聖剣の成り立ち
この世界には、世界が滅ぶ要因、という認識がいくつも存在している。
目を覚ませば破壊の限りを尽くす『破壊の神子』。
命を懸けて封印されている、悪逆非道の『七大悪竜』。
あるいは、時空を断ち、世界を刻む『ヴァラジアの針』。
出会ったものを破滅の運命へと誘う、『ラング・エボルの守り人』。
その他、諸々。
世界崩壊要因、不幸伝播存在、災厄。
俗称として、『終末点』と称されるそれらは、多くが封印され、あるいは眠りについたその状態を監視されている。
『スキャンダル』とは、それらとは一線を画するものだ。
そもそも『終末点』は、魔族の持つ終焉の属性に類するものである。
魔族の終焉は、神族の創成、再生につながるものであり、その前段階ともいえるもの。
『終末点』によって発生するいかなる災厄にも、かならず終わりとそのあとの復興がセットで存在する。
世界の循環の一部だ。
だが、『スキャンダル』にそれはない。
『スキャンダル』による終わりには、再生の可能性はありえない。
「ということなんだが、理解できるか? ん?」
「その言い方がイラつく」
ジェシカから、ぺい、と投げられたつまみの燻製肉のかけらを口を受け止める。
「行儀悪いぞ」
「それは、投げた私に言ってるの? それともそれを口で食べた自分のこと?」
「食べ物を投げるな」
「はいはい」
互いに笑みを浮かべての茶々の入れ合いだ。
身内のノリである。
「で、何の話だったか」
「『スキャンダル』」
「おお。そうそう。アレな」
面倒な存在、といえば、その通りで、
「魔王の近くには、あれがいることが多いのよな」
「そうなのか?」
ん? と、焼き鳥の串をかじるベアトリスが、首をかしげる。
その口元についたタレを隣に座ったブレアが、布巾で拭いてやっていた。
「別に、魔王だけじゃないけどな。なんていうかなあ? 大規模な災難が発生するとき、その原因を起こりやすくする力があるんだ。あれは」
運命の操作、とでも言おうか。
今回の魔王騒動で言えば、『神喰』の魔狼がが魔王となったところに、『破魔』の神犬がいてしまい、さらにその力を取り込めるキマイラが生息していた、という、偶然が重なったことなどがそれだ。
『スキャンダル』が近くにいると、そういう不幸な偶然が起きやすくなる。
「まあ、一匹だけなら、そこまでだけどなあ」
「今回などは、余の華麗なる一撃で十分であったしな」
「『スキャンダル』自体は弱いからな。たぶん殴れれば子供でも吹っ飛ばせる」
ぶっちゃけ、最後の一撃は過剰火力であった、とすら思う。
「ルディランズは、いつからあれがいると思っていた?」
「『破魔』がいた時から」
「・・・・・・そんな早く?」
「討伐隊は、どちらかというと魔術寄りに戦力が偏ってた。加えて、魔王の戦力に、魔と対になる『破魔』がいるなんぞ、あり得ん」
「実際いたけど?」
「お前、『破魔』が魔王になるなんぞ、そうそうないからな? 正直、キマイラが魔王だったら、普通に納得したんだけどな」
キマイラだったら、そういうのを喰って取り込んでいたとしても、なんら違和感はない。
それが、四体も出てきたからこそ、違和感となってルディランズには感じられたのだ。
と、そこで、窓の外から、わっと声が上がった。
「あっちはあっちで、盛り上がってるね」
「勇者様がいるからな。魔王殺しの英雄ってやつよ」
「・・・・・・そうだ。それだ」
くく、と笑ったルディランズだが、ジェイソンが待ったをかける。
「ルディランズ。お前、どうして聖具など持っているのだ?」
「作った」
「・・・・・・作れるものなのか? あれ」
「一応、教会の秘、とはされているけど、暗黙の了解、みたいなもんだな」
ははは、と笑いながら、ルディランズは、自分の聖具の杖を取り出す。
白木で作られたそれは、シンプルなものだ。
まっすぐな幹を圧縮し、持ちやすい太さまで削っただけの、シンプルな杖である。
「簡単に言っちまうと、神性の宿った素材で、魔王の呪い持ちが作った道具が、聖具だ」
「魔王の呪いか」
「そういうこった。とはいえ、神性の宿った素材なんぞ、そうそうお目にかかれる代物じゃないからな。聖女なり祝福なりで、多少弱くても物体に神性を宿せる教会の、専売特許になりやすいのさ」
ルディランズの持つ杖の素材は、たまたま手に入れたものである。
ブレアの脚甲に関しては、杖を作った木材を薪として使用し、火そのものに神性を持たせることで代用とした。
「聖具なんて、魔王の呪い相手でなかったら、ただの道具だけどな」
「そう、なのか?」
「教会の聖剣は別だぞ? 教会で聖剣と認められるのは、魔王の討伐記録がある剣だけだ」
魔王を討伐した武器は、その時点で特殊な力を得る。
これは、魔王だけではない。
「竜なら竜殺し、巨人なら巨人殺し。称号がつくのは、何も人だけじゃないからな」
「なるほどなあ・・・・・・」
そこで、ジャン=ルイが、む、という顔をした。
「だったら、お前たち、竜殺しの武器を持っているのだろう? それはどうした?」
「壊した」
「壊れたわ」
「・・・・・・何があった?」
あまりにもあっけらかんとした言い草に、ジャン=ルイですら思わず、といった風に聞いていた。
「いや、まあ、アガットがバーサーカーになっちゃって、それ止めるときに諸共」
「・・・・・・あのアガットが?」
「あれはガチつらかった」
「きつかったわー」
二人で遠い目をする。
三人の中で、唯一ここにいないアガットを思い、ジャン=ルイはずい、と身を乗り出した。
「なんだ? 面白そうな予感がするぞ。話せ」
「「・・・・・・」」
ジェシカとルディランズは、互いに目を見合わせ、
「まあ、いいか」
「そうね。大した話じゃないし」
そう言って、話し始めるのだった。
・聖具の作り方
特に意識は必要なく、神性の宿った素材を使い、魔王の呪い持ちが作成すれば聖具になる。
作成者に、魔王殺しの称号は不要。
また、素材に宿る神性についても、作成に使われるどこかの行程で、それ相応の神性が宿っていれば問題ない。
神性の宿った素材というのは、自然界ではそうそう発生しない。
神族寄りの異界の中で、ごくまれに採取できる以外には、神族から祝福を賜るか、聖女が長い祈りの果てに宿すぐらいしかない。
聖剣を聖具と区別するのは、聖剣の場合は魔王を殺したことがあるから。
魔王を殺した聖剣は、殺した魔王の数だけ強化され、武器の性能が上がる。
ベイナスが使う聖剣での聖鍵の開放は、その聖鍵の数だけ、その武器が魔王を倒したことがあることを意味する。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
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