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説明の会合(初心者)

 薬師や錬金術師にとって、薬草、というのは、基本的な素材であり、一方で極めて扱いづらい素材でもある。


 薬草の定義、というのは、何かしらの薬効を持っている草全般だ。

 その中で、薬草の種類を見て、それが何に効くか、というのを調べ、調合して薬にする。


 薬草の持つ薬効は、同じ種類の薬草でも、採取した地域、季節、部位などによって差が出る。

 さらには、朝摘みか夜摘みか、採取してからの経過時間、採取したときの手際などでも、薬効に差が出る種類もある。

 つまり、一口に薬草採取、と言っても、ただ採ってくればいい、というものではない、ということだ。



*****



「・・・・・・わかるかの?」


 デニスの説明は、非常に簡潔であった。


 採取目的は、岩屋の雲姫草。

 東向きの切り立った岩の亀裂に根を張り、その高さは最低でも地上から五メートル。

 採取対象は、全体であり、できるだけ根をきれいに採取すること。

 いつ採取してもいいが、採取ができたらできるだけ根は外気にさらさないように持ってくること。


「外気にっていうのは・・・・・・」

「水を含ませた布か綿かでくるんでやればよい。その上から、皮か何かで包んでやれば完璧じゃの」

「なるほど・・・・・・」


 ふんふん、とうなづきながら聞いているのは、『虹追いの竜』のうち、エミリーだけだ。

 残りの三人のうち、リーダーであるマークは、ぼけー、として、時々窓の外に目が行っているし、槌使いの戦士であるグレッグは、こっくりこっくりと船を漕いでいる。

 回復職のニコラスは、説明を聞こう、とはしているものの、マークとグレッグが会話に集中できていないどころか、グレッグに至っては居眠りしていることに驚いて、何とか起こそうとゆすったりしている。

 結果として説明に集中できていないのだから、優先順位を間違っている、と言わざるを得ない。

 四人の中で、説明を集中して聞いているのはエミリーだけで、そのエミリーも説明の内容を一言一句聞き逃さないように、と必死になっていて、どこか危なかっしい。


 ほほえましいですねえ、と、説明に同席するエレナは、内心ほほ笑んではいるものの、顔を真面目にしている。

 術系のダメージディーラーがいないとはいえ、『虹追いの竜』は、前衛と後衛がそろった、バランスのいいパーティーだ。

 エミリーという器用な斥候職もいるし、冒険者のパーティーとして最低限の基礎はそろっている。


 ここからなら、どんな役割の者を入れても、そのまま強化につながるだろうし、それぞれになかなか優秀だ。

 マークが、一流になる、とよく叫んでいるが、実際しっかりと下積みしていけば、いずれは三等級以上に上がることも十分にあり得る。


 それだけに、今はエミリーに細かい雑務の負担が集中してしまっていることが気にかかる。

 そのあたりの重要性もわかってほしいところだ。

 協会の事務員としては、割と切実に。

 こういう細かい雑務を軽く見る冒険者は、将来的に冒険者協会の職員を下に見るようになることが多い。

 そうなると、気持ちよく仕事ができないから、注目の冒険者には、ぜひともそういうところはきちんとしてほしい。

 ちょっと自分本位な話ではあるが。


「なかなか見つからんものじゃ。周囲には、それなりに魔獣やモンスターの類もおる」

「大丈夫です。こいつら、それなりに強いので」

「お、おう! じいさん任せとけ!!」


 急に話を振られて、マークは慌てて力瘤を作って見せる。

 自分の孫のような年齢の若者の仕草に、デニスはにやり、と笑って見せた。


「まあ、力自慢はよいがの。くれぐれも、力で引っこ抜いたりはせんように、の?」

「あ、はい」

「一本もあれば十分じゃが、根の長いものならば、その分だけ報酬も割り増しじゃ。数が多ければ、なおのことの」

「え、いいんですか?」

「まあ、三日かけて一本見つかれば運がいい、という話じゃ。気長に行くことじゃの」

「すぐに見つけてやるぜ」

「そう簡単には、行かんと思うぞ」


 デニスの脅しにも似た言葉を、マークは軽く受け止め、エミリーは神妙に頷いていた。



*****



「ようし、エミリー。必要なものは?」

「あんたね・・・・・・」


 依頼の説明を受けていた会議室を離れ、マークはまずエミリーに声をかけた。

 それに対し、エミリーは額を押さえ、ため息を吐く。


「自分で聞いておきなさいよ」

「聞いてたけど、わかんねえもん。エミリーに任せた方が確実だろ?」


 からっとした笑みで、信頼を見せるマークに、エミリーはそれ以上言葉を返せない。

 仕方なし、と、ため息を一つ吐いて、


「目的地までは、乗り合い馬車で三日。森の中で薬草を探すのに、一週間は見て、帰りも三日。つまり」

「・・・・・・十日分だな!」

「・・・・・・・・・・・・バカ」


 はあ、とため息を吐いたエミリーに、ニコラスが苦笑しながら近づいて、


「二週間分。余裕を見て、二十日分かな。結構大荷物だね」

「でも、目的地近くに村とかはないから、補給は難しいわ。ニコラス。用意、任せてもいい?」

「わかったよ。グレッグ。荷物を運ぶから、手伝ってくれるかい?」

「おう。力仕事なら任しとけ!」


 むん、とこちらはマークとは比較にならない力瘤を作って見せるグレッグを連れ、ニコラスは市場へと向かった。


「じゃあマーク。あたしたちはこっち」

「ん?」

「エレナさんに頼んで、道具用意してもらうから」


 冒険者協会では、いくらかの冒険者向けの道具は、販売や貸し出しを行っている。

 今回の場合は、崖登りに使う道具類だ。

 ついでに、協会に併設されている訓練場で、道具の使い方を練習しておくといいだろう。


「わかった?」

「おう! つまり、薬草は、俺かエミリーで採取するってことだな?」

「それだけわかってりゃ十分ね」


 ふう、とため息を吐いて、エミリーはマークと連れ立って、訓練場へと向かうのだった。

・虹追いの竜

全員冒険者なり立ての初心者パーティー

最初の教導で一緒になり、そのままパーティーが続いている。

マークが『虹の飛島』にあこがれているため、こんなパーティー名になった。

『虹の飛島』にあこがれるなら、なんで竜なのよ、とエミリーは思っている。


マーク・ラッセル

リーダー。

幻想種『光狼』の剣士。

気合を入れると身体能力が向上する。


グレッグ・スミス

亜妖精種ドウェルクの、槌使いの重戦士

大地に適性があり、槌の先端の重量を変化させることで、縦横無尽に大槌を振り回す。


ニコラス・テイラー

神人種の回復職。弓が使える。

回復だけでなく、神術を攻撃に使えるオールラウンダー。


エミリー・ボア

亜人種の斥候職。パーティーの実務面でのまとめ役。

外見的に種族の特徴がない混血で、際立った種族特性を持たない。



閑話用サブキャラ。


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