表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/197

魔王の軍勢(1)

 結界に穴が開く。

 そのタイミングならば、ルディランズの『眼』は、見通せるだけのすべてを見通す。


 はずだった。


「・・・・・・ざけんな」


 だが、そのルディランズの視界は、その大部分が歪んでいる。

 何かの影響を受けていることは明白だ。

 悪酔いしそうな視界に集中し、歪んでいる像から少しでも情報を取ろうと目を凝らす。


「出てくるぞ」


 結界に開いた穴をにらんでいたジェイソンが、腕を上げる。

 じわり、と結界の穴が揺らいだ。


「手筈通りに、最初は『紅炎遊撃隊』で、魔王軍の対処に当たる。総員、構えよ」


 それぞれがにらむ先、結界の穴から、まるで堤が決壊したかのように、魔獣やモンスターの群れがあふれだす。

 軍勢を構成するものの種類は、様々だ。

 魔獣やモンスターは、野生で生きているものが、魔王の気配に惹かれて集まってきたのだろう。


「かかれい!!」


 号令とともに、双方の軍勢はぶつかり合った。



*****



 軍勢を含め、ルディランズは視界にとらえ、すべてを見る。


「・・・・・・ジェイソンさん」

「うむ?」

「主力は温存しろ。まだまだ次が来るぞ」

「数は?」

「見えない。・・・・・・だが、いろいろ出てきてるってのに、内部の圧力が減ってない。・・・・・・まだまだ来る、どころの話じゃないな」


 ルディランズは、目を凝らす。

 そして、違和感の正体を探る。


「・・・・・・妙だ」

「どうした?」

「このあたりに生息報告のないモンスターが含まれている」

「・・・・・・魔王に、寄せられたか?」


 ジェイソンの推測は、的外れではない。

 魔王には、周囲の魔獣やモンスターを支配するだけではなく、引き寄せる力がある。

 また、強大になった魔王には、モンスターを発生させる力もある。

 だが、ルディランズは、それは違うと直感した。


「ジェシカ。アガット。いつでも出られるように準備。まだなんかあるぞ」

「はいはーい」

「こちらはいつでも」


 二人は、ルディランズの声にうなづいた。



*****



 かかれかかれ、と冒険者たちは叫ぶ。

 魔王の軍勢は、多種多様だ。


 先頭に突っ込んでくるのは、巨体と突進力がある、牛や猪のようなモンスターの群れである。

 壁のように突っ込んでくるそれらの前に、冒険者たちは身長より高い大楯を立てて壁を作る。


「起動!!」


 壁となった大楯の表面に刻まれた魔術陣が光を放つ。

 瞬間、大楯の表面に沿うように、岩壁がつきあがった。

 その岩壁を後ろから支えるように、大楯を沿え、さらに体で支える。


 轟音と衝撃が、大楯の向こうから響く。


「魔術、放て!!」


 ジェイソンの号令が響く。

 後衛に控えた魔術師たちが詠唱した魔術が、大楯の向こうへと着弾した。


 第一陣の巨獣たち。

 それをしのいだところで、次に来るのは小型である。

 鋭い牙を持つげっ歯類や、蝙蝠などの飛行も可能なタイプに、蛇などのモンスターだ。

 それらは、大楯の作る岩壁を乗り越え、冒険者たちに襲い掛かる。


 だが、障害を乗り越えようとするモンスターは、大楯を支える前衛を後ろから守る冒険者たちによって迎撃される。

 いかにモンスターの数が多くとも、所詮は小型である。

 鍛えられた『紅炎遊撃隊』のメンバーからすると、多少数が多いくらいは、なんなく迎撃できる。


 その間に、大楯の岩壁へと体当たりをし続ける巨獣たちと、そこに降り注ぐ魔術の攻撃は続く。

 大楯による岩壁の固定が十分、となったところで、大楯を支えていた冒険者はその場を離脱し、乗り越えてくるモンスターの迎撃に移る。


 その間にも、戦況は移っていく。


 岩壁創成の魔術を仕込まれた大楯を持った冒険者が、二陣、三陣、と続き、一列目の岩壁の後ろに、二列目、三列目と岩壁を作りながら後退していく。

 魔王軍は、それらの岩壁を乗り越えるために動きが鈍り、そこを魔術や弓などで狙い撃ちにされていく。


 そうして、陣形が出来上がる。


「さすがよね。モンスター相手に、きっちり陣形決めていくんだから」

「ああいうの。有効なんだなあ・・・・・・」


 ジェシカとアガットは、それらの動きを見て、感嘆の声を上げた。

 人間相手の軍勢だと、なかなか使えない戦術だが、モンスター相手なら、いくらか効く。


「なんかコツあるのかね?」

「岩壁は、大楯の表面に沿うように作られる。向こう側に傾けることがコツだな」

「なんで?」

「返しがある分乗り越えづらく、乗り越えてきたものは後ろから狙いやすいからだ」


 モンスターというのは、基本的に猪突猛進である。

 策略を使う人間と違い、そういう意味では行動が読みやすい。

 ただし、素の能力が高いために、壁なんかはすぐに乗り越えてくる。

 こちらが策略を練っても、力業で覆されることがある。

 加えて、


「魔王が指揮している。ただ愚直に乗り越えるだけってこともないだろうな」


 言っている間に、


「下と上」


 鳥型の魔獣やモンスターが、上空から冒険者を狙う。

 そして足元からは、地中を掘り進んだ虫などの魔獣がはい出してくる。


「まだまだ続くな」


 ジェイソンは、指揮のために声を張り上げるのだった。

・モンスター

異界で発生する、新しい生命。

異形であることもあるが、大体は何かしらの生物の形を模している。

生物型のモンスターなら、繁殖をして野生化することもある。

基本的には、敵対者を見つけるとまっすぐにそちらに向かい、理性や知性、といったものは感じられない。

ただ、そのターゲットの選択方法には一定の法則があるようで、それらを計算して戦闘中の行動を決めるヘイトコントロールは、冒険者ならば必須技能である。



------------------------------------------------------------------

評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ