


「普段の私がやってるみたいな、竜の翼による飛翔を、パーティーメンバー全員に適用する、と」


 結果として、パーティーメンバー全員で空を飛べる。

 空を飛べるなら、移動速度はかなりのものだ。


「・・・・・・空って、意外と敵がいないんですね」

「いるときはいるわよー」


 空を飛ぶ魔獣やモンスターなど、枚挙にいとまがない。

 加えて、空や海にいる生物、というのは、地上にいる生物に比べて、狂暴なのが多い。

 地上なら、街道周りは帝国軍や冒険者の巡回などによって、安全が保たれているが、空や海にはそういうのはないからだ。


「ただ、竜の気配をここまで感じて、わざわざ絡みに来るのが少ないだけよ」


 竜は、生物としては上位の存在だ。

 竜ぐらい食料にする生物がいないわけではないが、それでもあえて挑もうとする生物もすくないものだ。


「ま、一直線に向かうし、すぐ着くから」

「はい」

「マルコ。準備できてる?」

「問題ねえだよ」


 予定としては、森の手前で野営をした後、森に入ることになる。

 ただ、今回狙っている薬草は、それほどレアなものではない。


「ええっと、ミーシャさんから、何か依頼を受けてるんですよね?」

「依頼っていうか、あれよね」


 えーと、と取り出した紙は、数枚。

 多くは、マルコが求めている薬草以外の、森での採取物。

 それから、


「なんか変なのがいるって噂だから、それの討伐依頼ね」


 危険度はそれなり。

 ただ、指名依頼ではないし、場合によっては他の冒険者によって討伐されている可能性もある。

 遭遇したらでいい、とは言われているが、


「シェン。探せるかしら?」

「・・・・・・やってみる。でも、期待はしないでくれ」

「大丈夫よ。いなかったらいなかったでいいから」


 当然のことながら、ジェシカの頭に、他の冒険者、まして、自分たちをライバル視しているような冒険者たちのことなど、かけらもなかった。

・空の危険

最も有名なのは、世界中の空を気流にのってゆったりと回遊する、『空亀』。

世界最大の生物、としても名高く、性質は穏やかで、背中には独自の生態系を持っている。

他、『空蜘蛛』『羽クジラ』『翼蛸』など、常に空を浮遊する生物、というのは、結構な数がいる。

その中でも、空に縄張りを持っている生物もり、そういった生物は近づくと襲ってくる。

空は、安全確保のための巡回なども必要ないため、そういった生態系は育つがままになっているため、人間の理屈は一切通用しない。

そもそも、空を飛んで移動する手段が、現段階では、空を飛べる生物を使ってのものくらいしかないため、空の危険は軽視されているのが常である。




------------------------------------------------------------------

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ