試合後(3)
試合後の交流は、ルディランズとノノの試合だけではない。
ジェイソンと勇者ベイナスも会話をして情報交換をしているし、試合を観戦していた者同士で意見の交換をしているものも多い。
会議の参加者は絞っていたとはいっても、聖遣隊とアビロア三大ギルドの一つが参加するクエストの作戦会議だ。
その内容を知りたいものは多いだろうし、『紅炎遊撃隊』は大規模クエストの前には、冒険者の増援を募ることもある。
その場合、危険度に対して割のいい依頼であることが多いため、それを狙った冒険者が集まっていた、というのもある。
それらの冒険者が、二人の試合を見て、自分たちも、と試合を始めているところもある。
この場を見に来ている者たちへのアピール、というのもあるのだろう。
「さて」
ルディランズとジェシカ、『虹の飛島』から来ているのは、二人だけだ。
アガット達は、今日は待機している。
ただ、先ほどの魔術の試合を見たからか、ルディランズに話しかけたそうな魔術職の冒険者が数名見える。
ルディランズは、話しかけてこないものは無視して、ジェシカに声をかけた。
「いったん、拠点に戻らないか? 会議で決まったことを、メンバーに共有する必要があるだろう」
「そうね。ジェイソンさんに話をして、一度戻りましょうか」
二人の会話を聞いたノノは、何か言おうとして、だが口を閉ざす。
それから、口を開いた。
「まあ、そうね。明日には出るから、準備時間少ないし」
「それな」
ノノの言葉に、ルディランズもうなづく。
正直な話をすると、準備時間は短い。
補給物資などは、普段からそういう準備をしている『紅炎遊撃隊』に頼ることになる。
そうなると、自分たちの武装の整備が問題だ。
一応、整備はさせているが、ちょっと時間がぎりぎりかもしれない。
「今回は、正直俺とジェシカで出るつもりだったからなあ。・・・・・・あの作戦で行くなら、アガットにも来てもらわんと」
「他のメンバーどうしようかしら?」
「出られるやつは全員来てもらおう。バルガとリナスとミリディアは確定だな。他は、来れるやつは呼んで、そうだな、どうせだからビアンに指揮を取らせよう」
「・・・・・・いきなりねえ・・・・・・」
ジェシカは少し考えたが、最終的にうなづいた。
「ま、ジェイソンさんがいる本陣に預けるんだし、問題ないか」
「そういうことだな」
それから、ルディランズとジェシカは、ジェイソンに挨拶してから、協会支部の地下から出て行った。
*****
「・・・・・・ふう」
夜。
作戦前夜となったその日、聖遣隊が取っていた宿の一室で、薬湯を口にして、ノノはふう、と息を吐いた。
そうしていたところで、こんこん、と扉がノックされる。
「どうぞ。開いてるから」
「失礼しますね」
入ってきたのは、ユリアだった。
「あらユリア。珍し。ヴォーとよろしくやってんじゃないの?」
「下品ですよ。ノノ。それと、作戦前夜の大事な時にそんなことしませんよ。ヴォーは」
「そうね。あいつ真面目だし」
「何事にも真剣に当たるので、かっこういいですわよね」
「はいはい。のろけのろけ」
ふふふ、と頬に手を当て笑うユリアに、はあ、とため息を返す。
ユリアに対面の椅子をすすめ、薬湯を入れるのに使った白湯を、カップに入れて出してやる。
小さく礼を言い、ふう、と息を吐きかけてから一口をつけ、ほう、と息を吐く。
清楚ながら色気の漂う仕草に、ノノは、ふん、と鼻を鳴らした。
「で? 何の用?」
「まだ起きているようでしたから。早く寝ないと、明日に響きませんか?」
「大丈夫よ」
ノノは、飲んでいた薬湯のカップをゆらゆらと揺らして見せる。
「これと瞑想で、明日のパフォーマンス上げてるところだから。今の状態なら、むしろ徹夜した方が、明日のパフォーマンスは上がるわ」
「そうなのですか? 魔術師は、不思議なことをしますのね」
「そういう方法もあるってだけ。・・・・・・まあ、ちょっとしたブーストだから、終わった後で負荷かかるけど」
「あら。・・・・・・それだけ、明日は真剣だということですか」
いつもはやらない、というのは、ユリアも知っているからだろう。
実際、やり終わった後の負荷は、丸一日寝込んでしまうほどのものとなるため、できれば避けたいものではある。
だが、今回は、やっておきたいと思った。
「ま、明日、みっともないところは見せられないから」
「あの、魔術師さん。・・・・・・ルディランズさんとおっしゃいましたか」
「そうね」
「結構、気にされているのですわね」
「・・・・・・・・・・・・」
覗き込むように見られて、そこでノノは、ユリアの口調がどこか面白がっている、というか、興味本位のそれになっていることに気づく。
どうやら、色恋沙汰の気配を感じて、わざわざこの時間に来たらしい。
この聖女様は、やはりどこか俗っぽいところがある。
「それが聞きたくて来たの?」
「決して、それだけではありませんわよ?」
「本当に?」
「貴女が、気負いすぎないか、ということも、心配ですもの」
「・・・・・・そうね」
一口、薬湯を飲む。
少し粘性のある、ぴりっとした辛味と、わずかな苦み。
それを飲み下して、ノノは、ふう、と息を吐いた。
それから、顔を上げて、ユリアを見る。
自然と、口の端が上がっている自覚があった。
「大丈夫。失敗はしないから」
「そうですか? まあ、ノノなら大丈夫でしょうけれど」
ノノの顔を見て、ふふふ、とユリアは笑う。
見透かしたような笑いを見て、ノノは照れを感じて目を伏せた。
・援軍要請
クエストを協会から受注した際、クエストをこなすのに自分の仲間の戦力が足りない場合に、他の冒険者の手を借りることができる。
この援軍要請による受注は、協会からの補助が入るため、通常より報酬がおいしく、場合によっては星が手に入ることもあり、冒険者からの人気が高い。
特に、大手ギルドが発布する要請の場合、ともにクエストに挑む本隊の実力も高いため、安全性も高いとあって、耳の早い冒険者などは、援軍要請が発布されそうな時には、協会支部に集まってくる。
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別のも書いてます
『竜殺しの国の異邦人』
https://ncode.syosetu.com/n0793he/




