表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/197

エンブレム

 森の中を走っていく。

 時折現れるモンスターは、


「はいや!」

「よっと」


 ジェシカとアガットが、軽い口調でのしていた。


「あの二人、強いな」

「まあ、あの二人も、三等級ですし」


 ベイナスのつぶやきに、横を並走していた冒険者の一人が答える。


「三等級、ということは、冒険者としては、一流か」

「一応、我々も、それぞれ三等級が二人ずつ入ってますよ」

「ていうか! おい『飛島』の! こっちに少し流していいんだぞ?!」


 聖遣隊を護衛する冒険者たちが、仕事をする暇がない。

 そのくらい、ジェシカとアガットの殲滅スピードが高いのだ。


 ジェシカは、背の翼を広げ、翼が空を一打ちする都度、瞬間移動にも見まがう速度で飛び回って、モンスターや魔獣を一刀の元に切り伏せている。

 アガットの方は、大きな体でモンスターたちを押しとどめ、そのまま上からメイスで押しつぶしている。

 加えて、アガットは進行方向の藪や樹木などを、大きな体でつぶして進むことで、後続の道を作る役目も負っていた。

 進行方向から来る敵は、この二人だけで十分に潰せていた。


「こっちは、まだ大丈夫だから、後ろにこそ注意してー」


 そんな声が、ジェシカの方から飛んできた。

 森の中には、あちらこちらに気配がある。

 今のところ、左右や後ろから襲われることは少ないが、それはジェシカとアガットの進行スピードが早いおかげだ。


「しかし、敵が出てこないな」

「一応、我々の方で軽く結界を張っていますから」


 これは、巡礼騎士の隊長が答えた。

 結界を張りながら移動できるあたり、やはり練度が高い。

 だが、それでも結界を張りながら移動すれば、移動先の敵と遭遇する可能性は高い。


「アガット、やっぱり変」

「遭遇率が低いか?」

「違うわ」

「うん?」


 ジェシカが感じる違和感は、敵の編制である。

 襲い掛かってくるのは、蛇や蝙蝠、ウサギにネズミなど、森に普段から済む獣ばかりだ。

 モンスターもいくらか混じってはいるが、


「キマイラの素材になってたやつよ」

「足りないのがいくらかいるな。・・・・・・山羊とか」

「キマイラは、初期で発生した段階で、いくらか獣の部位を持っているものでしょ? ここにいたやつが、最初から持ってた可能性はあるわ」


 それに、そういう家畜の類なら、近隣の村落から盗ってきたものがいるだろう。

 キマイラに混じっていた草食獣の部品は、すべて牧畜のものだったし、間違いないはずだ。


「そっちじゃなくて、おかしいわ」

「何がだ?」

「狼と犬がいない」

「・・・・・・確かに」


 『破魔』の力を持つのは、犬の神獣。

 この森は、もともと狼の生息する森。

 だが、どちらも出てこない。


「どういうこと?」

「ルディなら、なんかわかったかもな」

「・・・・・・最悪、ルディを『呼ぶ』かも」

「・・・・・・覚悟は、いるかもな」


 うなづき合い、二人は、それぞれに手の甲を見た。



*****



 エンブレム、というものがある。

 クランやギルドになると作成する、象徴となるマークだ。


 『虹の飛島』にだって、そのエンブレムはある。

 パーティーを作った際に、ジェシカが頑張って考え、ルディランズが茶々を入れ、アガットが清書したものだ。

 エンブレムを公式に登録できるのは、クラン以上になってからだから、クラン昇格の申請の際に、ジェシカがとても嬉しそうに手続きしていた。

 今となっては、クランメンバーは、防具なりなんなり、自分の思うところにエンブレムを入れている。

 これからクランを拡大し、所属パーティーを増やすなら、独自のパーティーごとのエンブレムも増えていくだろう。


 ジェシカ、アガット、ルディランズの三人は、右手の甲に、それぞれエンブレムを入れていた。


「それがこれなわけだが」


 右手に着けていたグローブを外し、ルディランズはエンブレムを見せている。

 『虹の飛島』のエンブレムは、虹のかかった雲と、その上にのせられた盾と剣と杖である。


「・・・・・・これ、何か仕掛けがあるだろ」


 ルディランズのエンブレムを見たベアトリスが、首をかしげながら言った。


「お、わかるか」

「なんとなく、変な魔力の流れがあるような・・・・・・」

「まあ、ちょっとな。・・・・・・とはいえ、使うと後で体がきついから、できれば使いたくない」

「む?」


 エンブレムは、便利なのだ。

 彫りこんでいるものに、そのエンブレムの旗の下ではバフをかける、などの効果は当たり前で、同じエンブレムを持つ者同士が近くにいると、相乗効果でいい効果が発生する、などもある。

 そういう効果を与えるエンブレムを彫り込む専門家もいる。


「俺は、自前で作った」

「どんな効果が?」

「そりゃ、秘密だ。一応、うちのパーティーの切り札みたいなもんだしな」


 はっはっは、とルディランズは笑った。

・エンブレム

冒険者がよく作るやつ。

割とよく解散が発生するパーティー段階で作ることは稀だが、クラン以上だと普通に作成している。

紋章であるため、何かしらの特殊効果を持たせることもできる。

特定個人にしか影響しない、という制約があるため、逆に効果が高めに設定できるのも特徴。

専門でそれを作る仕事をしている者もいる。

有名なギルドのエンブレムにもなると、それだけで飾りとして売り買いされていたりする。





------------------------------------------------------------------

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ