素材集め(3)
木箱を抱えたまま歩くのかと思いきや、ルディランズは木箱を仕舞ってしまう。
「ストレージですか?」
「アイテムボックス」
はあ、とブレアは、頷く。
ストレージは魔術だ。
カバンであったり、あるいは箱であったり、という収納に付与するタイプの魔術で、入れ物の内部の空間を拡張し、入る量を増やす魔術だ。
ただ、質量そのものは変化しない上、単純に内部を大きくしただけだから、中に入ったものは時間経過とともに劣化する。
入れ物自体に、重力軽減の魔術をかけたりすることで、うまく運用することが多い。
小さくて効力の弱いものなら、簡単に付与できるため、冒険者には広く使われている。
もう一つ、アイテムボックス。
こちらは、道具である。
異界を攻略した際に取得できる、異界核。
それを道具として加工したものだ。
内部にほぼ無制限にものを入れることができ、内部での時間経過による劣化も発生しない。
生物も入れることができるが、人間を入れられるような品は作成を禁止されており、所持しているだけで捕まる。
当然ながら、アイテムボックスの方がはるかに高価だ。
「すごいですね」
「拠点に置いてあるんだよ。拠点の共有ボックスにしてある」
『虹の飛島』は、今までに四か所の異界を攻略している。
そのすべてで異界核を回収しているが、その内の一つは、協会に売却している。
一つは、『虹の飛島』共有のアイテムボックスとして、拠点に据え付けられている。
一つは、『虹の飛島』の拠点管理用の魔術の核として、使用されている。
「実は一個、使い道をどうするか決まってなくて余ってる」
「? では、今ご主人様がやっているのは・・・・・・」
ルディランズは、先ほどから市場を冷やかしては、買ったものがあればアイテムボックスへと放り込んでいる。
アイテムボックスが拠点にあるなら、ここは持ち運ばないといけないはずだが、
「ちょっと裏技的に?」
ルディランズが見せたのは、左腕にはめた腕輪だ。
「この腕輪は、拠点に置いてあるアイテムボックスとつながっててな。ものの出し入れはこれでできるように作ってあるのさ」
拠点に置かれているアイテムボックスは、地下に埋められて、通常の手段では物理的に触れることはできない。
そこにアクセスするための端末として、魔術具の腕輪が用意され、配られている。
クランマークでアクセスできる仕様なので、クラン員以外には使えない腕輪だ。
「とはいえ、距離があると安定して接続できないこともあるし、ストレージの方が使い勝手いいことも多いけどな」
アイテムボックスに限ったことではないが、魔術を使って作る道具は、サイズが小さくなるほど安定しなくなる。
作成に高い技術力が必要になるのだ。
アイテムボックスなら、確実に運用するには、一部屋分くらいの大きさは欲しい。
ルディランズは、思いだしたように腕輪を取り出し、ブレアに差し出す。
「ほれ、こっちはブレアの分。はめとけ」
受け取って、左腕に通す。
それで、大きさは自動で調節されて、いい具合になる。
そっと表面を撫でると、
「中身は、空ですか?」
「基本的に、持ち主ごとに個別の空間を設定してある。自分の空間の中のものは、自分にしか取り出せないし、他の誰かの空間へ接続するのも無理」
この辺りの調整は、アイテムボックスを作成した時に、作った仕様だ。
作った消耗品類を分配するために、それぞれの空間にk別
ルディランズは、作成時にかなり注文を出したため、詳しい、というか、自慢げだ。
「さて、次行くぞ次」
「次はどこへ?」
「拠点に戻る。・・・・・・ちょっと素材もらわんとなあ」
「?」
ブレアは、ルディランズが何をしようとしているのかがわからない。
素材、ということは、何かを作ろうとしているのだと思うが、
「何をしたいんですか?」
「ブレア用の武装を作るのが目的だなー」
「武装」
「ちなみに、得意なもの何よ?」
「・・・・・・分かりません」
「うん。知ってた」
ほとんど新人と大差ない程度の経験しか積んでいないであろうブレアに、特異な獲物など分からないだろう、というのは、察せられる。
化生術をきちんと使えているところからして、技術がまったくない、とは思えないのだが。
「そこらも含めて、拠点でやるか」
「?」
結局、ブレアは首を傾げるしかないのだった。
・化生術
獣人系の人間が持つ、体質的な魔術体系。
自らの体を人間の体と獣の体の双方へと変化させることができる。
何の獣になるのかは、遺伝にも左右されず、かなり個人差が大きい。
子どものころから何度も人間の姿と獣の姿を行き来している間に、自然と加減を覚えていき、自分にとって過ごしやすい姿を自然と取るようになる。
身体強化系の魔術と魔力の運用法が似ているため、獣人系の人間は、自然と身体強化が得意になる。




