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魔王の軍勢(3)

 戦闘は続いている。

 『紅炎遊撃隊』のメンバーは、後退しながら戦闘を続けていた。

 そろそろ、日が暮れようとしている。


「・・・・・・まだ、本隊出てきてないよな」


 『赤色の曲刀』という『紅炎遊撃隊』傘下のパーティーのリーダーは、周囲を見まわし、メンバーの無事を確認しながらぼやいた。

 彼らは、『紅炎遊撃隊』の一員として、この作戦に参加している。

 『紅炎遊撃隊』は討伐専門だが、彼らはその中でも、異界産のモンスター討伐を中心に引き受けるパーティーだ。


「まだ、出てきてねえよ。リーダー」


 隣で戦う剣士とともに、リーダーは槍を前へと突き出し、敵を抑える。

 後ろから、パーティー所属の魔術師がバフと援護の魔術をくれる。

 弓使いの援護もあるし、支援回復職である神聖術師の力で、戦闘の中で負った傷は癒え、体力も回復する。

 それでも、戦い続けると、精神に降り積もるものがある。


 リーダーは、本陣として置かれた後方より、前方にある森の方を見ている。

 そこから魔王が出てくるまで、森の手前の平原部分で戦うことが、彼らの役割である。

 すでに夕方に差し掛かっているが、まだ森の方は動きがない。

 相変わらず、魔獣やモンスターを吐き出すばかりだ。


「つか、あんな森にどんだけいるんだ?」

「ぼやいてもしょうがないっしょ。ギルマス言ってたじゃん? 魔王は、周辺から呼び寄せるから、かなりの群れがいる可能性あるって」

「にしたってなあ」


 槍を突く。

 薙ぎ払う。

 それらの槍の使い方としては極めて基本的な動作で、軽々とモンスターを討ち取っているあたり、彼の技量は確かだ。

 その合間にも、リーダーの口からぼやきが漏れる。


「どんだけやるんだっての」

「ギルマスはなんて?」

「・・・・・・ぶっちゃけ、三日はみろって言われてる」

「まだ初日じゃん?」

「わかってんよ」


 くそが、と槍を振り回し、穂先についた血のりを払う。


「そこの一団よ」


 そんな一団に、声をかけてきたのは、外部参加の冒険者パーティーだ。


「あ? ・・・・・・なんだっけ? 確か・・・・・・」

「『暗黒の反旗』である」


 むん、と深く低い、おどろおどろしい声で、先頭の人物がうなづいた。

 怪しげな装飾を施された黒いローブに身を包まれ、フードを目深に被った、怪しい姿の冒険者だ。

 明らかに怪しい姿だが、その後ろに続くメンバーと思しき一団は、ごく普通の冒険者の恰好をしている。

 先頭の姿と共通している点といえば、せいぜい首元に黒いスカーフをまいていることくらいだろうか。


「助力は必要か?」

「俺たちか? いらんいらん。てか、持ち場はどうした?」

「本陣より、指示が来た」


 夜になれば、魔王の軍勢の勢力が強くなる可能性があるため、その前に戦力を増やしておく、ということらしい。


「加えて、我は、闇が深い方が強いのだ」

「ほう?」

「ああ、聞いたことあるなあ。『暗黒の反旗』のリーダーは、影魔術使いで、夜の方が強いとかなんとか?」

「然り」


 うむ、と『暗黒の反旗』のリーダーはうなづいた。


「それとともに、前線を少し下げる。我が一撃を放つ故、それに合わせて後退せよ」

「おう。そうかい!」


 『暗黒の反旗』のリーダーは、詠唱を始める。

 やたらと闇とか影とか入っているあたり、なんとも癖のある詠唱である。


「・・・・・・なんだかなあ?」

「どうしたんよ」

「なんか、背中がかゆくなる・・・・・・」


 『赤色の曲刀』の前衛二人が言い合っている間に、詠唱が完了したらしい。


「ふはははは! 漆黒の闇に沈むがよい!」


 『暗黒の反旗』のリーダーが地に手を触れると、そこから伸びた影が魔獣やモンスターの足元に広がる。

 そして、それらの姿が沈んでいく。


「おお! すごい威力だ・・・・・・」

「ほめよほめよ! 我はすごい・・・・・・!」


 そして、『暗黒の反旗』のリーダーはそのまま後ろに傾いていく。

 そのまま地面に倒れるところを、他のメンバーによって支えられた。


「・・・・・・大丈夫なのか?」

「あ、ご心配なく。ただの魔力切れなんで」

「え? あれ一発で?」

「緊張してたんすね。いつもより力入れちゃったみたいっす」

「なんでまた・・・・・・」

「この人、『虹の飛島』のファンなんすよ。ジェシカさんとか、ルディランズさんとかの」

「ああ、見てる前だからって、張り切ったのか」


 言っている間に、フードがめくれる。

 その下から出てきたのは、眼帯を付けた愛らしい少女の顔である。


「・・・・・・あれ? 男の声だと思ったのに」

「舐められないようにって、フードに変声機能入ってるんで」


 ははは、と笑いながら、慣れた様子でリーダーを担ぐと、メンバーは後ろへ下がる。


「あ、この辺、しばらく敵来ないんで、今のうちに下がるといいっすよ」

「お?」


 後ろを見ると、影の沼のようなものから手の形をした影が出てきて、周囲のモンスターや魔獣を引きずり込んでいる。


「・・・・・・おお」


 見た目は不気味だが、確かに成果を出している。


「いやあ、できることすごいんすけど、不器用なんですよねえ。この人」

「いや、大したものだと思うぞ?」

「でも、あれやると、素材とか回収できないんすよ」

「・・・・・・一長一短だなあ」

「まあ、その分頼りにはなるんで」


 性格に、ちょっと難ありますけどね、と『暗黒の反旗』のメンバーは笑っている。

 他のメンバーは、リーダーを担いだメンバーの周囲に立って、カバーに入っている。

 これはこれで、連携のとれたパーティーだな、と『赤色の曲刀』のリーダーは、少しずれた感想を持つのだった。

・影魔術

影を操る魔術。

魔術には種類があるが、この手の魔術はイメージ的に空間に作用する能力を持つことが多い。

魔術を習得するには、影が平面ではなく、日の当たらない領域全体にできる立体である、という認識を持つことが必要。

それだけに魔術自体の難易度が高く、使い手は少ないが、魔力効率、威力などで、非常に性能の優れた魔術である。

ただ、これを専門の習得したものは、なぜか言動が大げさになったりするものが多い。


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評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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