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33話 聖地巡礼

 王歴1067年6月某日。朝。

 その日は、この城へ来てはじめての『完全なる休日』だった。

 丸一日自由! (正確には、明日の9時まで自由!)


 しかも、ひ・と・り!

 開放感半端ない。


 昨日からエスペンは、私の代理で王都で行われる会議に出席。ゲオルグとコンラードは、イナリ港で行われる共同軍事演習に参加するため、今朝早くに城を発った。


 もちろん()()()と言っても、城の家令を含む使用人さんたちは常に2~30名ほどいる。


 この城に来て半年。

 め―――っちゃ忙しかった。


 休みが取れたら、一日中ベッドの上でダラダラゴロゴロして、お菓子食べてのんびりするんだ!と、考えていたが―――――



「ヴィティ様。今日は本当に良いお天気ですので、散策にでも行かれてみては? ちょうど西の丘の赤いポピーが満開ですよ」


 部屋に朝食を運んでいてくれたカリンさんが、カーテンを開け微笑んだ。


 西の丘!


 小説内でそこは(15年後)、主人公ルーシーがイフリートと共にヤグルマギクの花畑を眺め、感傷に浸るシーンの舞台だ。(ちなみに、ヤグルマギクを咲かせてくれたのは、レグルス王子。)


「あ……」


 このとき私は、心の片隅に押し込めていた()()『計画』を思い出した。

 そう、


 ()()()()


 そこで真っ先に思いついたのが、あの『森』だった。


 恐らく今現在、物語の主要人物※たちがひっそりと暮らしている()()

 ※主人公、養父母、三兄弟。


 赤ちゃんルーシー、見たい。

 チラでもいい。遠くからでもいい。拝みたいっ!!!


 思い立ったがなんとかとばかりに、朝食をさっと済ませた私は、移動用魔法指輪(リング)と双眼鏡を手にあの『森』へ向かったのだった。 


 *** ***


 その『森』は以前、ルーシーちゃん捜索に参加した際。偶然見つけた場所だった。


 カース領の南東方面には険しい山々があり、その山間部の川沿いに他の木々とは明らかに色味の違う鬱蒼とした森が広がっていた。どう違うかというと、色が全体的に黒く、森の周囲はカーテンみたいな霞に囲まれていた。


 その『森』は、現地では『幻の森』と呼ばれていた。


 現地の住人曰く、


『森へは、選ばれし者のみ入ることが許され。それ以外の者が入ろうとすると、森が消えてしまう』


 本当かどうか確かめるため、私たちが地上から近づこうとしたところ。雨でもないのに急に水かさが増し、森は水没し、黒い湖に飲み込まれてしまった。


 *** ***


 その森の付近へ到着。


 1月末に来たときには、黒く見えていた森は濃い緑に覆われ。その森の周囲は、相変わらず白く揺らめく霧のような幕で覆われていた。


 絶対、ここだ。

 ルーシーはここにいる。


 雪に姿を変え空へ舞い上がった。

 そして森の中央付近を目指し、ゆっくり降下した。


 前回来たときは多人数だったから、早々に森に気づかれてしまったのかもしれない。今度は森に気づかれないよう、上空からそっと……


 近づく森。

 森の木々の合間からは、小川が見える。ちゃんと地面もある。


 そういえばルーシーたちは川沿いに住んでいる設定だった。

 よし、川沿いを探そう。


 ピヤーッ! ピュ! (鹿の鳴き声)

 ガサガサガサガサ

 ドドドドドドドドドドドド……


 私の真下の森の茂みから数頭の鹿が現れ、駆けていった。

 続いて、枝葉の合間から、キラキラする何かが鹿を追って移動しているのが見えた。


 それは、小柄な二人の少年だった。

 二人とも森の木々の葉の色に近い青緑色の髪色をしていて。それが木漏れ日に当たるたび、キラキラと輝いて見えたのだった。


 その少年たちの会話が、耳に届いた。


 「レイ、 二手に分かれよう。罠に追い込むぞ!」

 「うん」


 

 え!? この子たち、オスカーとレイ!?

 なんか想像してたのと違う。こんなに小柄だったんだ。かっわいい―――っ!!!


 ※オスカーとレイは、ルーシーの養父母の長男と次男。

  オスカーは長身ガチムチ。レイは長身細マッチョ。


 ほとばしる興奮を押し殺し、駆けていく彼らを追かけた。

 だが、すばしっこくてすぐに見失ってしまった。


「ちょっと、あの子たち速っ! どこ行っちゃったの?」


 彼らを探そうと少し降下した。

 その際、私の足先が森の樹木の葉にちょんと触れた。


 途端!

 脱力感に襲われて……違っ、これ重力―――――!!!


「キャ――――――――――――――」


 バキバキバキバキバキバキバキバキッ!バキバキ!バキッ!


 ドサッ!


 木の枝葉にぶつかり引っ掛かり、地面に叩きつけられた。


 痛い。

 痛い、痛い、助けて……


「ごふっ…」


 うつ伏せに倒れた私の口から、ドロッとしたものが出てきた。

 血……かな。


 ―――――そうだった。

 この森は、結界が張られていて、魔力が一切使えない『設定』だった。

 魔力が使えないってことは、雪になれない――――


 自分の身体がどうなってしまっているのか、目を開けるのが怖い。


 「……っ"……ぅ"ぅ"……」


 悶絶していると、声が聞こえた。



「どーちたの?」


 幼い話し方。

 もしかして、ウィリアムくん!?

 (※三兄弟の末っ子。3歳ぐらい。)


 痛みを我慢し、声のほうへ視線を向けた。


 なのに、その子は私に興味を無くしてしまったのか、くるりと背中を向け、トテトテと愛らしい仕草で去って行く。


「ぁ……まっ……て………ょ」



 うそっ、行っちゃった!?



 静まり返る森。

 次第に痛みも感じなくなり、視界は徐々に暗く狭くなっていく。



 ―――――私、もうダメかも。

 ゲオルグ、コンラード、エスペン……ごめんなさい。 

  

 

次回、来週水曜日ごろ更新予定です。

応援ありがとうございます!

 

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