魔王の軍勢(2)
魔王の軍勢の攻撃を続く。
地上を走る巨獣の第一陣。
そのあとに続く、小動物の第二陣。
そして、次だ。
鳥や虫のモンスターによる、上下の挟み撃ち。
「こっちにもくるかね」
ルディランズがぽつりとつぶやく。
敵の中でも、鳥は前線を飛び越え、直接本陣を狙っている。
本陣を守るメンバーから、矢や魔術が飛び、迎撃していく。
「迎撃開始、と。・・・・・・ウィシア」
ルディランズが声をかけると、身の丈より大きい杖を持ったウィシアが近づいてきた。
「はい。先生」
「迎撃。俺はもうちょい戦況を見る」
「こちらは?」
横にいたフィアマが聞いてくるが、そちらにはジェシカが指示を飛ばす。
「フィアマは待機。ウィシアのサポートしてやって」
「了解」
「お願いします」
ウィシアは、亜妖精種族のエルフとしては珍しく、精霊術より魔術をよく使う。
ルディランズに教えを受けていることもあるが、本人が魔術を好むからだ。
「他メンバーは待機。力を温存しとけ」
『虹の飛島』の役目は、魔王が出てきた後、聖遣隊が攻め込むときの露払いだ。
それまでに力を使い果たしてもいけない。
「・・・・・・」
ルディランズは、森の奥をにらみつけている。
まだ、何かがいる。
その気配はあるのに、見通せない。
「この感じは、アレだなあ」
いやな予感しかしない、とルディランズがぼやいている間にも、戦況は動いている。
鳥や虫など、それほど大型にはならないものだ。
それらのモンスターは、次々と迎撃されていく。
「さすがに、討伐専門の『紅炎遊撃隊』。軍勢規模でも強いわねー」
ジェシカの感嘆が示す通り、戦況は冒険者優位で進んでいる。
魔王の軍勢より、冒険者の方が明らかに数が少ないが、損耗は冒険者の方が軽微だ。
軽微、というか、ほとんどない。
岩壁と大楯による簡易の壁と壕を作ってからは、戦闘する部隊と休憩する部隊とに分けて、ローテーションで戦闘する余裕まで見せている。
「うーん。安定感すごいなあ・・・・・・」
「ノウハウがあるってのは強いね。さすがに」
危なげなく魔王の軍勢は減っている。
後方の拠点を作った準備も、これならいらなかったのではないか、とすら思えるほどだ。
「油断するな。まだまだ続く」
本陣で言い合っている『虹の飛島』の面々だが、ジェイソンはそんな雑談をたしなめる。
「油断はしてないとも」
「とはいえ、このまま待機しているのも、暇ではあるけどねー」
アガットは、真面目にうなづくものの、ジェシカはくすくすと笑っている。
もっとも、気を抜いているように見えても、ジェシカは本陣の迎撃を抜けてきた鳥型のモンスターを、足元から拾った石を視線もやらずに投げつけて迎撃している。
「ルディランズ。どう? 何か変わった?」
「・・・・・・変わっていない。たぶん、まだ一割も吐き出していないな」
戦闘が始まったのは、朝。
すでに日は中天を越えているが、魔王の軍勢が出現する勢いは衰えない。
「場合によっては、一回俺たちが当たって敵の勢いをそいで、前線を下げる必要もあるかもな」
「どうかしら。『遊撃隊』なら、三日か四日は、この戦線維持できるでしょ」
「できるから、といって、やらせていいものか。『紅炎遊撃隊』は、軍勢に対する主力だぞ。まだ敵の全戦力が見えていない段階で、消耗するのはきついかも、だ」
「そういう判断は、ジェイソンさんに任せておけばいい。それより、ルディランズは戦況の把握を優先。俺たちは、本陣の守りをしつつ、後方拠点と連絡役だ。ビアンは、物資の運搬を受け持て」
「了解ッス」
ともあれ、まだまだ戦闘は続くのだ。
*****
ふん、と剣を振るい、襲い掛かってくるモンスターを両断する。
魔獣とモンスターの混合軍である魔王の軍勢。
前線で戦う『紅炎遊撃隊』の一人は、モンスターを切り捨てて、次と構える。
周囲では、仲間が背中をカバーしており、目の前の敵に集中して戦えている。
モンスターたちは、連携というものをあまり考えない。
魔王の軍勢は、指揮をされているから簡単な連携を取ってくる、というが、魔王が前線に出てきていないからか、その攻撃は散発的、と言ってよかった。
ただ、近くにいる冒険者に向かってくるだけ、と簡単な相手である。
「ふ!」
また一体。
鋭く振りぬかれた剣は、たやすくモンスターを両断する。
冒険者は、ライセンスカードからバフを受ける。
そのバフは、レベルが高くなればなるほどに強くなる。
また、アーツやスキルを得ることも可能だ。
「は!」
剣が燐光をまとい、威力を増した斬撃で、一回転。
周囲をかこっていたモンスターが、次々と切り伏せられる。
「スイッチ!!」
声を聴いて、後ろへと下がる。
すると、今度は槍を構えた仲間が、今までいた位置に入り込み、
「やあ!!」
掛け声とともに放たれた突きは、槍先が分裂でもしたかのような乱れ突きとなり、モンスターの群れを押し返した。
戦場のあちこちで、似たような光景が繰り返されている。
ライセンスから手に入れられるアーツやスキルは、発動に体力や魔力を消耗するものもあるが、その分だけ強力だ。
非力な人間が、強大な敵と戦うために編み出した技術である。
まだ、戦闘は続いている。
・アーツとスキル
ライセンスによるバフで得ることができる技能。
アーツは技、スキルは能力という分類。
試練迷宮をどう攻略しているかや、持っている技能、努力の種類などによって、取得できるものは変わる。
なお、どちらもライセンスのバフに頼らずとも、訓練などで得ることもでき、ライセンスで得るよりもそうした努力で得た方が、能力の質は高い場合が多い。
アーツなどは、ライセンスで取得した後、それを元に訓練して自分のものとして習得する、というのが、冒険者としては一般的な流れ。
------------------------------------------------------------------
評価などいただけると励みになります。
よろしくお願いします。
別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




