表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/197

魔王の軍勢(4)

「ほう。やるもんだ」


 戦場の一角に、突然広範囲にわたって黒い沼のようなものが生まれた。

 その上に差し掛かった魔王の軍勢は、その沼の中へと飲み込まれていく。

 もがいて逃れようとしても、その沼から伸びた手のような形状の暗闇が、その体に巻き付いて、その沼の中へと引きずり込んでいく。

 大型小型、魔獣もモンスターも関係ない。

 冒険者はきれいによけて、敵だけを正確に捉え、引きずり込んでいく。


 特筆するべきは、その効果範囲だろう。

 本陣の把握する戦場において、その三分の一程度が、暗闇の沼に飲み込まれている。

 なによりも、その使い手がすさまじい。

 ルディランズの目には、影魔術を使った魔術師が、魔力切れで気を失い、パーティーメンバーに担がれているのが見える。

 だが、使い手の魔術師が意識を失っているのに、魔術の制御は一切失われていない。

 敵味方の判別は変わらず、新しく暗闇の沼に踏み込んだ魔獣やモンスターは、変わらず引きずり込まれている。


「・・・・・・『暗黒の反旗』のリーダーか。いい魔術師だ」

「へえ。あんたがほめるとは。本物ね」

「影魔術への適性が、ちょっと常人離れしたレベルで高い。俺にはマネできん」

「あら、ルディでも無理なんだ」

「無理だ」


 ルディランズは、肩をすくめて答えた。

 二等級冒険者の魔術師として名は売れているが、ルディランズは自分の魔術に対する才能は、基本的に『並』であると思っている。

 魔術師として活動するための必要十分条件は満たしているが、可もなく不可もない、これと言って際立った才能もない、と思っている。

 唯一特殊なのは、魂現くらいである。


「あの適性は、もう天賦の才ってやつだよ。うらやましい」

「そうなんだ」

「やっぱり、前々から言ってた通り、勧誘したらどうだろう?」


 アガットも、戦場の光景を見て、そういう。

 以前から話は上がっていたが、実行に移せていなかったのは、『暗黒の反旗』が六人パーティーとして、ある種のスタイルが確立していたからだ。

 チームでしかなかった『虹の飛島』に誘っても、やり方の違いでうまくいかない可能性が高い、と考えられていた。


 だが、今の『虹の飛島』は、クランである。

 パーティーを丸ごと傘下においても大丈夫、ということを考えると、クランとしての対応力を上げる意味でも、勧誘する意味はある。


「俺たち、どちらかというと器用貧乏だからな。あいつらに入ってもらって、特化型の色を入れられると、できること増えるぞ」

「ぶっちゃけ、あそこリーダー中心の姫パだけど?」

「何か問題あるのか?」


 ルディランズも、アガットの提案にうなづいている。

 だが、そこにジェシカが心配そうな口調で言葉を挟む。

 それに対して、ルディランズはきょとん、とした顔をした。


「・・・・・・まあ、リーダーは、なんか俺に敵対心、とまでは言わんでも、反抗心っぽいのは持ってるぽいしなあ。そこがちょっと心配か?」


 顔を合わせるごとに、妙に尊大な態度で突っかかってくる。

 ルディランズは適当に流しているが、『暗黒の反旗』のリーダーが、ルディランズに対抗心を抱いている、というのは、ルディランズの中では確定事項だ。


「頼もしいじゃないの。今のアビロアだと、表立って俺にケンカ売る魔術師とか少なくなったし」

「・・・・・・そうね。あんたがそれでいいなら、いいと思うわ」

「割とひねくれている割に、人間関係は素直に受け取るよな。ルディは」

「?」


 ジェシカとアガットの二人がやれやれ、と肩をすくめることに、ルディランズは疑問を浮かべるが、答える者はいない。

 そうこうしている間に、戦場から撤退が開始されていた。

 すでに時間は夕方に差し掛かっている。

 もう間もなく、夜が来るだろう。


「で? どうするの?」

「何が?」

「『暗黒の反旗』をあそこに送って、魔術を使わせたの、ルディの提案じゃない」

「そうだな。影魔術は、むしろ夜の方が効果が高いんだろう? 夕方とはいえ、まだ日があるうちに使ったのは、なぜなんだ?」


 ジェシカの言う通り、本陣で待機していた『暗黒の反旗』を前線に送るよう、提案をしたのはルディランズだ。

 今後の作戦の推移を考えてのことである。


「理由は三つ」

「ほう」

「一つ目は、夜に魔術を使わせると、明日使えない。今からなら、休ませれば明日には魔力が回復している。あそこまでの特化火力だからな。使える回数は増やしておきたい」

「なるほど」

「二つ目は、夜にあの魔術を使わせると、確かに効率はいいんだが、その間は戦場が使い物にならん。たぶん、威力が高くなりすぎて、制御ができん」

「あー・・・・・・」


 これは、『暗黒の反旗』のリーダーと、影魔術の相性がよすぎるためだ。

 だから、威力が高くなりすぎる。

 制御ができなくなれば、今は敵のみ捕えているあの魔術が、味方の冒険者たちにも牙を剥くようになるだろう。


「三つ目は?」

「本人がやりたがった。暗くなってからじゃ目立たないからって」

「・・・・・・そうなんだ」


 ふうん、とジェシカはにやりと笑ってうなづいた。


「なんかよくわからんが、いい具合にやってくれたみたいだからな。俺の方で追撃を入れるかね」


 そういって、ルディランズは、手指を組んで、印を組むのだった。


・姫パ

要は、一人の女性を中心として、残りが男、かつ、男が一人の女性を持ち上げ、尽くすような行動を取って、女性の過ごしやすい環境を作ろうとするパーティーである。

逆パターンのハーレムパーティーもあるが、どちらも周囲のヘイトを集めやすいため、注意がいる。

女性が巧妙に立ち回ってそうしている場合と、天然でそうなっている場合がある。

なお、冒険者は命がけでやばい緊急事態に直面することが多いため、雑なことをやるとすぐ修羅場になる。

追放劇の後にこういう形になったパーティーは、そのあと高確率でざまあ劇を演じる。

ただ、周りを巻き込むことが多いので、発生すると遠巻きにされることが多い。




------------------------------------------------------------------

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ