『虹の飛島』(1)
魔王は、魔族が生み出した怪物だ。
魔族が、終焉、破壊や滅亡を司る種族であるため、魔王、という存在もまた、同様の存在だ。
むしろ、人間世界にとっては、まさしくその象徴である。
何が言いたいか、というと、
「減衰されるなあ・・・・・・」
「仕方がない。それが魔王というものだ」
ジェシカがぼやく通り、ジェシカやアガットが放つ攻撃は、魔王に当たる前に威力が減衰していた。
威力が通らないから、魔王配下を討伐するにも手間がかかっている。
これは、戦闘に参加する全員に共通していた。
例外は、聖剣を振るう勇者ベイナスだけである。
そのベイナスが、聖剣を振りかざし、その聖剣が放つ光が仲間を照らすと、威力の減衰は一時的に軽減される。
だが、そのあと魔王であるフェンリルが牙を鳴らすと、聖剣の光自体が減衰し、威力がまた落ちる。
魔王に対し、聖具を持った勇者が優位となる力が、フェンリル相手だと有効に働かない。
「・・・・・・ラチがあかないって感じ」
ぶん、と振り回し、とびかかってくる狼を弾き飛ばす。
攻撃力だけではなく、防御力も減衰している感じだ。
こちらの攻撃は、一撃で敵を仕留めるのが難しい。
敵の攻撃の一つ一つが、想定より重い。
ジェシカとアガットや、聖遣隊のメンバーは、今のところどうにかなっている。
だが、敵の数が、どこからともなく補充され、減らしても減らないことも痛い。
この状態が続くと、徐々に押し負けるだろう。
「ノノ!」
「やってるわよ!」
この敵を相手にしたときは、魔術の方が効率がいい。
ノノの唱える魔術は、その多くが炎を使う。
だが、ノノは今、炎ではなく雷を多用していた。
「速い!!」
炎の魔術では、走り回る狼を捉えきれない。
だから、速い雷系統の魔術を使っているのだが、それでもノノは捉えきれない。
「・・・・・・あーらら。ベイナス。こいつは、ちょっとまずいぜ」
ゼットが、生成した刃物を投擲し、敵の足止めを行いながらも、ベイナスへと漏らした。
「ちょっと、数が多すぎらあ。森の外へと、つり出せねえかね?」
「無理だろう。出口、塞がれているぞ」
「ちぇ」
しょうがないねえ、とうめきながら、懐に手を入れ、丸い球を取り出して、投げつける。
着弾地点で爆発が起き、数頭の狼が巻き込まれるが、その爆炎を乗り越えて次がとびかかってくる。
「む! むん!!」
ヴォーが巨体を生かし、盾を振り回して、ユリアに迫る敵を薙ぎ払い、ユリアは全員に補助術をかける。
だが、神術は、狼が周囲を走り回るごとに、減衰していく。
「こいつら、全部フェンリルか!」
「全部、っていうか、群れの長がフェンリルだから、下のも影響受けている感じよね」
まずいのは、冒険者パーティーと、巡礼騎士隊だ。
冒険者パーティーは、ここまでの消耗が響いている。
巡礼騎士隊の方は、こちらも主力が神術を活かす方向の装備であることが、足を引っ張っている
本来なら、魔王対策に有効なはずの装備が、この場では裏目に出ている。
「・・・・・・どうする?」
「決まっている」
「耐えられる?」
「こちらは、な!」
ふん、と腕を振るい、アガットは迫っていた狼を突き落とす。
「じゃ、やるしかないね」
「タイミングは任せる」
「わかった!」
ジェシカは、アガットと軽く打ち合わせて、離れる。
そして、走った。
「しゅーごー!!!!」
走りながら、ジェシカは叫ぶ。
襲われている冒険者や巡礼騎士の前に割り込み、襲いかかる敵を一度はじく。
「アガットの後ろを固めて! 防御優先陣形!!」
その指示の叫びは、全員の指針になった。
冒険者たちを押し込め、その前面に巡礼騎士隊が立って、防壁を作る。
冒険者たちは、もともと『紅炎遊撃隊』の所属だ。
盾の後ろから、射撃が可能な弓持ちばかりである。
巡礼騎士が防護障壁を展開し、盾と壁となれば、その後ろから冒険者たちが射撃をすることで相手をけん制する。
その間に、聖遣隊も集い、一団は一塊となった。
「どうする気だ? 耐えることはできても、無限とはいかないぞ!」
「わかってるわ!」
「大丈夫! こっちの方がやりやすい!!」
ジェシカが飛び回って敵をはじく一方、塊となった内側へと入り込んだノノは、むしろ落ち着いて詠唱を完成させていた。
「一に【ヒ】、二に【柱】、三に【墜落】、四に【花】!」
発動した魔術は、塊となった一団の周辺一帯を、余すことなく焼き尽くした。
「速いんだったら、全部焼けばいいのよ!!」
「・・・・・・魔力、持つか?」
「雑魚が尽きるのと、どっちが早いかね!!」
派手で強力な魔術は、それだけ消耗も大きい。
ポーションによる回復があっても、最後まで持つかは微妙だが、
「魔王一体にできれば、あんたでどうにかできるでしょ?! ベイナス!!」
「もちろんだとも。勇者として、一対一ならば、どんな魔王にだって負けない!」
力強くベイナスが宣言し、聖剣が強く光り輝く。
その光に照らされ、一団は一時、敵を押し返した。
「よし!」
ジェシカは、自分の右手甲を見る。
そこに力を籠めれば、赤く、『虹の飛島』のエンブレムが光を放つ。
「ふむ」
アガットは、ちら、と右手の甲を見た。
ぐ、と力を籠めると、青く、『虹の飛島』のエムブレムが光を放つ。
「アガット!」
「来い!!」
アガットが、右拳を突き上げた。
そこに、ジェシカが自分の右拳を打ち付ける。
そして、『虹の飛島』のエムブレムが、強く光を放った。
・防護障壁
主に魔術によって展開される、非物理障壁。
壁や盾のような形で運用する。
物理的に硬いタイプと、術的に硬いタイプと、両方で硬いタイプ。あるいは、やわらかくて衝撃を吸収したり、力場的に逸らしたり、と展開方法によって、性質は様々だが、魔術を使う者は、とりあえず最初に習うくらいには、基礎技術。
一番簡単な障壁は、手の平を前に向けるだけで詠唱が成立するため、魔術師などは反射で出してしまう場合もある。
ちゃんと術式を構築して、きちんとした装備で発動した場合には、城壁より硬くなるなどもある。
当然ながら、この世界では都市を囲む壁などには、これらの防護障壁の展開機能が組み込まれており、発動すると空中から地中まで、全域をカバーする。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




