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対魔王、戦い前(2)

 都市間をつなぐ街道は、都市を守るのと同様の結界によって、異界が近くに発生しないように守られている。

 とはいえ、壁があるわけではないからモンスターが出没する、というのは、よくある。

 ちなみに、この世界では、相当気合入ってないと、山賊なり盗賊なり、というのはやってられない。


 冒険者が元気なこの世界。

 盗賊なり山賊なりへの対処は、協会が発布するクエストの中では高報酬、高評価の美味しいクエストである。

 つまり、張り出された瞬間に、早い者勝ちで冒険者が狩りに行く。

 それで発生する度重なる冒険者の襲撃を防いだところで、それを防げるほどの規模を持つ盗賊団、となれば、国軍が動く。

 そんな状態で、盗賊を維持できるわけもない。

 被害がなくなるわけではないが、少なくとも盗賊が頻繁に出るので危険な地域、というのは存在しない。


「まあ、こんだけ大勢の冒険者を襲うようなのは、賊にもモンスターにもいねえだろうが」

「はい」


 馬車の荷台で、ルディランズはブレアを見てそんなことを説明していた。

 この手の、都市間の街道事情などは、他都市まで移動経験があるような冒険者だと常識の範囲だが、都市間を移動しないような冒険者だと、知らないものも多い。

 少なくとも、冒険者の経験の少ないブレアは、割とものを知らない部類だ。


「ていうか、行きの馬車で冒険者の先導教育かよ」


 苦笑を浮かべながら、からかい混じりの言葉を投げかけるのは、バルカハルだ。

 『虹の飛島』の古参メンバー。

 竜退治の後、『虹の飛島』に参加した、大柄な虎獣人の拳士である。

 黄色みのある茶色と黒色の毛をした、いい年したおっさんだ。

 ただ、筋肉質な肉体は頑強だし、その格闘術は攻撃力もある。

 両腕に装備した篭手代わりの盾で、パーティーの盾役もこなせるという、頼りになる前衛だ。

 冒険者歴も長いため、若いものが多い『虹の飛島』では、その経験から年長者として頼りにされている。

 『虹の飛島』のリーダーはジェシカ、運営の中心となっているのはアガットだが、ビアン以下、最近入ったメンバーの指導などもよく引き受ける面倒見のいいおっさんである。


「暇だし」

「武器でも磨いてろ」

「だから、武器の手入れ中?」


 ブレアを指さし、ルディランズはくくく、と笑う。

 ルディランズは、ブレアを使い魔にしている。

 魔術師にとって、使い魔の使い道は一つではないが、ルディランズはブレアを戦闘で使えるようにするつもりだ。


「使い魔にしたんだったか」

「ブレアは、俺にとって外付けの魔術発動器官にするつもりで使い魔にしたんで」

「・・・・・・人権あるのか?」

「心配しなくても、ジェシカが怒るようなことはしないさ」


 怒ると怖いし、とルディランズは笑う。

 ルディランズ達が乗っている馬車に乗っているのは、ルディランズ、ブレアと、『虹の飛島』の第四部隊の面々だ。


「ていうかよ? ビアンは大丈夫かー」

「・・・・・・うス」

「・・・・・・うん。大丈夫じゃないな」


 いまだがちがちだ。

 馬車の隅っこに膝を抱えてうずくまっている。

 それを、メンバーの一人、ローゼリッテがぽんぽん、と背中をさすっている。

 ビアンの方の上には、白くて丸いふわふわした獣がいて、しっぽでべしべしとビアンの頭をたたいている。


「リッテ。リリクは何やってるんだ?」

「たぶん、ビアンがいつもの調子を出さないから、頭がおかしくなったと思って、直そうとしているんじゃないかと」


 ローゼリッテは、テイマーだ。

 まだ十三になったばかりの、幼い子供ではある。

 パートナーとなっているリリクは、神獣であり、他者を回復させる力がある。

 しろくてもふもふなので、『虹の飛島』のメンバーにはかわいがられている。


「ビアン。そこまで自信ないか?」

「うス」


 元気のない返事が返ってきて、ルディランズは肩をすくめる。


「うん。あれはだめだな。あとで馬車から突き落とすか」

「荒療治だな」

「現場に連れてけば回復するとは思うけど、他のやつらに不安がられても面倒だしなあ」

「大丈夫だろう?」


 ルディランズとバルガハルがどうしたものか、と顔を見合わせたところに、そんな声がかかる。

 リヴィルディナス・ディナ・ミストラ。

 リナスと呼ばれる男は、第四部隊の斥候職。

 もともとはバルガハルとパーティーを組んでいて、バルガハルと一緒に『虹の飛島』に所属した男である。

 気楽な調子で、リナスはビアンを見ている。


「現場じゃあ、ジェイソンさんが一番上の指揮を執るんだ。ビアンがふがいなくても、作戦には影響ないだろうさ」

「ジェイソンさんに、迷惑かけたくないけどなあ」


 がしがし、と頭をかく。


「ビアン。お前、なんでそこまで不安なん?」

「だって、普段の第四部隊の指揮だって、バルガさんとリナスさんに助けられて何とかなってるのに、今回は、お二人いなくて、リーダーとアガットさんとルディランズさんもいない、残りのメンバー全員指揮取れとか、無謀っスよー」

「そうか? 大丈夫大丈夫、お前ならできるできる」

「なんでそんな無茶言うっスかー!」


 ルディランズの適当な慰めと、ぎゃあぎゃあ言い返すビアン。

 そうしている間に、残った一人、ヴィッヘルがビアンに近づいていく。


「リッテ」

「ん?」


 違った。

 近づいた先は、ローゼリッテであり、その脇に手を入れて抱えると、ビアンから引き離す。

 リリクもつまんで、ローゼリッテに抱かせると、ビアンの背中側の襟をつかみ、


「難しいこと考えてないで、走れ」 


 ぽい、と馬車の外に投げ飛ばした。


「あ」


 ぽかん、とそれを見送った直後に、外でどしん、と音がしたと思ったら、後方から、


「誰か落ちたぞー!」


 と悲鳴が上がる。


「あー・・・・・・」


 どうなったかな、と外をうかがったところで、


「こらあ! ヴィッヘル。いきなり何するっスか!?」

「うざい。どうせやらなきゃいけないんだし、心配するだけ無駄だ」

「ひでえっス!」


 ヴィッヘルにぎゃあぎゃあわめきながらとびかかるビアンと、リリクを抱いたまま、のんびりと眺めているローゼリッテ。

 同期三人の様子を見て、


「ま、大丈夫か」

「そうだな」


 ルディランズとバルガハルは、うなづき合うのだった。

・使い魔

魔術師にとって、使い魔が意味するものの範囲は広い。

動物などに魔術をかけて、思い通りに動かす、という簡単なものから、五感を接続しての偵察などへの利用、あるいは、魔術的な媒体としての利用に、強化をかけて護衛に使う、など、多岐にわたる。

使うものも、動物であったり、人形であったり、ただの器物であったり、と魔術をかけられればなんでもあり。

ただ、魔術の性質上、使い魔は主である魔術師と魔術的に何かしらのつながりを持つことになるため、下手な使い方をすると弱点を増やすことにもなりかねない。

ルディランズは、ブレアを前衛ができ、魔術的にも媒体として使用可能な使い魔、とするつもりなので、かなり複雑な魔術を使っており、その分ブレアに対する言動などの縛りはほとんどない。



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よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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