犬と狼の違い(1)
神獣と魔獣の違いは、神獣は草食獣、魔獣は肉食獣、という違いがある。
ただ、この分類は、大体、という目安でしかない。
雑食の犬や猫の場合、神獣もいれば魔獣もいる。
スフィンクスやキマイラのように混ざっている場合、神獣か魔獣か、見た目だけで区別をつけるのも難しい話だ。
ただ、明確に、その二つを分けることができる基準が存在する。
それは、彼らが持っている力が、神力か、それとも魔力か、という違いである。
人間の場合、混血が進んでいるため、少量ならどちらも持っている。
だが、神獣は神力しか持たないし、魔獣は魔力しか持たない。
キマイラのように、他の獣を取り込む力を持っている魔獣も、神獣を食べたからと言って、神力を得ることはない。
「・・・・・・なんだかなー」
「どうした?」
「ん」
ジェシカは、蹴りでモンスターを吹き飛ばし、次に襲い掛かってきた猿のような魔獣を切り捨てる。
「・・・・・・魔獣だ」
「それがどうした? キマイラがいた。キマイラの部品に猿もいた。おかしなことはないと思うが」
「アガット。マジに言ってる?」
「・・・・・・気持ち悪いとは思ってる」
「よねえ」
ジェシカは、すこし考えた。
それから、首を振る。
「いいわ。こういうのを深く考えるのは、ルディの仕事」
「おいリーダー・・・・・・」
「原因はいるんだもの。全部切り捨てれば十分よ」
なんとも物騒な結論を出しながら、ジェシカは持っていた双剣をしまう。
そして、もう一組、腰の後ろに提げていた双剣を抜いた。
「そっち使うのか」
「ここから先。ちょっと広くなってるみたい」
「・・・・・・となると、本番かね?」
アガットが、盾を構えなおし、メイスを握る手に力を籠める。
巨大化した全身が、さらに重圧を増した気がした。
「・・・・・・後ろ、ついてきてるー?」
その巨体の脇から、ジェシカが後ろを覗き込むと、一団はそれなりについてきていた。
だが、聖遣隊や巡礼騎士、それから三等級冒険者はともかく、冒険者たちの中には、いくらか息が荒い者たちも見て取れた。
「休憩、要る?」
「いや、このまま行こう」
ベイナスが、ジェシカの問いに即答した。
「この先、広間があるんだろう?」
「少し、広くなってるみたい」
「だが、敵がいる」
「確実に、待ち構えてるって感じ」
うん、とベイナスはうなづいた。
それは、聖遣隊の斥候である、ゼットも同じ結論を出していたからだ。
だから、
「その広間を制圧し、そこで休息を取る。・・・・・・木々に囲まれているこの辺りより、少しでも視界が開けていた方が、奇襲の危険性も減ることだろう」
「なるほど。道理ね」
うん、と、ジェシカはアガットと顔を見合わせ、うなづき合う。
「じゃ、こっちが突っ込むから、後ろよろしく」
「ふむ。・・・・・・大丈夫か?」
「むしろ、そっちがしっかりしててよ? やばかったら戻るんだから」
「・・・・・・なるほど、了解した」
ベイナスがうなづいたのを見て、ジェシカは広間へと踏み込んだ。
*****
「・・・・・・おおっと、これは予想外」
ジェシカが踏み込んだ先、目撃したのは戦闘だった。
狼の群れが、獲物を追い回している。
狼の群れでの狩猟は、追い回される側になると、とても厄介だ。
特に、賢いリーダーがいる場合の危険度は、かなり高い。
ジェシカが見る限り、目の前にいる群れは、かなりレベルの高いリーダーが率いている。
追い立てる獲物に対し、追い立てる群れを挟んだ側にいる、一際大きい個体がそれだろう。
そのリーダーの目が、ジェシカとアガットに向いた。
瞬間、ジェシカは、自身の最高速で、そのリーダーへと切りかかっていた。
一振り。
だが、それは横跳びに避けられる。
群れの狼たちの目が、ジェシカへと向く瞬間、
「おおおおおおおおっ!!」
地響きを立てながら、咆哮を上げ、アガットがその場へと踏み込む。
それは、狼たちの注意を引き付け、ジェシカが離脱する隙を作った。
ジェシカは、そのまま跳び上がると、竜術で作った翼を広げ、滞空。
俯瞰した後、左の剣先を敵の群れに向け、
「咆えなさい。ラディアー」
唱えた瞬間に、剣先からエネルギーの砲撃が放たれた。
それは、竜のブレスの模倣だ。
剣を介して発現したそのブレスは、ジェシカの体に流れる血の発現でもある。
放たれたブレスは、群れの一部を吹き飛ばすが、かいくぐり、他の狼がジェシカへととびかかり、
「薙ぎ払え。ドラゴンテイル」
右の剣が、伸びてうねった。
そして、一回転するように振るえば、周囲は広範囲にわたって薙ぎ払われる。
「さて」
ジェシカの周囲から、敵が引いた。
これで、ジェシカには、狼たちが追い立てていたものが見えた。
「アガット、とりあえず、そっち守って」
「・・・・・・わかった」
いろいろ言いたいことはあったが、アガットはジェシカの判断を信じる。
そして、ジェシカは広間の敵の殲滅に入った。
・竜剣
竜人種としては一般的な、竜術と剣術を組み合わせた戦闘法。
竜術は、自身の存在を竜へと近づける術のこと。
竜剣は、その中から、竜の一部を模倣した力を剣に込めて、放つ剣術のことである。
剣先から咆哮を放ったり、剣を角や爪に見立てることで攻撃力を上げたり、尾や首を発現されることで攻撃範囲を広げたり、といったことができる。
利点は、自身の肉体で行うより、肉体へかかる負荷が小さいこと。
欠点は、それなりの品質の剣を使わないと負荷に耐えきれずに砕けることと、自身の肉体を使うより、竜力の消耗が激しいこと。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




