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移動中

 この世界で、都市間を移動する、というのは、結構な難事である。

 モンスターや魔獣、あるいは、そのほか。

 とりあえず、人類を襲う様々なものが跳梁跋扈するこの世界だ。

 壁に囲まれた安全な都市とは違い、街道沿いはさえぎるものもないため、襲われやすい。


 だから、普通の旅行者の場合、あまり野営はしない。

 街道沿いには、おおよそ馬車で朝出発すれば、その日のうちに到達できる、という程度の距離ごとに、簡易の宿泊施設が置かれている。

 石造りで敵避けの仕掛けが施された塀に囲まれた、簡素な施設である。

 一応、金を払えば、保存食なども買うこともできる。

 冒険者協会がメインとなって、教会や各国家が協力する形で管理しており、維持費用として、利用者はいくらかの金銭を寄付するのが、暗黙の了解となっている。


 ただ、冒険者は、というと、これらの施設はあまり利用しない。

 一応、使用を禁止するような法はないが、基本的に冒険者はむしろそういった施設を襲うものを排除する側だ。

 そういう意味でも、護衛依頼でもない限りは、冒険者はこの手の施設は使わない。

 むしろ、ただの移動でこれらの施設を使う冒険者は、臆病者の誹りを免れない。


 では、冒険者は、移動中どこで夜を明かすか、というと、街道沿いの空地である。

 野営に適した場所、となると、そうどこにでもあるものではない。

 そうなると、そこを通る冒険者たちが野営する場所、というのは、大体決まってくる。

 何度も同じ場所で野営が行われれば、やがてはその場所は踏み固められて、いい具合に空地になる。

 そうすると、次からの冒険者たちもその空地を使って野営を行い、というような形で、野営場所は決まっていくのだ。


「・・・・・・うめー」


 『虹追いの竜』は、そうしてできた空地の一つに、焚火をして野営の準備に入っていた。

 このパーティーだと、野営中の様々な準備は、みんなでやる。

 ニコラスとエミリーが薪を集め、マークがテントを立てる横で、グレッグが食事の準備をする。

 鍋に、水と干し肉や乾燥野菜などで簡単なスープを作ったり、パンを用意したりする。

 野営中の料理なんて、大したものは作れないものだが、グレッグはこういうところはそつなくこなす。


 そんなグレッグの作ったスープをすすり、マークは感嘆の声を上げる。


「そんな大したもんじゃねえぞ」


 言いながらも、グレッグはまんざらでもなさそうだ。


 『虹追いの竜』が野営をしている空地には、他にも二組ほど、冒険者のパーティーがいる。

 それぞれで、それぞれに野営をしている。

 ただ、その中にジェシカの姿はない。


 マークは、グレッグの作ったスープに舌鼓を打ちながらも、周囲を確認して、首を傾げた。


「何気にしてるのよ?」


 そんな仕草を観察されて、マークはエミリーに怪訝そうな視線を向けられる。


「いや、アビロアから、あの森行くには、ここを通らないとだろ? ジェシカさんたちが通らないからさあ」

「何気にしてんのよ。あっちは、あたしらなんかとは規模が違うんだから、ちんたら歩きで移動なんかしないわよ」

「そうか。そういうもんか」


 マークは頷きつつも、ちらちらと街道の先に視線をやっている。


「気にしすぎ。何? そんな気になる?」

「いや・・・・・・」


 エミリーの強い視線に見られて、マークは視線を逸らす。


「あこがれてんのはわかるけどなあ」


 グレッグが、そんなマークに苦笑している。


「いや、そういうんじゃねえって・・・・・・」

「どういうのだい?」


 ん? とニコラスからも、からかい混じりの視線を向けられ、マークはバツが悪そうに黙り込む。


「あの人たちは、あの人たちで冒険するでしょ。他人の事を気にしてる余裕なんかないわよ?」

「わかってるって」


 マークとしては、あこがれとともに、勝手にライバル心を抱いているだけに、気にせざるを得ないのだ。

 もっとも、向こうはマーク達のことなど、眼中にないだろうが。


「でも、同じものが狙いだったらどうすんだよ」

「だからって、取りつくされるものでもないでしょ。気にするだけ無駄」

「そうだねえ。気にしても仕方ないよ」

「そうかあ? そうか・・・・・・」


 むう、とうなりつつも、マークはスープのンコリをすすった。



*****



 ジェシカ達は、のんびりとしている。


「用意できたー?」

「問題ないです」

「おう。大丈夫だべ」

「自分も問題なしだ」


 ジェシカの声かけで、第一部隊のメンバーがそれぞれに返事をする。


「馬車とかないけど、まあ、いいわよね。急ぐわけじゃないし」

「だべ。この季節なら、いつでも生えとるでよ」

「あ、わたしも、いくらか薬草とか採りたいです」


 ウィシアは、魔術師として、いろいろ薬草には使い道がある。

 備品の補充も含めて、


「じゃあ、森についたら、いろいろ採取しましょうか」

「だな。・・・・・・実は、エリーナさんたちからも、いろいろ頼まれてるぞ」


 パーティメンバーのシェンは、その内容が書いてあるらしきメモを見せる。


「ここぞとばかりにって感じよね」


 ジェシカは苦笑しながら、メモを眺めて、


「なんか、十日位かかりそう」

「いいと思うで。たくさん集めとくでよ」

「・・・・・・ま、そうね」


 よし、出発しましょうか、と声をかけ、ジェシカ達はホームを出発した。

・宿泊施設

街道沿いに一定間隔で整備されている。

管理人が派遣されており、旅行者や、行商人が使うことが多い。

それほど広いわけではないため、大人数が入れるわけではないが、保存食や薪などもある程度売っている。

もっとも、街や都市で買うよりは、かなり割高なので、金欠の冒険者などはそういう意味でも利用しない。

モンスター避けなどは施されているが、万全ではないため、冒険者や帝国軍の巡回などで、安全は保たれている。

なお、旅行ならば、利用する方がいい。



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評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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