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犬と狼の違い(3)

「あ~、これは、なるほど?」


 目の前の光景を見て、うーん、とうなる。

 異界となっている森の奥。

 途中、幾度か狼の魔獣が周囲を囲んできたが、ちょっと脅してやると、すぐに退いていった。


 向かってきてくれれば、殲滅できるのに、とジェシカとしては眉を顰めるところだ。

 こちらから踏み込むと、すぐに逃げてしまう。

 かといって、追いかけるには、森の中の狼は厄介だ。


 きっちりと統率されているな、というのは、アガットの感想。

 このあたりの動きから、大体の事情が見えてきた、とベイナスは頷いている。


 そして、先導する犬の神獣に連れられて行った先。

 奥まったところに、木々の茂みをベッド代わりに横たわっている巨体がある。

 見上げるほどの巨体だ。


 ジェシカがこのレベルの大きさの生き物を見たのは、かつての番の竜か、もしくは、ルディランズの知り合いとなったスフィンクスぐらいだろうか。


「で、こっちも傷だらけ、と」

「・・・・・・これは」


 ユリアが、傷の具合を見ている。

 だが、その顔は険しい。

 手をかざし、神術による回復を施してはいるが、


「・・・・・・だめですわね」


 ユリアは、沈痛な表情で首を振った。

 とても悔しそうだ。


「だめって?」

「ただの傷ではありません。何か、呪いのようなものがかかっています」

「呪いかー」


 魔王の呪いだの、傷の呪いだの、呪いって多いなあ、とジェシカはうめく。


「神獣に、そんな傷をつけるなんて・・・・・・」

「ああ、私にはわかるよ」


 ユリアの言葉の先は、ベイナスが引き継いだ。


「この傷からは、魔王の力を感じる。・・・・・・これは、魔王によってつけられた傷だろう」

「つまり、このでっかいお犬様は、魔王と戦っている?」

「そうなるな」

「・・・・・・でもって、これって、神獣なのよね?」

「そうなる」

「じゃあ、森の外で聞こえた、『破魔』の咆哮って・・・・・・」

「おそらく、魔王とこの神獣とで戦っているときの、余波ではないかな」


 ベイナスの推測に、ジェシカは腕を組んで、うなる。


「ただの余波が、異界の外まで届いて、おまけに巻き込まれただけの私たちの魔術を根こそぎ吹っ飛ばしたってこと?」


 どんだけよ、と顔を引きつらせる。

 体の大きさは、それだけ力を持っている、ということなのかもしれない。

 だが、


「ともあれ、このお犬様は、私たちの味方ってことでいい?」

「こちらには、ユリアがいる。神獣は、神人種相手には、割と優しいものだ」

「多少、警戒心を緩めてもらえる程度、ですよ」


 ポーションと、携帯食を巨大犬の神獣に渡しながら、ユリアは首を振る。


「でも、だとすると、よ?」

「お? どうした?」

「この神獣たち、魔王のいるところ、知っているのではないかしら?」


 確かに、とベイナス達はうなづいた。



*****



 森の外で、ルディランズは瞑想を行っている。

 目的は、腕の治療だ。


 ルディランズの腕は、魔術を操作している際に『破魔』を食らったことで、魔術の逆流を食らってダメージを負った。

 このダメージは、外傷はふさげても、魔術の使用には制限がかかる。

 今、思い通りに動かせはするが、魔力の通りが悪く、精密な詠唱に使うには、不安がある。


 だから、瞑想によって、体内の魔力の流れの修正を行い、回復に努めている。


 今のところ、森の外に魔獣なりモンスターなりがあふれることはないからこその、余裕である。


「・・・・・・もう少し、異界に踏み込ませるべきか・・・・・・」


 戦闘が起こらないことから、ジェイソンがそんなことを言い出した。

 ルディランズは、瞑想を中断して、目を開ける。


「森の外の警備に問題ないなら、まあ、いいんじゃないか?」

「ふむ・・・・・・」


 ジェイソンが悩む理由も、ルディランズには察しがつく。

 魔王を討伐した後、森の中の異界がどうなるか、ということを考えているのだ。


 異界が消えるとき、異界の中にあるものは、すべてその場に吐き出される。

 中にいる人間も、モンスターも、すべて、だ。

 魔王の配下である魔獣やモンスターも、多く森の中にいる。

 異界が消えた場合、統率を失ったそれらが、あちこちにばらばらに動くだろう。

 そのあとの周囲への被害をどうにかするには、先に異界の中を間引いておくのは、確かに有効だ。


「俺が危惧する点があるとすると」

「なんだ?」

「異界の中での戦闘は、この平原での戦闘より難易度が上がる。・・・・・・対応できる冒険者は、聖遣隊の護衛につけて中に入れたんじゃないか?」

「・・・・・・」


 結局、ジェイソンが悩んでいるのはそこだ。

 今外に残っているメンバーで、危なげなく対応できると言えるのは、不調のルディランズぐらいである。

 ルディランズ以外だと、負傷しているか、経験が足りないか。

 どちらにせよ、任せるには不安がある。

 加えて、


「聖遣隊に、敵の攻撃も集中するだろうからな。今から入れても、効果は薄いだろう」

「・・・・・・仕方がないか」


 ジェイソンは、諦め、周囲の警戒を指示するにとどめた。

・神獣の生態

神獣は、通常の獣と同じく、生殖によって繁殖するものが多い。

ただ、異界の中に不意に発生したり、神族に育てられて発生したり、あるいは、神気と神力が一定以上の密度に高まった空間に自然発生したりする。

生態は、通常の獣とそう変わるものではなく、ものを食べ、飲み、排せつし、眠る。

神獣は、守ったり、育てたり、という性質が強く、あまり暴れないため、人からすると益獣であることが多く、地域によっては、守り神として頼りにされているところもある。




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よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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