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『虹の飛島』(3)

 影が踊る。

 地面から突き出た影が、魔獣たちを捕らえ、その動きを一時でも縛れば、他の参戦者が攻撃を加えてくれる。

 だが、


「・・・・・・敵の補充がはやいな・・・・・・」


 ルディランズは、眉をひそめた。

 ルディランズが魔術を行使し、捕らえ、撃破されていく敵の数と、敵の補充速度がそれほど変わらない。

 ちらりと見れば、魔王の影から次々と新しいモンスターが現れている。


「敵兵の補充付きとは」


 リソースは無制限ではない、と思いたいが、


「消耗戦になったら、こっちが厳しいか」


 魔王は、おそらく間違いなく、異界の主として、異界核を保有している。

 その場合、いくら魔力量はそれなりに多いと自負するルディランズでも、勝てない。

 何せ、異界核を利用した力の補給には、限界などないと思っていい。

 強いて言うなら、力を引き出す方の限界だが、魔王となればそこに限界は期待できない。


「となると、どっかで勝負に出ないとなあ・・・・・・」


 ふーむ、とルディランズは考える。

 近くでは、駆け回るブレアがルディランズにとびかかろうとする狼を蹴り飛ばしている。


「ふむ」

「む? 我の出番か? なあ?」


 ルディランズの背に引っ付いたままのベアトリスが、そんな声を上げた。


「なんとかできるのか?」


 ルディランズが問いかけると、ベアトリスはふふん、と得意げな顔で、自らの左目の眼帯を示す。


「我の左目をなんと心得る?!」

「魔眼だろ?」

「否!」


 びし、と両手を交差させ、否定を示すベアトリス。


「魔眼は、我の両目である。左目で封じているのは、邪眼なり!!」

「あれ? そうだったのか?」

「なんだと思っていたのだ?」

「いや、魅了の邪眼は、血を吸ったときに出るものかと」

「ふ! 違うぞ? むしろ、邪眼の方が出力は強い故、いつも眼帯で封じているのだ」

「おしゃれじゃなかったのか」

「おしゃれもある」

「そうか」


 ベアトリスは、眼帯を押し上げ、その下の金色の目を見せる。


「我の邪眼で、敵モンスターを魅了してくれる!」

「・・・・・・どれ、こっちでもブーストしてみるか」


 ルディランズは、別の杖を取り出し、左手で握って突き立てる。

 それから、


「制御はこっちでやるから、全力でやれ」

「うん? いいのか? ぶっちゃけ、今血を吸ってるから、割と手加減なしぞ?」

「かまわん」

「心得た!」


 か、と見開いた目から、金色の光が漏れた、ように見える。

 ともあれ、目は開かれた。


「んー。鏡と通り道、でいけるか」


 ルディランズが操作する魔術は単純だ、

 影を通して、邪眼の効果を広く及ぼしていく。

 よけるために影を見れば、影から覗く金色の目を見て、魅了にかかる。

 そういう状態へと持っていく。

 だが、


「かかりが悪いな」

「むう。さすがに、魔王の支配下にあるものを完全に魅了は無理か」


 少し、動きが鈍くはなるものの、こちらへの敵対はやめない。


「ええい。百識。もっと血を寄越せ」

「無理だろ。っていうか、単純に、お前の魅力が足りてねえんじゃねえの?」

「なにおう!?」


 厳密にいえば、モンスターや狼に、ベアトリスの魅了は通じにくい、ということだろう。

 ベアトリスの持つ魅了の力は、魄猟種が持つ捕食能力の補助能力だ。

 それゆえに、相手がベアトリスにとっての捕食対象でないと、利きが悪い、という欠点がある。

 まあ、デイウォーカーであるベアトリスにとって、生きとし生けるものはすべて捕食対象なので、欠点はないに等しい。


「・・・・・・え? マジで我魅力なし?」

「・・・・・・・・・・・・」

「なんか言え!!」


 べしべし、と頭をはたかれて、うっとうしそうに肩をゆする。

 ともあれ、


「やり方を変える。動きが鈍くなるってことは、多少は魅了入ってんだろ? だったら、幻術追加してやる」


 そして、ルディランズが魔術を発動する。


「おお。同士討ちしている」


 ベアトリスが感嘆の声を上げた。

 影から覗く金色の目を見たモンスターや魔獣が、周囲にいる他の敵に襲い掛かっていく。


「・・・・・・でも、だめだな。やはり手が足りん」

「むう」


 敵の生成速度が半端ない。

 このままでは、どのみち消耗戦になってジリ貧だろう。


「ルディ」

「おう。どうしたよ。アガット」

「手が足りんか」

「こっちはな。・・・・・・なんとかできるか?」

「少し、バフをくれ」

「おう」


 ルディランズは、右足で地面を突いて、円を描き、更に幾度かのステップを踏む。

 それで詠唱が完了したか、アガットの体が淡く光に包まれる。


「よし。では。行ってくる」

「おう。頼んだ」


 何をする、とも、どこへ行く、ともアガットは説明しない。

 だが、その背を見送り、魔術の維持に集中するルディランズの姿勢には、アガットへの信頼があった。

・魅了能力

魄猟種は、例外なく何かしらの魅了能力を保持している。

それは、捕食を簡易にするための補助能力。

魅了というと、魅力によって相手を惑わせる能力と思われがちだが、例えば見た者に本能的な恐怖心を植え付けることで動きを鈍らせるのも、広義の意味での魅了である。

思い通りに操る、というよりは、酩酊状態に陥らせるなどして、思考能力や判断力を弱らせ、その間に捕食を行う、という感じ。

ベアトリスの場合は、捕食対象に警戒させない、という方向で働く。

魔獣やモンスターに対して利きが弱いのは、魔王配下で別の支配力が働いているから、というのもあるが、ベアトリスにとってはそれらは好みの食事ではないため、というのもある。

魅了を使うのに慣れているなら、本人の好みに関係なくよく効いただろう。

なお、一番好みの捕食対象であるルディランズに効いているかどうかは、推して知るべし。



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よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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