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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
122/206

122 精霊の生みの親と同盟の話

アドル達との情報交換を兼ねた夕食会にて、アフロが『火の精霊は他の精霊の生みの親ではないか』と言い出した。

意味がよく分からないわたし達は沈黙し、ディーネは思慮の海に沈んだように固まってしまい、会議室は静まり返った。

その時、会議室の扉がノックされ、扉を開けてノーラが入ってきた。

ノーラは念のために会議室の外で警備をしてくれていたのだが、外で何か起こったのだろうか。

異様な会議室の雰囲気にノーラは怪訝そうな顔をしたが、カークに用件を話すように促されると、ノーラはライオット領から船が到着したことを告げた。


アドルとエスカ、そしてディーネもライオット領から皆と一緒に船で帰って来たが、わたしを心配していたアドル達はニューロックの近くまで来た所でラプターに乗り、一足先にニューロックに来てくれていた。

そしてようやく船も無事に到着したという知らせに、皆も安堵した。


「では夕食会はここまでにして、エリザ達が館に到着したらここで情報交換の続きをしよう。スポーク、すまないがエリザ達と、ライオット領の船のクルー達のために軽食を手配してくれ」

「かしこまりました」


カークの号令で一旦お開きとなり、わたしはアフロとディーネを連れて自室に戻った。


「ねえ、アフロちゃん。さっきの精霊の親の話なのだけれども、詳しく教えてくれる?」

「ワタシも詳しく知っているわけじゃないのよ

。わかる範囲と、推測だけどね・・・」


それは精霊の誕生の話だった。

はるか昔、世界の理を深く知り、様々な技術を生み出した先人達によって原初の精霊が作られたという。

精霊は世界を構成する物質の根幹であり、生命の源であり、力を魔力に転換できる存在としてこの世に具現化された。

そして先人によって知識を与えられ、精霊は先人に支配された。

無限とも思える魔力を自在に使えるようになった先人達はさらに高度な文明を築いたが、魔力の誤った使い方と人同士の争いによって衰退したという。


「その話は前にアキム様から聞いたことがあるわね。それで生き残った人達は元の星を捨てて、新たに作ったこの星に来たのよね。で、先人さん達がこの星を作った時に、星を維持するための精霊も同時に生み出したと言ってたのを思い出したわ」

「そうね。ユリも知ってのとおり、この星は無駄に高度な魔術で無駄に魔力を使って作られた星よ」

「・・・身も蓋も無い言い方だけど、わたしもそう思うわ」

「そしてこの星を維持するためにワタシ達がいる」


この星は精霊の力で維持されている。

かつてはこの星の王が精霊を支配し、星を維持するための使役の魔術を行使していたが、現在の王であるバルゴは王位簒奪の際に『使役の魔道具』を失ったため、精霊を使役することができない。

そのためにバルゴは精霊の支配を狙っているのだ。


少なくともディーネとサラは自らの意思で星を維持するための魔力を提供しているが、それが星の維持のために必要な魔力量に足りているのかは分からない。


「で、精霊の生み出し方の話に戻るけどね。先人は何かしらの方法で、大元の精霊から分離して複数の精霊を作ったらしいのよ」

「つまり、それがアフロちゃん達?」

「そういうこと。つまり大元の精霊が親、ワタシ達は子という事ね」


精霊から精霊の分身を作り出したということか。

ゼロから作り出すよりかは楽そうではある。


「アフロちゃんよ。つまり、そういうことなのじゃな」

「ディーネ。その通りよ」

「ちょっとお二人さん。わたしだけ、置いてけぼりなんだけど・・・」


そう言うとアフロはわたしを見て、はあ、とため息をついた。

なんで分からないのか、という顔をしているようにみえる。


「な、何よその、残念そうな顔は・・・。じゃあわたしの推測を言うわよ。つまり、火の精霊が親だとすると、火の精霊から分離してディーネちゃんやアフロちゃんが作られた、いわば子だということよね」

「うむ。その通りじゃ」

「で、例えば、火の精霊の元の力を十だとして、アフロちゃんやディーネちゃんやサラちゃん、それに光と闇の精霊を生み出した時に力を一ずつ放出したとすると、火の精霊の力はまだ五くらいは残っている。火の精霊の力が五であることに対して、ディーネちゃんの力は一しかない。力の差が歴然なのはそういう事だという話よね?」

「ユリの言う通りよ。今の例え話では日の精霊の力を十としたけれども、もしも火の精霊の元の力が二十や三十だとしたら、それこそ全く歯がたたないわね」


うーむ、確かに・・・

現状ではこちらがわたしと三人、もとい三精霊がかりでもいい勝負ができるかどうか怪しいぞと。

せめてアキム様がいてくれれば、こういう局面を打破するために何か知恵を授けてくれそうなものなのに・・・


今更ながら失ったものの偉大さを痛感する。

しかし火の精霊が仮にそれほど強大な力を持っているのならば、やはりわたしを殺しに来るのにそれほど障害がないように思える。

先日もなぜ途中で消えてしまったのか。

消えなければいけなかったのか。


・・・自由に動けないとか?

何か制約のようなもので縛られているのかな。


「もしも火の精霊が強いとしても、現状、火の精霊にはまだわたし達が知らない秘密や制約のようなものがある気がするの。勝機があるとすればそこじゃないかしら」

「そうね、そういえばサラは初代王と接点があったのでしょう?なにか情報を持っているかもしれないわね」

「アフロちゃん、アキム様の事、よく知ってたわね。わたしそんな話したっけ?」

「ユリの記憶で知ったわよ」

「ぐぬぬ・・・」


わたしの記憶を持っているアフロちゃん・・・

いつわたしの黒歴史を持ち出されるかわからないので油断できない。


「アフロちゃんはユリの記憶をそのまま持っているのじゃな。であれば、ユリが若い頃に魔力を放出するための修行をしている様子を探してみると良いのじゃ。この星に来る前からユリは研鑽を積んでおったのじゃ」

「それは興味深いわね・・・なるほど、この『マンガ』という物語に出てくる男の修行を真似ているようね。この強そうな男を異世界から召喚したほうが良くないかしら?」

「だー!それは架空の話だからそんな人は実在しないの!それとディーネちゃん、余計な事を言わないで!」


わたしの黒歴史を知る伏兵、ここにもいたよ・・・


わたしが膝を抱えてプルプルしていると、部屋にアドルがやってきて、エリザ達が館に到着したことを告げた。



「ユリ、無事だと聞いてはいたけど、本当に無事で良かったわ」

「ああ、見るまで安心できないからな。無事で何よりだよ」

「エリザさんとホークスさんもですよ。船が沈んだ時は本当に心配したんですから」


会議室には既にエリザとホークス、そしてサラが待っていた。

わたし自身もエリザ達に会うまで心から安心できずにいたので、無事に再会できたことに安堵した。


「サラちゃん、みんなの護衛ありがとう!あと伝達の魔術っていうの?それで連絡してくれてありがとうね!」

「べっ別にユリのためじゃないんだからね!」

「あとでわたしにも伝達の魔術、教えてくれない?」

「いいわよ。ユリならすぐに習得できると思うわ」


わたし達が久しぶりの再会で盛り上がっていると、カーク達が遅れて会議室にやってきた。

入ってきたのはカークとその側近達、そして・・・ジェイスさん!?


「え?ジェイスさん?船でご一緒されたのですか?」

「やあユリ殿。久しぶりだね。なにやら大変だったようだが、壮健で何よりだ。わたしが同行していることは聞いていなかったのかね?」

「聞いてないです・・・アドル、エスカ、なんで教えてくれなかったの?」


アドルとエスカを問い詰めると、二人はしれっと目をそらした。


「ごめん、普通に言い忘れてた」

「あたしも。あはは・・・」

「私も驚いたぞ。まさかライオットの太守が同行していたとはな。今、執務室で諸手続きを済ませてきたところだ。ロティナ嬢には別室で待ってもらっている」

「ロティナさんも来てるんですか!」


バッとジェイスを見ると、満面の笑顔で頷いた。


「せっかくなのでロティナも連れてきたんだよ。いずれ妻となる人を紹介したくてね。明日は一緒に町の様子を見せてもらう予定だ」

「はあ・・・」


どうやら新婚旅行気分で連れてきたらしい。

宣戦布告されているニューロックにジェイス自身だけではなくかわいい妻まで連れてくるなんて、神経が図太いと言うか何というか・・・


「では、皆席についてくれ。早速だが現状の共有と、今後のことについて話し合いがしたい」


カークの号令で、会議は始まった。

先日の戦闘でわたしが殺されたと全領地に告知されたこと、ニューロックは王都に宣戦布告され、約一ヶ月後に王都軍が攻めてくることから話は始まった。

ちなみにニューロック領内については、わたしは死んでいないので安心するようにと領地内放送で伝えており、実際に投影の魔道具を通してわたしの姿も見せている。

もしかしたらわたしが生きているらしいという情報は他領に流れているかもしれないが、きっと偽物程度に思われているだろう。


「ジェイス殿。この情勢下でライオット領が王都に反旗を翻して独立することはお勧めできない。しばし待ってはどうか」

「カーク殿。私としてはニューロックと友誼を結ぶ事に何の躊躇いもない。現にユリ殿も健在だ。ライオット領の領民達も同様に思っているだろう」

「ジェイス殿の申し入れがありがたいことは確かなのだが、私の策を聞いて欲しい」

「策?」


カーク曰く、今独立すれば、ライオット領もニューロックと同様に王都軍に宣戦布告されて戦になることが目に見えている。

それにわたしが死んだと思われている以上、王都軍はニューロックとライオットにむけて二正面作戦を取るかもしれない。

そうなった場合、両方の領地を同時に守ることができない。

そのため、しばらくは独立せずに様子をうかがって欲しいとの事だ。


「カーク殿。我がライオットの心配をしてくれるのはありがたいが、やはりこれから友誼を結ぼうというのに、それではあまりに情けないではないか」

「いや、ジェイス殿には、いざ戦になった時にこそ狼煙を上げてほしいのです」

「・・・王都軍を挟撃するのですかな?」

「いかにも。その時こそご協力いただきたい。作戦については後で詰めましょう。現在、国外にはユリ殿が健在であることについての明言を控えております。ライオット領の対外向けの立ち位置もしばらくは現状のままでいて欲しい。そして非公式的に、ニューロックと協力関係を結ばせて欲しい。ニューロックで開発した武器など、技術提供をするので、一ヶ月後までに準備を進めておいていただけると助かる」

「短いですな・・・しかしできる限りの事はさせていただきましょう」


これは観光している余裕なんて無いな、とぼやくのが聞こえたが、聞かなかったことにしよう。

こうして、ニューロックとライオットの間で、非公式ながら同盟が結ばれた。


話が一段落したところで、ジェイスがわたしに話を振ってきた。


「ところでユリ殿。私は船の中で、サラ様からいろいろな話を聞かせていただきました」

「サラちゃんからですか?」

「はい。聞けばサラ様は風の精霊であるとか。見た目からは想像もつきませんでしたよ」


いえ、無理もないです。

一体誰がカピバラを見て、それが風の精霊だと信じてくれるでしょう・・・


「火の精霊はたいそう強かったと伺っております。そして対抗する手段を検討しなければならないと」

「はい、その通りです。ついさっきも、その、別の精霊とも話をしていたのですが、まだ案が何も浮かばなくて・・・」


・・・火の精霊対策。

今度の戦いまでに何か考えておかないと厳しいことになるかもしれないのに・・・

気持ちだけ焦ってしまう。


「そのサラ様との話を聞いていて思ったのですが、ユリ殿はまだ光の精霊と闇の精霊には会っていないそうですね」

「ええ。積極的に探していたわけでは無いのですけど、実際、何処にいるかも分からないもので」

「もしかしたら・・・ライオット領にいらっしゃるかもしれません」

「なんですって!?」


衝撃の情報に驚いたわたしは、慌ててディーネを見てみるが、ディーネも知らなかったという感じで首をふるふる振った。

アフロは例によって腕を組み、難しい顔をしている。


すると、いつのまにかわたしの背後に来ていたサラが身を乗り出し、私に顔を近づけた。

ああ、かわいい・・・いや、今はそんな場合ではない。


「ねえ、ユリ。ためしに探しに行ってみない?」

「光の精霊と闇の精霊を?」

「そう。なんでも、ライオットには昔から精霊を奉る祭壇があるそうよ。私も知らなかったんだけどね。そこに何年か前に突然洞窟のようなものができて、おまけに強い精霊力を感じられる場所になったらしいわ」


サラが言うには、その祭壇らしい場所を、これ幸いと光の精霊もしくは闇の精霊が住み着いた可能性があるとのことだ。


「光の精霊は控えめな子だから、洞窟を作って引きこもっているのかもしれない」

「なるほどね・・・」

「昔から小難しい事ばかり言うしね。頭の良い子だからユリと話が合うかもしれないわ」

「わたしはそんなに小難しい事ばかり言わないわよ!」


・・・さっきアフロちゃんに聞いた、精霊の親子関係の話。

力が足りないのであれば、戦力を増やすしか無い。

話に乗ってみてもいいかもしれない。


「ジェイスさん。その祭壇だか洞窟だかというのは、ライオット領のどのあたりにあるのですか?」

「うむ、地図を貸していただけるか」


カークの右腕であるスポークが地図を取り出し、ジェイスの前に広げた。

何度見ても地球の世界地図そっくりである。


「このあたり、ロイドという地名だ」


ジェイスが指を指した場所は、ライオット領の東側、それも海沿いだ。

首都アコニールの真反対とも言える。

地球の地理に照らし合わせたら、ブラジルのリオデジャネイロ付近だろうか。


「ロイドで年に一度行われる祭りは実に盛大でね。私も祭りの時期には顔を出すようにしているのだよ」

「噂の『リオのカーニバル』ですか!?」

「何を言っているのかよく分からないが、『ロイドの夜祭り』という名の祭だ」

「夜祭り、いいですねえ!」


ぜひタコ焼き・・・じゃなくてユリ焼きの屋台を出したいところだ。

この名前には未だに馴染めないけれども。


「だが、ユリ殿。さすがに今から一ヶ月では間に合わないだろう。遠すぎる」

「そうですね、カークさん。普通なら無理ですね」

「普通なら?つまり、普通でないなら・・・」

「はい。わたしと精霊達だけなら、そんなに時間はかからないと思います」


そう。船なんか使わない。

ラプターも使わない。

自力で飛んでいってしまえばいい。

しかし、アドルから物言いがついた。


「ユリ、一人でなんて行かせられないよ。誰か護衛がつくべきだと思う」

「アドル・・・アドルの心配は嬉しいけれども、今回は時間がないの。もしかしたら空振りで終わるかもしれないし、みんなの時間は無駄にできない。開戦までにやることはたくさんあるでしょう?」

「しかし・・・」

「それに、わたしは対外的には死んでいるのよ。今ならわたしがニューロックを離れても危険は少ないのではないかしら?・・・いえ、むしろ行くなら今しかないと思うわ」


わたしはジェイスとカークに向き直ると、ロイド行きを宣言した。


「わたしと精霊のみんなでロイドへ行ってきます。その間、ニューロックと、ライオットの事をお願いします」


二人にお辞儀をして、承諾を待つ。


「・・・そうだな。むしろこれはニューロックのために私からお願いすることだろう。ユリ殿。ロイドへ行ってくれるか」

「はい、お任せください!」


それから今後の事をいくつか話し合い、今日の会議は終わった。

明日はジェイスとカークの間で戦についての事や技術提供の話をした後、ジェイス達はできるだけ早くライオットへ帰還することになるだろう。


わたしは自室へ戻る前にロティナに挨拶して、軽く談笑してからディーネとサラとアフロを連れて部屋に戻った。

色々あって今日は疲れたし、精霊のみんなと軽く打ち合わせだけして早く寝ることにした。


「・・・よし、打ち合わせしておく事はこんなところかな。じゃあ、みんな、明日はよろしく頼むわね。朝食後に出発するわよ」

「うむ、承知したのじゃ」

「任せなさい」

「ユリ、ワタシの真の名を受けなさい」

「うん、じゃあ今日は早く寝・・・はい!?」


アフロの意表を突く提案に眠気が吹っ飛んだ。


8/8に次話投稿予定です。


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