キマイラ戦終結
「ちょっとアガット。出遅れてる!!」
「ああ?!」
「もう、ルディの方が先に仕留めちゃってるじゃないの!!」
ジェシカがちら、と一瞥した先では、バルガハルが抑えていたキマイラが、黒いとげのようなものに貫かれた後、爆散したのが見えていた。
魔術殺しが効いている環境で、どうやって魔術にあそこまでの威力を持たせているのか、というのはともかく、あれがルディランズの仕業であることを、ジェシカは疑わない。
「いや、もう少し手を抜けよ」
ルディランズに先を越されたことに対し、ジェシカは憤っているが、アガットの方は、落ち着いている。
「なんで!?」
「仮にも魔王の眷属で、魔王の力を持っているやつだぞ? 下手に倒すと呪いがあるかもしれん」
「むむ」
ひゅ、と剣が振るわれ、残っていたキマイラの翼が根元から切り落とされる。
「つまり、トドメまでは刺すなってこと?」
「もう動かないくらいまで痛めつけてんだから、そのまま止めとけ」
むう、と口をへの字に曲げて、ひょい、と高いところから飛び降りる。
そして、ひゅんひゅん、と剣を振る音。
その直後に、キマイラの体にさらに斬撃が走って、キマイラが地に伏した。
「意外と手ごたえなかったわ」
「そりゃ、ルディがバフ入れてたからな」
「・・・・・・それだけかしら」
「いつもより、バフの威力が高かった。・・・・・・たぶん、初めて使った方法でバフかけたから、加減を間違えたんだろ」
アガットは、ふ、と笑って肩をすくめた。
「どいてください」
「ん?」
アガットとジェシカが声を掛けられ、声の方へと目を向けると、燐光をまとう人狼の少女がいる。
「トドメ、刺します」
「おう。お前がやるのか?」
「はい。ご主人様が、聖具をくれているので」
「・・・・・・ああ、それで作ってたのね」
ふうん、とジェシカはブレアを見て、
「いいじゃん。これからはルディをよろしく」
「え、あ、はい」
こくこく、とうなづいたブレアは、ぴくん、と肩を震わせる。
「ん? どうした?」
「行きます。場所、開けてください」
「おお。わかった」
二人が道を開けると、ブレアは右足を踏みしめ、左足を後ろへと振りかぶり、前へと蹴りだした。
その瞬間、左の蹴り足から光の塊のようなものが蹴りだされ、キマイラを直撃した。
直撃した瞬間、閃光が発生し、そして光が収まれば、そこにはキマイラの死体は残っていない。
「終わったか」
「虹の飛島の引き受け分は終わり、もう片方は、と」
ジェシカが目を向けたとき、ジェイソンが展開していた『決戦』が消えた。
「あっちも終わったみたいね」
「そのようだ」
聖遣隊が、無事にいる様子を見て取り、ジェシカはふう、とため息を吐いた。
*****
ルディランズは、魔術をさらに構築していく。
「む? キマイラは終わったぞ?」
「アホ。まだ雑魚が残ってる」
魔術を操り、周囲で暴れている小物へと攻撃を向ける。
ベアトリスは、その様子を見て、ふむ、とうなった。
「・・・・・・我の属性だな」
「魄猟種の種族特性は、こういう時つよいよな。便利」
「便利言うな」
ともあれ、便利な属性を魔術で操り、ルディランズは周囲の掃討を進めていく。
「キマイラの討伐組は、そろそろ戻ってくるな」
ルディランズは、本陣の待機組へと目をやって、
「ミリディア」
「はーい」
「怪我はあんまりしてないっぽいけど、体力回復の薬用意しといてくれ」
「わかったわ」
ミリディア達救護班が動き出す。
それを見送り、ルディランズはさらに魔術を構築する。
「魔術殺しも消えたし、俺も本気でやってみるかね」
「いいのか? 魔力の消費は・・・・・・」
「構わん。残りを仕留めるだけなら、大した消耗もない」
詠唱は簡略に。
呪文の発動点は、ブレアがいるし、その周りには、ルディランズが伸ばしている樹木もある。
杖替わりに魔術を発動する。
*****
「ただいまー」
「おう。ごくろうさん」
ふいー、とルディランズは椅子に腰を下ろして、茶をすする。
「のんびりしてるわね」
「とりあえず、戦闘は終わったからな」
ルディランズが魔術を発動して、雑魚は大概片づけた。
残っているものも、『紅炎遊撃隊』のメンバーで始末できるだろう。
ルディランズは、戦場を照らしていた樹木たちから制御を手放して、自由になったうえで、のんびりしている。
樹木に生った実は、まだ光をともしているが、いずれは消えて朽ちるだろう。
「こちらも終わった」
ジェイソンが、聖遣隊を引き連れて戻ってきた。
戻ってきた面々は、それぞれに休憩に入った。
「ルディランズ」
「おう」
「どう見る?」
ジェイソンが、ルディランズに声をかけた。
それは、今後の状況を確認するためだ。
「キマイラは倒した。そうそう何体も、あんなもんは用意できんだろう。残りは、森の中だな」
「・・・・・・踏み込む必要があるか?」
「ある。中は異界化している。魔王は、おそらく中からは出てこないし、異界ならモンスターはポップする。・・・・・・時間をかけると、また戦力が戻ることになる」
「なるほど」
「突入するなら、聖遣隊を中心に、魔術に頼らない戦闘ができるメンバーで固める必要がある」
「なるほど」
ふうむ、とジェイソンは考え込む。
「とりあえず、今夜はもう休んでいいぞ。見張りは立てておいた方がいいだろうが、さすがにさっきの今で、次はないだろ」
「確かにな」
ふう、とジェイソンは大きく息を吐いた。
・異界の主
異界では、何もしなくてもモンスターが発生する。
このモンスターは、異界が展開した場所の周辺に現れる生物を模したものが多いが、異形なものもいる。
ただ、異界のモンスターは、異界の主に従うことが多い。
異界の主、というのは、異界の核をその身に宿している存在。
これを倒せば異界が消滅する。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
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