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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
117/206

117 攻城戦

「うふふー。かわいいなあ・・・」

「ニヤニヤしているところ悪いのじゃが、アドル達が戻ったようなのじゃ」


ロゼッタの赤ちゃんの寝顔を眺めて和んでいたが、ディーネからの報を受けてわたしは宿の外に出た。


ベルノ達の襲撃から数時間。まだ夜は明けていない。

迷惑をかけた宿の主人や他の宿泊客、町の人達に頭を下げて回ったが、皆笑って許してくれるばかりで、ついには町のご老人に『いい加減気にするなと言ってるだろう!』と怒られた。

町への被害は軽微だということもあり、わたしは宿の中で休むように勧められたのだが、色々あったせいで興奮が冷めないし眠くもならないので、ロゼッタのお子さんを眺めていたところだった。


騎馬と馬車が宿の前の大通りにやってきた。

続いて多くの兵士達も大通りに列をなして来た。

まだ薄暗いこの時間帯では最後尾が確認できないほどの大人数だった。

城にいる人達のほとんどが出てきたのではないだろうか。


やがて馬車から、アドルとエリザとサラ、そして太守とロティナが降りてきた。


「ユリ!無事で良かった!」

「うん、アドルもエリザさんも無事で良かった。それと、サラちゃん、みんなを守ってくれてありがとうね」

「べっ別に私は私ができることをしただけなのよ。感謝しなさい!」


お、久しぶりのツンデレサラちゃんだ。


「私からもお礼を言わせてもらいたい。勇者殿、感謝する」

「ありがとうございます、勇者様!」

「太守、ロティナさん・・・いえいえ。おふたりとも無事で良かったです!」


太守の姿を見た町の人達は歓声を上げて太守に喝采を送った。

ベルノと違い、太守は町の人達に人気があるようだ。

そして太守は町の人にここでなにがあったのか、しっかりと聞いてまわった。

先程のご老人はどうやら町のまとめ役でもあったようで、太守への報告の中心を担っていた。

そんな様子を微笑ましく見ていると、突如、血相を変えてエリザとアドルが迫ってきた。


「ちょっと、ユリ!」

「はい、エリザさん、何ですか?」

「町の人が言ってたけど、ユリ、あなた腕と足を斬り飛ばされたんだって?大丈夫なの!?」

「えっと、はい、この通りです」


わたしは手足をプラプラさせてみせた。


「ユリ、治癒能力があると言ってもさすがにそれは信じがたいんだけど・・・」


アドルにも怪訝な顔を向けられた。


「あー、まあ、ほら、すぐに接合して治癒をかければくっつくわけで・・・」

「オレはいきなり手足を復元させて見せたって聞いたよ。まるで生えてきたみたいに」

「え、そんなわけないよ、やだなー。結構素早く動き回っていたから、町の人にはそう見えたのかもしれないわね。夜だし、見えにくかっただろうし」

「まあ、そうだな。町の人にユリの動きが把握できるとは思えないしな」


とにかく気をつけてくれよ、とアドルに言われた。

もちろん、心配してくれてのことだって分かっている。


「ところでアドル。太守とロティナさんとこの兵士さん達は、みんな城から?」


アドルは頷くと、簡単に経緯を説明してくれた。


わたしが城から飛び出した後、アドルは太守を守りつつ、太守次官のシュクリフとその兵士と攻防を続けていた。

とにかく脱出を図らねばならなかったが太守を抱えたままでは満足に動くことが出来ず、ジリ貧だったが、突如、城内で異変が起きた。


「太守に味方する兵士が立ち上がってくれたんだ。次官側の兵士達を押さえてくれたおかげで、オレと太守、それにロティナさんや城にいた皆も脱出することが出来たんだ」

「じゃあここにいる兵士の皆さんはみんな味方なんだね」

「兵士だけじゃない。料理人や技師とか、太守寄りの人達は全員ここに来ている。城にいるのは太守次官側の者達だけだ。脱出できたといえば聞こえはいいけど、つまるところ、城はシュクリフに占拠されたというわけだ」


面目ない、とアドルは申し訳無さそうに言った。


「いや、アドル殿。其方達のお陰で皆は助かったのだ。感謝しか無い。それにロティナも救ってくれた。本当にありがとう」

「いやいや、とんでもない。そう言ってくれるとありがたいですが、本当に、力不足で申し訳ありません」

「ふむ、謝らんで良いというのに。だが、そうだな。謝罪は受け入れよう。受け入れた上で、私の弱っていた体を治癒してくれたエリザ殿の働きで帳消しにしないか?」


え?エリザさんが治癒?

あー、そういうことか・・・


エリザを見ると、エリザは『違う違う!』といわんばかりに、顔の前で掌をブンブン振って、逆の手でサラを指さしている。

おそらくサラが治癒してくれたのを、太守はエリザがやったものだと勘違いしているのだろう。

サラの正体をバラすのは後でもいいので、今はそのまま勘違いしてもらっておく事にする。


太守の言葉にアドルは頷き、太守の提案を受け入れた。

太守もアドルに頷き返すと、町の人達のほうを向いた。

その時、ちょうど朝日が差し込み始め、ライオット領は夜明けを迎えた。

今や寝ていた町の人達も起き出し、大通りにいる人数はかなり膨れ上がっている。


太守は懐からなにやら魔道具を取り出し、口元に近づけた。

魔道具は拡声器のような働きをするようで、太守の声は大通りに響き渡った。

ちなみに太守の声は、領地内の各地域になる放送ステーションのようなもので全ての地域に放送されているそうだ。


「ここに集まっている皆よ。この放送を聞いているライオットの領民よ。わたしはライオット領太守のジェイスだ。昨夜、この首都アコニールでニューロックから来た勇者が我が領地の叛徒の兵によって襲われた。かくいう私も不覚ながら陰謀によって城で監禁されていた。しかしニューロックから来た勇者達はそれらを排除し、私を救出してくれた。私はこの恩義に報いたいと思う」


町の人達や兵士達は太守の言葉を受け、大歓声を上げた。

歓声が落ち着くのを待ってから、太守が言葉を続けた。


「今、我らの敵は太守の城を占拠し、あまつさえこの領地を奪おうとしている。そして敵の背後にはエコリーパスの国王であるバルゴ王がついている。ここで皆に問う。バルゴ王は正義か!」


町の人々が各々の意見を叫んだ。

王が何をしてくれたというのか、恐怖政治などいらない、王のせいで罪のない人が貶められている、王のせいで星は滅びに向かっている・・・肯定的な意見はひとつもなかった。


「皆の言うとおりだ・・・バルゴ王は正義か。否、簒奪者である!我らはこれより敵と戦うために城を攻める。勝利した暁には、バルゴが統べる国から離反し、ニューロックと同盟を組む!」


歓声はさらに大きいものとなった。

すると太守はわたしに手招きをした。


・・・仕方ない。想像はつくけど、役目を果たしましょうか。

その前に、トレードマークを・・・


わたしは髪の毛の色を黒色に戻し、手早くポニーテールにまとめてから、太守の隣に立った。

町の人達がザワザワし始めた。


「おお、やっぱりニューロックの勇者だ」

「うん、見たことある。あの髪型は間違いない」


・・・やっぱり私は髪型が本体なのですね、分かります。


「皆よ。今、私の隣にはかのニューロックの勇者が立っている・・・勇者殿。ライオット領に来ていただいたこと、そして私を救出してくれた事に心より感謝を申し上げる。我が領はニューロックと意志を同じくすることを宣言する。勇者殿と共にこの星を正しく導くために協力させていただく。そのためにも、今一度、力を貸していただけないだろうか」


そういうと太守は拡声器の魔道具をわたしに向け、わたしの言葉を待った。

『だが、断る』というボケが思い浮かんだが、シャレにならないのでもちろんやめておく。

こういう時はストレートに、はっきりと言うべきだ。

町の人や兵士達に注目され、おまけにこの拡声器は領地中に言葉を伝えるものだと思うと余計に緊張するけれども、ここはビシッと決める!


「はい、喜んでお力添えいたします!共に戦いまちょう!」


ちょう・・・

・・・噛んだ・・・だと・・・

緊張しすぎた・・・


一瞬、町の人達がシーンとした気がしたが、その直後、今までで一番の大歓声が起こり、町の空気が、そして地面が震えた。

そしてわたしも、いちばん大事なところで噛んだ恥ずかしさで震えた。


太守が手を振り、町の人達の歓声に応えている隙に、わたしはアドル達の元へ戻った。


「ユリ・・・いい宣言だったよ。うん」

「アドル、なんで目をそらしてるのかな?」


アドルに顔を背けられながら優しい言葉をかけられ、余計に恥ずかしさが増してきた。

くっ・・・殺せ!


「いいよユリ。あんたらしいよ。印象にも残ったしね」

「エリザさんの意地悪!」


ぷーっと膨れ面をしていると、太守が演説の締めにはいっていた。


「・・・この領地を治める責任を、私は引き続き担うつもりだが、ニューロックとの友好樹立と同時に、私はもうひとつの責任を負いたいと思う。いや、責任と言うのはおこがましいが、わたしの決意と言うか、勇気というか・・・さきほど勇者殿が緊張で噛んだようだが、私も噛まないように注意して宣言したい」


太守のジョーク交じりのトークに周囲から大爆笑が起こった。


・・わたしをダシにするとは。

太守・・・あとで軽く殴る。


「私をこれまで支え、これからも共に歩んでくれることを誓ってくれたロティナと、私は結婚する!」

「おおおおおおおおおおおおお!」

「えええええええええええ!?」


聞いてないよ!

マジすか!?


町の人達の歓声はまたしても今日一番を更新した。

私も驚いたが、そんな事になっていたとは・・・

お祝いに、太守を殴るのは勘弁してあげよう。


「太守とロティナさんの結婚を成立させるためにもがんばらないとな、ユリ」

「そうだね・・・それにしても太守とロティナさんって、年齢差が結構あるような?」

「なにか問題でもあるのか?ロティナさんはもう結婚できる年齢だろ?」


この星の常識的には問題なしか・・・

でもまあ、ロティナさんも幸せそうだし、いっか。


ロティナは恥ずかしそうに、でも嬉しそうにモジモジしている。

ちょっとうらやましい。


想定外の祝福ムードも上乗せになり、町の盛り上がりはわたしたちが戦いに赴くまで続いた。



ベルノは逃げ帰った太守の城で、父である太守次官のシュクリフに勇者との戦いを説明していた。


「それで、お前はおめおめと逃げてきたというのか」

「親父、勇者の小娘は化け物だ。斬っても斬っても向かってくる。あんなのとまともにやり合っても勝てねえよ」

「ふむ・・・」


ベルノは斬られた耳を手で触りながら、戦いを振り返っていた。


「・・・親父。王の言葉を聞いてみるか?」

「いや、ベルノよ。その必要はない。既に聞いている」

「親父?」


シュクリフは既に王に状況を報告し、勇者がこの地に来ていることと、太守に逃げられたことを伝えていた。

勇者が来ていることは既にベルノが報告済みだったようだが、もしもベルノが勇者を討ち取れなかった場合には別の指示を受けていた。


「王からの勅命だ。勇者を刺し違えても討て、と」

「・・・」


刺し違える、つまり命を落とす覚悟で立ち向かえという指示だ。

以前、王はベルノに『無理して勇者を討つ必要はない』と言った。

それが一転、討伐の指示とは。

期待をしてくれていると考えるべきかと、ベルノは考えた。

その時、シュクリフが懐から魔道具を取り出してベルノに手渡した。


「その魔道具は守護の魔道具だそうだ。以前王都に赴いた時にバルゴ王から賜ったものだ。それをお前に使わせろとのお達しだ。魔力を込めておけ」

「王が、俺に・・・」


今度こそ、王からの期待をされているのだと考えたベルノは、さっそく魔力を魔道具に込め始めた。

思いの外大量の魔力が吸い込まれていったが、騎士隊長のベルノはその辺の兵士よりも魔力量が多く、無事にその役目をこなすことが出来た。


「で、この魔道具はどう使うんだ?」

「そのまま持っていれば良いらしい」

「お守りみたいなものか?」

「詳しいことは分からぬが、王が無意味なものを渡すはずがない。肌身離さずに持っていろ。これから太守の兵と勇者共が城を攻めに来るだろう。迎え撃つぞ」

「分かった。今度こそ勇者を討ち取ってみせる」


勇者と言えど人の子だ。

魔力を封じてから城の兵力で押し切り、止めは自分が刺す。

そして王から称賛を賜るのだ。

ベルノは勝利を王に誓った。


その時、城の外から大轟音が聞こえた。


シュクリフとベルノは城の回廊に出ると、見張りの兵士に報告を求めつつ、自らも小窓から外の様子を見た。


「なんだ、何が起きている・・・?」



「我が城だが、いざ攻めるとなると骨が折れるな」


太守と共に太守の城が一望できる場所まで移動したわたし達は、城攻めの方法について頭を悩ませていた。


「おそらく敵側の兵士は三百ほど。しかし城を守るための兵器や弓兵が守っていることだろう。城の周りには堀があって外からの侵入は難しいが・・・勇者殿達は外側から入ってきたのだよな?」

「はい、そうですけど、さすがに今回は警戒されていると思いますし・・・」


前回侵入した時は屋上に見張りはいなかったし、夜間だったので城に近づく時にも見つかりづらかった。

今回はおそらく上空や壁からの侵入も警戒されているだろう。


「城には様々な備え付けの罠がある。さらに魔道具による罠も仕掛けられるようになっている。迂闊に入ると足元を掬われかねない」

「色々面倒そうですねえ・・・」


面倒といえば、ベルノは魔力を封じる魔道具を持っていた。

先の戦いで破壊できたけれども、予備が無いとは限らない。

あると思っておいたほうがいいだろう。


「しかし、城を落とさねば勝ちは無い。犠牲を覚悟で突撃するしかないか・・・」

「あのー、太守」

「勇者殿。なんだろうか」

「相手が籠城するしか無いのであれば、長期戦にして、食料がなくなるまで放置しておけばいいのではないですか?」


この領地は、どちらかと言えば太守寄りの人達ばかりだ。

後ろから別働隊で挟み撃ちをされる可能性も低いだろう。


「うむ、たしかにその手もあるが・・・」


太守曰く、北に隣接している領地から王都軍の援軍が来る可能性や、なんなら王都管理区から直接援軍が来てしまう可能性も考えているらしい。

城には一ヶ月程度であれば籠城可能な物資もあるとのことで、その間に王都の援軍がやってくることは可能だろう。


・・・たしかにそうなると面倒くさいね。


さらに太守はわたしに顔を寄せると、小声で言った。


「それにだ。私は領民に向かって『城を落として勝利する』と約束してしまった。加えて、ロティナとの婚姻を先延ばしにもしたくはない。そのためにできれば早めに城を落としたいという事情もあってだな・・・」


・・・一番めんどくさいのは太守だったよ!


「はあ・・・じゃあ、いっそ城ごと落としちゃいませんか?」

「それは一体どういう意味なのだ?」

「文字通りですよ。城ごと潰しましょう。城には太守の敵しか残ってないんですよね?」

「その通りだが・・・できるのか?」


太守はわたしの提案内容を一応理解はしたようだ。

理解した上で、できるかどうかを聞いてきている。


「ちょっと魔力が心許ないのですけど、ディーネちゃんとサラちゃんにも手伝ってもらえればなんとか行ける気がします。あとは太守の許可次第ですが・・・改めて聞きます。城ごとぶっ壊していいですか?」

「・・・無論あの城に思い入れはあるが、城など建て直せば良い・・・構わない」

「分かりました!・・・許可いただきましたからね?後で文句言わないでくださいね。それじゃあ、ディーネちゃん、サラちゃん。手伝ってくれる?」


わたしはディーネとサラを呼び、作戦を説明した。


「妾は構わんが・・・ユリよ。その後の魔力の補給はどうするのじゃ?」

「とりあえず、枯渇ギリギリの所まで頑張ってみる」

「私も作戦は理解したわ。それにしても面白い事を考えたわね・・・でも、くれぐれも無理はしないようにするのよ」

「うん、分かった」


わたしとディーネとサラは上空から攻撃をすることにして、太守達にはもう少し離れた場所で待機してもらい、こちらの攻撃が終わって合図をしたら兵士達に城に突撃してもらうように太守にお願いをした。


「勇者殿、作戦については了解した。しかし上空とは?それにその動物たちにも協力を?一体どういうことなのだ?」

「んー、話すと長くなるので、そういうものだと思ってください。では、行ってきます!」

「なっ!?飛んだだと!?」


太守の疑問は放置して、わたしとディーネとサラは城に向かって飛び立った。

城からの飛び道具攻撃に警戒しつつ、できるだけ城に近づく。


「よし、まずはディーネちゃん、よろしく!」

「任されたのじゃ」


ディーネは大量の水を呼び寄せると、一気に城に浴びせた。

その後も水の召喚を続け、城に強烈に叩きつけていく。

かなりの水圧と水量で城壁に破損も生じている。


「次はサラちゃん、お願い!」

「分かったわ」


サラは上空に向けて飛び去った。

空飛ぶカピバラを下から見る光景は実にシュールだ。

サラは城の上空につくと、上から強烈な下降気流を発生させた。

下降気流は城を中心とした局所的なダウンバースト状態を引き起こし、竜巻が発生したり、ディーネが起こした水を巻き込んだ強烈なゲリラ豪雨が城を痛めつけた。

城の周りにも強烈な風が舞い、木々やいろいろなものを吹き飛ばしたが、城の近辺に住宅地が無いのは幸いだった。


「最後はわたし・・・アフロちゃん、力を借りるわね・・・地揺れ!」


わたしはアフロに借りている土の魔力を紡ぎ、城一帯の地面を揺らした。


・・・めちゃくちゃ揺らさなくていい。

まずは軽い揺れから徐々に大きく。

そしてできれば、少し力を加えるだけで大きく揺れるポイント・・・共振ポイントを掴む。


わたしは固有振動数による共振が起きるポイントを探しながら、地面への干渉を続けた。

おそらくこの星の建造物は地球の現代建築とは違い、共振が引き起こす耐震対策や免震構造なんてしていないだろう。

そう考えての作戦だった。

わたしは魔力を逐次投入して、局所地震の発生を続けた。


「ううう・・・魔力がもたない・・・やっぱり借りものの魔力では限界が早いわね・・・」


やはりやっつけでは共振ポイントを見つけることはできなさそうだ。

でも、共振ポイントが見つからなくても構わなかった。

このゲリラ豪雨とダウンバーストによって地盤が緩めば、別の方法がある・・・


ディーネとサラの攻撃は続いていた。

強風と水の塊の衝撃で城の外壁は裂け、ベランダは崩れ落ち、城門付近は水浸しとなっていた。


「よし、もう地震はここまで!最後に城の土壌に干渉して・・・地割れ!」


共振破壊をあきらめたわたしは、次の手を打った。

程よく水分を吸い込んだ地面に干渉し、城の下の地面を引き裂いた。

バカッと城が落ち込むほどに地面を裂ければ最高だったが、さすがにそこまでは力は及ばなかったものの、ディーネとサラのお陰でダメージを受けた太守の城は、地割れ部分から少しずつ崩壊が進み、ゴゴゴ・・・と音を立てて崩れだした。

そして一度崩れ始めた城は連鎖的に崩壊箇所を広げ、建物は傾き、やがて最上階部分と地階部分が轟音と共に同時に潰れた。


「はあ・・・はあ・・・」

「ユリよ、大丈夫かの?」

「うん、ちょっともう限界・・・ディーネちゃん、背中に乗せてもらっていい?」

「もちろんじゃ」


わたしはディーネの背中にしがみつくと、サラを呼び戻し、太守に突撃の合図を送った。



崩壊した城内で、ベルノは奇跡的に生きながらえていた。

頭や足などに無数の傷や打撲があるものの、死は免れていた。

ベルノが居た部屋は壁も天井も崩落し、瓦礫と化していた。

父親であるシュクリフの姿は見えない。

瓦礫の下敷きになってしまったのだろうか。


「ベルノ様・・・」


その時、入口・・・既に入口とも呼べないが、部屋の入口の方から血まみれの兵士が入ってきた。


「ベルノ様、ご無事で・・・。城が攻撃されました。城ごと破壊されたようです。それから・・・敵の兵が・・・こちらに・・・」


そこまで言うと、兵は倒れた。

死んだのか、意識を失っただけかは分からないが、少なくともすぐに太守の兵が攻めてくることは分かった。


「ここで死ぬわけにはいかぬ・・・勇者を殺すまでは、俺も死ぬことはできぬ・・・」


ベルノは傷ついた体を引きずり、崩壊した部屋を後にした。



「その・・・勇者殿」

「はい、なんでしょう・・・」


太守は困った顔で城を見ている。

わたしとディーネとサラによる共同作業で、太守の城は見るも無惨に半壊していた。


「城に兵士を向かわせたのだが、ちょっとの衝撃で城の残った部分も崩落しそうで危なくてな。すぐに戻らせた」

「はい、そうですね・・・危ないですね」

「・・・いっそ、綺麗に更地にしてくれないだろうか」

「できればお応えしたいのですが、わたしの魔力はほぼ尽きてしまいまして・・・」


動くだけでもしんどいです、とディーネの背中につっぷしたまま答えた。


「ひとまず、我々の勝利と考えてよいだろうか?」

「そうですね・・・とりあえず廃墟は少しずつ調べていただくとして、逃げた残党がいないように廃墟の周りを包囲してはどうですか?」

「そうだな、そうしよう・・・それと、廃墟と言わないでくれ。ちょっとだけ悲しい」


太守は遠い目をしている。


「えー、城を壊してもいいって言ったじゃないですか。その結果ですし・・・」

「実際に目の当たりにするとちょっと悲しいと思う気持ちと、勇者殿は本当に凄いと思う気持ちがせめぎ合っているよ。でもそうだな、今言うべき言葉はそうではないな・・・ありがとう、勇者殿」


それから太守は勝利宣言を上げ、ライオット領で起きた内乱はひとまず終結した。


7/21に次話投稿予定です。


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