閑話:依頼受付
指名依頼、という制度がある。
特定の冒険者に対し、依頼人が直接依頼を行う制度だ。
指名依頼、と呼ばれるものは、冒険者協会を通すものに限られる。
冒険者協会が冒険者に対して設定する星、ひいては等級は、冒険者協会が仲介した依頼、または、異界や新たな領域の探索の成果などによって設定される。
指名依頼は、冒険者としての能力が認められている、ということでもあるため、受けることができた場合、冒険者協会での冒険者への評価が上がる。
冒険者協会からの評価も上がるし、場合によっては、星が付与されることもある。
そのため、冒険者としては、指名依頼を受けられることは名誉なことだ。
一方で直接、依頼人と冒険者が対面して、間に何も介さないで依頼を受けるものは、直接依頼であって、指名依頼ではない。
こちらは、冒険者は嫌う傾向にある。
そもそも、指名依頼は誰でも出せるものではない。
冒険者協会は、指名依頼を出す際、依頼人の方に対しても審査を行う。
たとえ貴族やらなんやらの権威があろうと、ダメな時はダメである。
一方で、直接依頼の場合、そういう審査は一切存在しないため、依頼内容と報酬が釣り合わない可能性がある。
冒険者協会からの評価も得られないし、冒険者としてのうまみはない。
直接依頼を実行するためには、冒険者との間に、特別なコネが必要なのだ。
*****
「・・・・・・むう、依頼はムリかね?」
「そうですねえ。依頼料がこの金額だと、難しいですね」
「ぬう・・・・・・」
困ったのう、と老人が白いあごひげを撫でながらうなる。
冒険者協会のアビロア支部。
その依頼受付カウンターだ。
受付係の女性と、依頼に来た老人が向かい合ってうなっている。
「うーん・・・・・・。この依頼、目的は何ですか?」
「薬じゃよ。儂は錬金術師故な」
「それは知っていますよ。デニスさん。いつも、お店の方にはポーションを納品してもらっていますし」
「店の方は倅に任せて、今は悠々自適に薬の研究をしておる、ただのひねくれじじいじゃ」
「そんな・・・・・・」
受付嬢のエレナ・カラーは苦笑する。
謙遜もいいところだ。
目の前にいる老人、デニス・クレショフがポーション業界を通じて冒険者協会にしてきた貢献は大きい。
それだけに、できれば依頼は受けてあげたいが、冒険者協会には、依頼の内容と報酬については、きちんと釣り合うようにするための厳格なルールがある。
「・・・・・・うーん。デニスさん。ちょっと裏技っぽいやり方ですけれど」
「うん? 何かあるかね?」
「指名依頼にしませんか?」
「指名依頼? しかし、あれは依頼料が割り増しでかかるじゃろう?」
依頼相手を限定する分、依頼料が高くなることは仕方がない。
もっとも、
「それは、依頼人の方で、指名相手を決めている場合は、ですよ」
少しだけ声を潜めて、エレナはデニスへと説明した。
「協会の方で指名相手を決めていいなら、料金は通常で済みます」
「しかし、それでは結局依頼料が足りんじゃろう?」
「それなんですけど、指名依頼なら協会の方で付与する星を報酬に加えられるので、依頼料をかさ上げできるんですよ」
「・・・・・・そんなことをしてもいいのかね?」
デニスは、驚いた顔でエレナを見た。
それに対し、エレナはうーん、と首をひねりつつも、説明した。
「一見の依頼者さんとか、ただのお金持ちな依頼者さんだったら無理なんですが、デニスさんは、長年冒険者協会に貢献してくださった方ですし、錬金術師としての薬の研究って、社会の役に立つ内容ですからね」
「じじいの老後の楽しみの研究じゃぞ?」
「それでも、デニスさんが今までにしてきた貢献を考えると、その内容は冒険者協会にとって利になる、と判断できるんです」
「まあ、他人様の迷惑になるようなものは研究してはおらんが・・・・・・」
「つまり、この依頼を達成できれば、その研究のお手伝いができるんですよね?」
「うむ。それは間違いない」
「だったら、冒険者協会にとっても利益になりますから、その分を星で払うこともできます。それで、指名依頼としたらどうかなって」
「ふうむ・・・・・・。まあ、儂としては、満足いく品質で材料が届くならば、文句はないが」
「ただ、指名依頼の性質上、依頼を受注した冒険者さんと顔を合わせてもらって、デニスさんの方から依頼内容を説明してもらう必要がありますが」
「そのくらいの手間は、惜しみはせんよ」
「では、これで手続きしてもいいですか?」
「うむ。よろしく頼む」
依頼は、受領されることとなった。
冒険者協会の、日常業務の一幕であった。
・冒険者への依頼
冒険者は、基本的に異界の探索や、モンスター等から取れる素材などを売ることで生計を立てている。
ただ、様々な場所に行く冒険者に、採取や討伐など、様々な依頼が出されることがある。
依頼の仲介は、冒険者協会の通常業務。
依頼の内容は、おおよその難易度が設定されており、その難易度に応じて報酬額の相場が決まっている。
報酬額が足りない場合、冒険者協会は依頼を受領しない。
ただ、依頼者からの報酬額が足りない場合でも、緊急性が高い、かつ、人道的に必要、と判断された場合は、協会が報酬を追加で出す場合もあり得る。
これらに関して、冒険者協会は冒険者の互助組織であり、また、人類領域全体への貢献を目指すものである。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




