表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/197

世界の終わり

 宴は、盛り上がっている。

 当初こそ、魔王討伐の英雄を称える、という名目で、何度となく乾杯し、称賛の歓声もあった。

 だがそれも、夜が更けるに従い、ただの乱痴気騒ぎへと変わっていく。

 おそらく、明日の朝には、都市全体が二日酔いにでもなっているのではないか、とそういうテンションだ。


 最初こそ、ジャン=ルイが高いところに勇者の席を用意していた。

 だが今は、なぜかソウタがそこに座り、その席ごと神輿のように運ばれて、あちらこちらと移動している。


「・・・・・・で?」


 そんな騒ぎを、少し遠くに聞きながら、ジャン=ルイとルディランズ、そしてジェイソンは同じ卓について、酒を酌み交わしていた。

 同じ部屋では、ジェシカがブレアやベアトリスに絡んでいる。

 そこに、ジャン=ルイの腹心とも右腕ともいえる、ナタリー・エラヌーニが一緒に絡まれている。

 その様子を横目にしつつも、和やかな雰囲気であることに満足しながら、ジャン=ルイは杯を傾けた。


「魔王は、どうだった?」


 話題を振るのは、ジャン=ルイの方だ。

 それに対して、ルディランズとジェイソンそれぞれで返答をしている。


「魔狼の王。『神喰』のフェンリル。・・・・・・正直、魔王化してなくても厄介な相手だな」


 『神喰』は、単純に神術を弱体化する、というだけではない。

 そもそも、『神喰』の対象である神力は、すべての始まりの力だ。

 使い方次第では、ありとあらゆる戦法の起こりをつぶす、というやり方で、相手の戦力を無効化する、ということもあり得る。


「今回のフェンリルは、若い部類だな。あれで、もっと老練なやつだったら、・・・・・・正直、アビロアまで戦争に巻き込まれてたかもしれん」

「『百識』のルディランズがそう言うなら、その見立ては正しいのだろうな」

「わしは、直には、そのフェンリルを見ておらんからな。どうとも言えん」


 ジェイソンは、そう言いながらも、ルディランズとジャン=ルイの二人を見る。


「それより、二人の見立てを聞いておきたい」

「お? 『決戦』が聞きたいこととは。なんだ一体?」

「茶化すな『金鎧』。・・・・・・帰り際に、お前がつぶしたアレのことだ」


 少し、空気が重くなった気がした。

 だが、ルディランズは気にせず杯に酒を注ぐ。



「いたからな。『終末』」

「いたか」

「いたねえ。もしかすると、今回の魔王騒動、アレの仕業かもしれん」

「・・・・・・だとすると、アビロアはやはり危険か」

「今回、ジャン=ルイが吹っ飛ばしたからな。ある程度は大丈夫だろう」


 ルディランズは、のんきにそういった。

 凱旋の際に、パフォーマンスの一種として、ジャン=ルイが放った一閃。

 それにより消滅した存在について、だ。


「・・・・・・ああいうのは、どこにでも湧くからな。正直、気にしすぎても仕方がないさ。ジェイソンさん」

「そうかもしれんが」



*****



「あの三人は、何の話をしておるのだ?」


 む、と顔をしかめ、酒のつまみの乾物をかじかじとしながら、ベアトリスがうめく。


「あら。気になるかしら?」


 ジェシカは、そのベアトリスの様子をにやにや見ている。

 ブレアの方は、燻製肉をかじかじしながら、むー、とうなっている。


「まあ、世界の敵の話よね」


 ふふ、とジェシカは笑う。

 それととも、自分の杯が空いていることに気づき、


「あら、ありがと」


 そこにすっと酒を注いでくれたナタリーに礼を言う。


「いえ。どういたしまして」


 ナタリーは、と言えばちらちらとジャン=ルイの方を確認しながらも、ジェシカ、ブレア、ベアトリスの三人のもてなしに終始していた。


「世界の敵、というのは?」

「ほら、なんだっけ?」


 んーあははー、と酔っているジェシカが笑う。

 それに対して、アルコールの入っていない飲料を飲んでいるベアトリスとブレアは、む、とうめく。


「適当にごまかす気か?」

「・・・・・・ご主人様」


 むう、と不機嫌になるベアトリスと、同じ部屋とはいえ、離れたところで酒を飲んでいる三人、正確にはルディランズを見て、不安そう、というか、寂しそうな顔をするブレア。

 その二人を抱きしめて、ジェシカは笑う。


「ルディランズー! せつめー!!」

「あいつは、酔っぱらうとほんと厄介だな」


 まったく、と肩をすくめながらも、ルディランズは苦笑をうかべつつ説明した。


「異界と同じように、『力ある隣人たち』の世界との摩擦で発生するもの。・・・・・・世界を終わらせる、終末存在。そういうのがいるのさ」


 ルディランズは、そう語る。


「『スキャンダル』」


 世界との摩擦によって発生するそれは、ただ世界の崩壊を狙って動く。


「欲求も、理屈もない。ただ本能として、世界の終わりを狙う存在。そういうのがいる。この世界に生きる、すべての者の敵だな」


 どういう形で生まれるのかはともかく、結局は、そうして生まれてしまうもの。

 ただ、倒すしかない存在。

 それだ。


「倒せない存在じゃないが、異界と同じく、発生を防ぐことのできない。見つけた端から倒すしかない。そういうものだと、覚えておけ」


 ルディランズは、そう語る。

・スキャンダル

世界の終わりを狙う存在。

ありとあらゆる方法で、世界の崩壊を望む。

小さいものは、共同体の崩壊。大きいものは、文字どおりに世界の崩壊。

とにかく、すべての終わりを望む存在。

魔族の担う属性である『終焉』とは違い、その終わりには続きがない。

ただ、世界の崩壊と、すべての終わりを狙う存在。

世界に生きる、すべての存在の敵としかなりえない存在。





------------------------------------------------------------------

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ